共働きの夫婦にとって、生まれた子どもの扶養を夫婦どちらにつけるべきかは悩ましい問題です。
どっちの扶養に入れるかで世帯全体の手取り額が変わる可能性があるため、どちらが得かしっかり検討する必要があります。
この記事では、共働き夫婦が子どもの扶養をどっちの扶養にすべきか判断できるよう、税金と社会保険の制度の違いから、具体的な判断ポイントまで詳しく解説します。
まずは扶養の基本!「税金」と「社会保険」2つの制度の違いを理解しよう
「扶養」には、大きく分けて「税法上の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があります。
税法上の扶養は親の税負担を軽減するための制度で、社会保険の扶養は子どもの保険料負担をなくすための制度です。
これらは目的も管轄も異なる別々の制度であり、必ずしも同じ親の扶養に入れる必要はありません。
それぞれの仕組みを正しく理解することが、最適な選択をするための第一歩です。
税金の扶養(扶養控除):親の所得税・住民税が安くなる制度
税法上の扶養とは、納税者である親が子どもなどを経済的に支えている場合に、所得から一定の金額を差し引くことができる「扶養控除」という制度です。
この控除により課税対象となる所得が減るため、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。
ただし、扶養控除の対象となるのは、その年の12月31日時点で年齢が16歳以上の子どもである点に注意が必要です。
社会保険の扶養:子どもの健康保険料が無料になる制度
社会保険の扶養とは、子どもが親の加入する健康保険の「被扶養者」として認定されることで、子ども自身の健康保険料を支払うことなく保険給付を受けられる制度です。
被扶養者になると、親の保険証とは別に子ども自身の保険証が発行されます。
これにより、病気やケガで医療機関にかかった際に、医療費の自己負担が軽減されるという大きなメリットがあります。
【社会保険の扶養】原則として年収が高い方の扶養に入れる
共働き夫婦の場合、子どもの社会保険の扶養は、原則として年収が高い方の親の扶養に入れることが基本的なルールです。
これは、健康保険組合などが「主として生計を維持する者」を年収が高い方と判断するためです。
どちらの扶養に入れるか迷った際は、まずは夫婦の年収を比較し、恒常的に収入が多い方が扶養者となるのが一般的です。
どちらが得かという観点以前に、これが公的な指導基準となっています。
夫婦の収入差が1割以内なら生計を主として維持する方を選択
夫婦双方の年収に大きな差がない場合、例えば収入差が1割以内であるときは、必ずしも年収が高い方の扶養に入れるとは限りません。
このケースでは、届出により「主として生計を維持する者」の扶養に入れることが認められる場合があります。
具体的には、世帯主であるか、住民票の筆頭者であるかといった実態を基に判断されます。
自営業で国保に加入している場合や公務員の場合も、会社の健康保険組合の判断基準を確認する必要があります。
なぜ年収が高い方の扶養に入れるの?健康保険組合のルールを解説
健康保険組合や共済組合は、被扶養者の認定にあたり、「主として被保険者により生計を維持されていること」を要件としています。
共働き家庭において、この「主として生計を維持する者」は、一般的に収入が多い方と判断されます。
このルールは、夫婦がそれぞれ別々の健康保険に加入している場合でも、両方から二重に給付を受けることを防ぎ、制度の公平性を保つために設けられています。
【税金の扶養】所得税率が高い(=年収が高い)方が節税効果は大きい
税金の扶養は、所得税率が高い、つまり年収が高い方の親が利用する方が節税効果は大きくなります。
日本の所得税は、収入が多いほど高い税率が適用される累進課税制度を採用しています。
同じ扶養控除額でも、適用される税率が高いほど、差し引かれる税金の額は大きくなります。
そのため、世帯全体の手取り額を増やすには、年収が高い方の親が扶養控除を受けるのが有利です。
社会保険の扶養とは別の人を扶養者に選んでも問題ない
前述の通り、「社会保険の扶養」と「税金の扶養」は全く別の制度です。
したがって、社会保険は年収が高い夫の扶養に入れ、税金の扶養控除は妻が受ける、というように、扶養者を夫婦で別々に設定することも制度上は可能です。
ただし、会社の家族手当などの支給条件に関わる場合があるため、両方の制度と勤務先の規定を総合的に見て判断することが重要です。
所得税率で比較!年収ごとの節税シミュレーション
扶養控除による節税額は所得税率によって変わります。
例えば、16歳の子ども1人を扶養に入れる場合、扶養控除額は38万円です。
課税所得300万円(税率10%)の夫婦の場合、節税額は38,000円です。
一方、課税所得700万円(税率23%)の夫婦なら、節税額は87,400円となり、その差は歴然です。
このように、所得税率が高い方の親が扶養控除を適用することで、より大きな節税メリットが得られます。
注意!16歳未満の子どもは所得税の扶養控除の対象外
税法上の扶養控除には年齢要件があり、対象となるのはその年の12月31日時点の年齢が16歳以上の子どものみです。
これは、かつての子ども手当(現:児童手当)の創設に伴い、年少扶養控除が廃止されたためです。
