国民年金はいつまで払うのか、という疑問を持つ方は少なくありません。
国民年金の保険料納付は原則として60歳までですが、受給額を増やすために60歳以降も任意で加入できる制度があります。
この記事では、国民年金はいつまで払うのかという基本的なルールから、60歳以降の任意加入制度、厚生年金との違い、そして将来の法改正の可能性まで詳しく解説します。
自身の状況に合わせた納付計画を考えるための情報を提供します。
国民年金の支払い義務は原則60歳になるまで
日本の公的年金制度では、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が国民年金に加入し、保険料を納付する義務があります。
このため、保険料の支払い義務期間は原則として60歳になるまでと定められています。
この点は、加入者が死亡するまで保険料の支払いが発生する可能性がある国民健康保険とは異なります。
国民年金の納付義務は、年齢によって明確に区切られています。
具体的な納付期間は20歳から60歳になる前月までの40年間
国民年金の保険料を納付する具体的な期間は、20歳になった月から始まり、60歳に達する日の前日が含まれる月の前月までです。
例えば、5月が誕生月の場合、60歳になる誕生月の前月である4月分までが納付対象となります。
20歳の誕生日の翌月に納付書が届き、その月から支払いが開始されます。
この期間は合計で40年間、月数に換算すると480ヶ月となります。
満額の老齢基礎年金を受け取るには480ヶ月の納付が必要
将来、満額の老齢基礎年金を受け取るためには、20歳から60歳までの40年間、毎月欠かさず保険料を納付し、納付済期間が480ヶ月に達する必要があります。
保険料の未納や免除・猶予を受けた期間がある場合、その期間は満額計算からは除外され、受け取れる年金額が減額されます。
令和6年度の場合、満額の老齢基礎年金として受け取れる金額は年額816,000円です。
この金額が将来いくらになるかは、経済状況に応じて改定されます。
60歳以降も国民年金保険料を支払える「任意加入制度」とは
60歳になった時点で老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていない場合や、納付済期間が480ヶ月に満たず年金額が満額にならない場合、希望すれば60歳以降も国民年金に加入して保険料を納めることができます。
これを「任意加入制度」と呼びます。
この制度を利用することで、受給資格を満たしたり、将来受け取る年金額を満額に近づけたりすることが可能です。
任意加入中も月額400円の付加保険料を納めることで、さらに年金額を増やせます。
任意加入制度を利用して受給額を増やせる人の条件
任意加入制度を利用できるのは、以下の条件を満たす人です。
学生時代に未納があった自営業者や、転職時に未納期間が生じた元会社員、第3号被保険者期間が短かった妻などが、満額に近づけるために利用するケースが考えられます。
扶養から外れていた期間がある人も対象となることがあります。
日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の人
老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない人
20歳から60歳までの保険料納付月数が480ヶ月未満の人
厚生年金保険などに加入していない人
任意加入によって将来の年金受給額を増額できるメリット
任意加入の最大のメリットは、納付月数を増やすことで、生涯にわたって受け取れる老齢基礎年金を確実に増額できる点です。
1ヶ月任意加入するごとに、年金額が年間約1,700円増えます。
例えば1年間加入すれば、年金額は約20,400円増額され、この増えた年金は生涯受け取れます。
長生きするほど総受給額が増え、メリットが大きくなります。
また、支払った保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減できるという税制上の利点もあります。
任意加入を検討する際に知っておきたい注意点
任意加入を検討する際には、いくつか注意点があります。
まず、支払った保険料の元を取るには、年金を受給し始めてから約10年かかる計算になります。
また、老齢基礎年金の繰上げ支給をすでに受給している場合は、任意加入はできません。
任意加入の保険料は通常の国民年金保険料と同額で、前払いや口座振替による割引も適用されます。
払込をやめたい場合はいつでも脱退の申し出が可能ですが、一度納付した保険料は返還されないため、慎重な検討が求められます。
【法改正】国民年金保険料の納付期間が65歳まで延長される可能性
現在、政府内で国民年金の被保険者期間を現行の「20歳以上60歳未満」から「20歳以上65歳未満」へ5年間延長する案が議論されています。
この法改正が実現すると、保険料を支払う義務が65歳まで延長されることになります。
この背景には、少子高齢化の進展による年金財政の安定化や、人生100年時代に対応するための年金制度の機能強化といった目的があります。
納付期間延長はいつから?現在の検討状況を解説
2024年時点において、国民年金保険料の納付期間延長はまだ決定事項ではありません。
政府は2025年の通常国会に年金制度改革関連法案を提出することを目指しており、その中で具体的な内容や施行時期が示される見通しです。
