生命保険について、「自分には本当にいるものなのか」「はいらないのではないか」と疑問に思う人は少なくありません。
公的保障が充実している日本では、必ずしも全ての人が民間の生命保険を必要とするわけではない、という考え方があるのも事実です。
しかし、個人の状況によっては、保険が大きな助けとなることもあります。
この記事では、生命保険が不要と言われる理由から、本当に必要な人の特徴、後悔しないための判断基準とは何かを多角的に解説します。
「生命保険はいらない」と言われる3つの主な理由
なぜ「生命保険はいらない」という意見があるのでしょうか。
その背景には、日本の手厚い公的保障制度の存在や、経済的な合理性を重視する考え方があります。
ここでは、生命保険が不要とされる主な3つの理由について掘り下げていきます。
理由1:日本の公的医療保険制度が手厚いから
日本は国民皆保険制度を採用しており、会社員などが加入する健康保険や、自営業者などが加入する国民健康保険といった社会保険によって、医療費の自己負担額は原則1〜3割に抑えられています。
さらに、高額療養費制度があるため、1か月の医療費の自己負担額には上限が設けられています。
この制度により、たとえ高額な医療費が発生しても、所得に応じた一定額を超えた分は払い戻されるため、民間の医療保険がなくても致命的な高額医療費負担にはなりにくいと考えられています。
理由2:遺族年金など万が一の際の公的保障があるから
国民年金または厚生年金の被保険者が死亡した場合、残された遺族には遺族年金が支給されます。特に、子どもがいる家庭には遺族基礎年金が、厚生年金に加入していた会社員などの遺族には遺族厚生年金が支給され、遺族の生活を支える基盤となります。これらの公的年金制度は、万が一のことがあった際の一定の経済的支援となりますが、遺族の状況によっては、それだけで十分な収入が保障されるとは限りません。例えば、遺族基礎年金の支給額は生活費をまかなうには不十分な場合があり、自営業者の場合は遺族基礎年金のみの支給となるため、会社員・公務員に比べて支給額が少なくなる可能性があります。また、子どもが18歳に達すると支給が終了する期間も発生します。そのため、公的年金制度に加え、個々の状況に応じた死亡保険の検討も重要であると考えられます。
理由3:保険料を貯蓄や投資に回した方が合理的という考え方があるから
毎月支払う保険料を、貯蓄や投資に回した方が効率的に資産を増やせるという考え方も、生命保険が不要とされる理由の一つです。
民間の保険商品は、保障機能に加えて事業経費などが保険料に含まれています。
そのため、同じ金額を自分で計画的に貯蓄したり、NISAなどの制度を活用して資産運用に回したりすることで、将来的により大きなリターンを得られる可能性があります。
【状況別】生命保険が不要な可能性が高い人の4つの特徴
生命保険の必要性は、個人のライフステージや経済状況によって大きく異なります。
ここでは、生命保険への加入や継続が不要である可能性が高いと考えられる人の4つの特徴について、具体的な状況を交えて解説します。
特徴1:守るべき家族がいない独身の人
独身で扶養している家族がいない場合、自身が死亡しても経済的に困窮する人がいないため、高額な死亡保障の必要性は低いと言えます。
自身の葬儀費用や身辺整理のための資金を備えておけば十分なケースが多いでしょう。
ただし、将来的に結婚を考えている場合は、その時点で保障の必要性を見直す必要があります。
特徴2:万が一の際に困らない十分な貯蓄がある人
病気やケガによる急な入院・手術、あるいは一時的な収入の減少といった不測の事態が発生しても、自己資金で十分に対応できるだけの貯蓄がある人は、保険の必要性が低くなります。
具体的な金額は個人の生活水準によりますが、一般的に生活費の1〜2年分以上の預貯金があれば、多くのリスクに対応可能と考えられます。
特徴3:会社の福利厚生で手厚い保障が受けられる会社員
会社員や公務員の場合、手厚い福利厚生制度が整っていることがあります。
例えば、病気やケガで長期間働けなくなった際には健康保険から傷病手当金が支給されます。
また、企業によっては独自の弔慰金・見舞金制度や、割安な保険料で加入できる団体保険を用意している場合もあります。
自身の会社の福利厚生内容を把握することで、民間の保険で備えるべき保障を絞り込めます。
特徴4:親が資産家で経済的な援助を期待できる人
万が一の際に、親や親族から十分な経済的援助を受けられる見込みがある場合、自身で保険に加入する必要性は相対的に低くなります。
病気やケガで高額な費用がかかったり、収入が途絶えたりした場合でも、家族のサポートによって生活を維持できるのであれば、保険以外の選択肢も考えられます。
生命保険の必要性が高いと考えられる人の5つのケース
一方で、生命保険に加入することで得られるメリットが大きく、必要性が高いと考えられる人もいます。
公的保障や貯蓄だけではカバーしきれないリスクを抱えている場合、保険は有効な備えとなります。
ここでは、生命保険の必要性が高いと考えられる5つのケースを紹介します。
ケース1:配偶者や子どもなど扶養している家族がいる人
配偶者や子どもを扶養している家庭の大黒柱に万が一のことがあると、残された家族の生活は大きく変わってしまいます。
特に、妻が専業主婦であったり、子どもがまだ小さい3人家族のような家庭では、遺族年金だけでは教育費や生活費を賄うのが難しい場合があります。
家族が経済的に困窮しないよう、生活を支えるための死亡保障の必要性が高まります。
ケース2:自営業者やフリーランスで公的保障が少ない人
自営業者やフリーランスが加入する国民年金は、会社員が加入する厚生年金に比べて遺族年金の保障が手薄です。
また、会社員に支給される傷病手当金や失業手当のような、働けなくなった際の所得保障制度がありません。
そのため、病気やケガで収入が途絶えた場合に備える就業不能保険や医療保険の必要性が高まります。
ケース3:住宅ローンなど大きな借入金がある人
住宅ローンを組む際には、多くの場合、団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられています。
団信に加入していれば、契約者が死亡または高度障害状態になった際にローン残高が保険金で完済されます。
しかし、団信の保障範囲外の病気で長期間働けなくなり、ローン返済が困難になるリスクも考えられます。
団信以外の借入金がある場合も含め、返済計画を守るための一つの手段として生命保険が役立ちます。
ケース4:現時点で十分な貯蓄や資産がない人
特に社会人になったばかりの若い世代など、まだ十分な貯蓄が形成できていない時期に、予期せぬ病気やケガに見舞われると、医療費の支払いや収入減によって生活が立ち行かなくなる可能性があります。
このような場合、少ない保険料で大きな保障を確保できる生命保険は、万が一のリスクに備える有効な手段となります。
ケース5:事業承継や相続税対策を考えている経営者
会社の経営者にとって、生命保険は事業保障や相続対策の手段としても活用できます。
経営者に万が一のことがあった際の死亡退職金や弔慰金の財源としたり、後継者が事業をスムーズに引き継ぐための資金にしたり、あるいは相続税の納税資金として活用したりするなど、個人としてだけでなく事業のリスク管理においても重要な役割を果たします。
生命保険に入らないと後悔する?考えられる3つのリスク
生命保険に入っていない場合、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。
公的保障や貯蓄があるから大丈夫だと考えていても、想定外の事態に直面し、経済的に困窮してしまう可能性はゼロではありません。
ここでは、保険未加入によって起こりうる具体的な3つのリスクを解説します。
リスク1:病気やケガで高額な医療費がかかり貯蓄が尽きる
高額療養費制度によって医療費の自己負担には上限がありますが、保険適用外の先進医療費や、入院時の食事代・差額ベッド代などは全額自己負担となります。
大きな病気やケガによって治療が長期化したり、入退院を繰り返したりすると、これらの費用がかさみ、予想以上に貯蓄が減少するリスクがあります。
リスク2:働き盛りに死亡してしまい残された家族が生活に困窮する
特に子育て中の働き盛りの世代で万が一のことがあった場合、遺族年金だけで残された家族の生活費や子どもの教育費のすべてを賄うのは困難な場合があります。
死亡保険に加入していないと、十分な資金を残すことができず、家族がそれまでの生活水準を維持できなくなったり、子どもの進学の夢を諦めさせたりすることになりかねません。