仮に法案が可決されたとしても、国民への周知や準備期間が必要なため、実際に制度が変更されるのは数年先になると予想されます。
現時点ですぐに納付期間が延長されるわけではなく、今後の国の議論を注視する必要があります。
厚生年金はいつまで払う?国民年金との納付期間の違い
自営業者などが加入する国民年金の納付義務が原則60歳までであるのに対し、会社員や公務員が加入する厚生年金の加入期間は異なります。
厚生年金は、適用事業所(会社など)に勤務している間は加入し続けるのが原則です。
そのため、60歳以降も会社員として働き続ける場合は、給与に応じた厚生年金保険料を支払い続けることになります。
これは、国民年金が基礎年金、厚生年金が上乗せ部分という2階建て構造に起因する違いです。
会社員や公務員は70歳まで厚生年金保険料を支払う場合がある
会社員や公務員が加入する厚生年金保険には加入上限年齢があり、70歳に達するまでと定められています。
したがって、60歳で定年を迎えた後も同じ会社で継続雇用されたり、再就職して厚生年金の適用事業所で働いたりする場合は、70歳になるまで厚生年金保険に加入し、保険料を納めることになります。
70歳以降も勤務を続ける場合、被保険者資格は失いますが、それまでの加入実績に応じた老齢厚生年金が支給されます。
国民年金保険料を支払わない場合に起こりうる3つのリスク
国民年金保険料の支払いは法律で定められた国民の義務であり、未納のまま放置すると様々なリスクが生じます。
単に将来の年金が減るだけでなく、病気や事故といった不測の事態に備える保障が受けられなくなったり、最終的には財産を差し押さえられたりする可能性もあります。
保険料の未納は、老後だけでなく現役世代の生活にも直接的な影響を及ぼす重大な問題です。
将来受け取る老齢基礎年金が減額されてしまう
老齢基礎年金の受給額は、保険料を納付した月数に基づいて計算されます。
そのため、保険料の未納期間が1ヶ月でもあると、その分だけ将来受け取る年金額は40年間すべて納付した場合の満額から減ってしまいます。
年金の受給資格期間である10年(120ヶ月)を満たしていたとしても、納付実績が少なければ受け取る年金額も少なくなり、安定した老後の生活設計に支障をきたす可能性があります。
万が一の際に障害年金や遺族年金が受給できない恐れ
国民年金制度は、老後の生活を支える老齢基礎年金だけでなく、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる「障害基礎年金」や、加入者が亡くなったときにその遺族の生活を支える「遺族基礎年金」という重要な保障機能も担っています。
これらの年金を受け取るには、一定の保険料納付要件を満たす必要があります。
そのため、保険料を未納にしていると、いざという時にこれらの保障が全く受けられない事態になりかねません。
財産の差し押さえ(強制徴収)に至るケースもある
一定の所得があるにもかかわらず国民年金保険料の未納を続けていると、日本年金機構から電話や文書による納付の案内が届きます。
それでも納付しない場合、「最終催告状」が送付され、指定された期限までに納付がないと「差押予告通知書」が届きます。
最終的には、預貯金、給与、自動車、不動産などの財産が差し押さえられる「強制徴収」の手続きが法に基づいて実行されます。
これは本人の意思とは関係なく行われるため、必ず納付しなければなりません。
国民年金の支払いに関するよくある質問
国民年金の支払いについて、多くの方が抱える疑問点や知りたい点について、Q&A形式で解説します。
60歳になったら、国民年金の支払いをやめる手続きは必要ですか?
原則として、特別な手続きは不要です。
国民年金の被保険者資格は60歳に達すると自動的に喪失するため、支払いをやめるための届け出は必要ありません。
ただし、任意加入制度を利用して60歳以降も支払いを続けたい場合は、市区町村の役場や年金事務所で別途加入手続きを行う必要があります。
保険料の納付期間が40年(480ヶ月)に満たない場合、年金はもらえませんか?
いいえ、10年(120ヶ月)以上の受給資格期間を満たしていれば年金は受け取れます。
保険料の納付済期間と免除期間などを合わせた期間が10年以上あれば、老齢基礎年金を受給する権利が発生します。
ただし、受け取れる年金額は、40年(480ヶ月)納付した場合の満額ではなく、納付した月数に応じた金額となります。
年金の受給開始年齢を繰り上げ・繰り下げした場合、支払い期間も変わりますか?
いいえ、保険料の支払い期間は変わりません。
年金の繰上げ・繰下げ受給は、あくまで年金を受け取り始める時期と、それに応じた年金額を変更する制度です。
保険料を支払う義務がある期間(原則20歳から60歳まで)に影響はありません。
なお、繰上げ受給を申請した後は、国民年金に任意加入することはできなくなります。
まとめ
国民年金の保険料を支払う期間は、原則として20歳から60歳になる前月までの40年間です。
60歳時点で納付月数が480ヶ月に満たない場合は、任意加入制度を利用して60歳以降も保険料を納めることで、将来の年金額を増額させることが可能です。
また、会社員などが加入する厚生年金は、70歳になるまで加入する場合があります。
現在、国民年金の納付期間を65歳まで延長する法改正が検討されていますが、まだ決定事項ではありません。
自身の年金記録を確認し、制度を正しく理解することが大切です。