リスク3:健康状態が悪化し、いざ入りたいと思った時に加入できない
生命保険は、健康な人でなければ加入できないのが原則です。
病気になってから保険の必要性を感じても、持病や既往歴によっては加入を断られたり、保険料が割高になるなどの特別な条件が付いたりすることがあります。
健康なうちにしか加入の選択肢がないという点は、保険を検討する上で最も重要なリスクの一つです。
後悔しないための最終チェック!生命保険の要不要を見極める判断基準
生命保険に加入するかどうかを最終的に決めるためには、客観的なデータに基づいて冷静に判断することが重要です。
ここでは、感情や漠然とした不安に流されず、自分自身の目で生命保険の要不要を見極めるための具体的な3つのステップを紹介します。
ステップ1:万が一の際に必要となる資金額をシミュレーションする
まず、自身に万が一のことがあった場合に、残された家族の生活や自身の療養にどれくらいの資金が必要になるかを具体的に計算します。
遺族の生活費、子どもの教育費、住宅ローンの残債、葬儀費用などをリストアップし、総額を算出しましょう。
病気やケガで働けなくなった場合は、治療費や当面の生活費がいくら必要かを考えます。
ステップ2:公的保障でカバーされる金額を正確に把握する
次に、ステップ1で算出した必要資金額に対して、公的保障でどれくらいカバーされるのかを確認します。
遺族年金については、ご自身の状況に応じて制度の内容を確認し、年金事務所や街角の年金相談センターなどの窓口に相談して試算することが可能です。
また、高額療養費制度による自己負担限度額も、自身の収入区分を基に調べておきましょう。
これらの公的保障額を正確に把握することが重要です。
ステップ3:現在の貯蓄額と不足分を比較して検討する
最後に、「ステップ1で算出した必要資金額」から、「ステップ2で把握した公的保障額」と「現在の貯蓄額」を差し引きます。
この計算で算出された不足額が、生命保険で備えるべき金額の目安となります。
不足額がほとんどなければ保険は不要と判断できますし、大きな不足が生じるようであれば、その金額をカバーできる保険の加入を検討します。
生命保険の必要性に関するよくある質問
生命保険を検討する際には、さまざまな疑問が生じます。
ここでは、保険の必要性に関して特に多く寄せられる質問について、簡潔に回答します。
結局のところ、保険と貯蓄はどちらを選べばいいですか?
どちらか一方を選ぶのではなく、目的によって使い分けるのが賢明です。
急な高額出費に少額の負担で備えたいなら掛け捨て保険、長期的な資産形成を目指すなら貯蓄や投資が向いています。
貯蓄型保険は両方の性質を持ちますが、効率は低い傾向にあります。
自身の目的に合わせて、保険と積立貯蓄などを組み合わせるのが現実的です。
もし最低限だけ入るとしたら、どんな保険がおすすめですか?
公的保障でカバーしきれない医療費に備える医療保険が第一候補です。
公的医療保険では対象外となる差額ベッド代や先進医療の技術料などをカバーする民間の生命保険(医療保険)がおすすめです。
扶養家族がいる場合は、手頃な保険料で高額な保障が得られる定期タイプの死亡保険も検討しましょう。
高額な特約は付けず、シンプルな保障内容に絞るのがポイントです。
現在加入している保険を見直したいのですが、解約しても問題ないでしょうか?
解約前に保障内容と解約返戻金の有無を必ず確認してください。
新しい保険に加入する前に解約すると無保険期間が生じます。
また、高齢者の場合、年齢が上がると保険料が高くなったり、待機期間が発生したり、健康状態によっては再加入が難しくなることも。
生命保険料控除のメリットも考慮し、慎重に判断する必要があります。
65歳以上の方は特に注意が必要です。
まとめ
生命保険が「いる」か「いらない」かは、個人の価値観、家族構成、資産状況、働き方によって結論が異なります。
日本の手厚い公的保障を正しく理解すれば、全ての人が高額な保険に加入する必要はないと言えます。
重要なのは、万が一の際に必要な資金額を算出し、公的保障や貯蓄で不足する分がどれくらいあるかを客観的に把握することです。
その上で、不足分を補うという考え方で生命保険を検討すれば、自分にとって本当に必要な保障を見極めることができます。