したがって、子どもが0歳から15歳(中学3年生まで)の場合は、親の所得税計算において扶養控除を適用することはできません。
5歳や9歳の子どもを扶養していても、所得税が直接安くなることはありません。
損しないための判断ポイント!世帯全体の手取り額を最大化しよう
子どもの扶養をどちらに入れるか決める際は、税金や社会保険の原則だけでなく、各家庭の状況に応じたポイントを確認することが重要です。
特に、会社から支給される手当は、節税額以上に家計に影響を与えることがあります。
これらの要素を総合的に比較検討し、世帯全体の手取り額が最も多くなる選択をすることが、損をしないためのカギとなります。
会社の「家族手当・扶養手当」の支給条件を必ず確認する
最も重要な確認事項の一つが、勤務先の「家族手当」や「扶養手当」の支給条件です。
企業によっては、手当の支給条件を「自社の健康保険の扶養に入れていること」と定めている場合があります。
この手当の額が、年収が高い方が扶養控除を受けた場合の節税額を上回るケースも少なくありません。
まずは夫婦双方の会社の就業規則や給与規程をしっかりと確認し、手当の有無と条件を把握しましょう。
あえて年収が低い方に入れて住民税の非課税枠を活用する方法
16歳未満の子どもは所得税の扶養控除の対象外ですが、住民税の計算には影響します。
住民税には、所得が一定額以下の場合に非課税となる制度があり、扶養親族の人数が多いほど非課税限度額が上がります。
この仕組みを利用し、あえて年収が低い方の親の扶養に子どもを入れることで、その親の住民税が非課税になる場合があります。
お住まいの自治体の制度を確認し、世帯全体で有利になるか試算してみる価値はあります。
複数の子どもがいる場合、扶養を夫婦で分けるのはお得?
子どもが2人や3人など複数いる場合、扶養を夫婦で分けるという選択肢も考えられます。
例えば、社会保険は原則通り年収が高い方にまとめ、税金の扶養控除は子どもを1人ずつ夫婦の扶養に入れる、といった方法です。
これにより、夫婦それぞれが所得控除を受けられたり、家族手当の支給条件を両方で満たせたりする可能性があります。
ただし、手続きが煩雑になるため、メリットとデメリットを慎重に比較検討する必要があります。
子どもの扶養を変更したいときの手続きとタイミング
夫婦の収入状況の変化などにより、子どもの扶養を一方の親からもう一方へ変更することが可能です。
扶養の変更は、社会保険と税金でそれぞれ手続きが必要です。
手続きのタイミングとしては、年末調整の時期や、収入に変動があったときなどが考えられます。
スムーズに変更できるよう、あらかじめ必要な手続きの流れを把握しておきましょう。
扶養を移す(付け替える)ために必要な書類と提出先一覧
社会保険の扶養を変更する場合、まず現在の扶養から外す「被扶養者(異動)届」を提出し、扶養資格喪失の証明書を受け取ります。
その後、新たに扶養に入れる親の会社へ、その証明書を添付して「被扶養者(異動)届」を提出します。
税金の扶養変更は、年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を各々の会社に提出することで行います。
自分の両親など親族を扶養する場合も、基本の手続きは同様です。
年末調整や確定申告の時期に扶養の変更はできる?
税法上の扶養については、年末調整の際に提出する「扶養控除等申告書」の内容を修正することで変更が可能です。
もし年末調整に間に合わなかった場合や、会社員でない場合は、確定申告を行うことで扶養控除を正しく申告できます。
一方、社会保険の扶養変更は、収入の逆転など扶養を維持する実態が変わった際に、その都度速やかに行うのが原則です。
子どもの扶養に関するよくある質問
ここでは、子どもの扶養に関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。
Q.子どもが生まれたら、扶養の手続きはいつまでにすればいいですか?
子どもが生まれたら、健康保険証を速やかに発行するために、出産後できるだけ早く手続きをしましょう。
通常、出生届の提出後、1ヶ月以内を目安に勤務先の担当部署に申し出ます。
産休・育休中でも手続きは可能ですので、事前に必要書類などを確認しておくとスムーズです。
Q.パート収入がある16歳以上の子どもは扶養に入れますか?
年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)であれば、税法上の扶養に入れます。
社会保険の扶養は、年収が130万円未満であることが主な条件です。
ただし、勤務先の社会保険に加入した場合は扶養から外れるため、働き方には注意が必要です。
Q.離婚や再婚をした場合、子どもの扶養はどうなりますか?
子どもの生計を主に維持している方の親が扶養に入れるのが原則です。
離婚後は、同居している親や、養育費を支払っている親が扶養者となることが多いです。
再婚や事実婚の場合でも、生計を同一にしていれば、継親が実子でない子を扶養に入れることは可能です。
まとめ
共働き夫婦が子どもの扶養をどちらに入れるか決める際は、いくつかのポイントを総合的に判断する必要があります。
まず、社会保険の扶養は原則として「年収が高い方」に入れます。
次に、税金の扶養(扶養控除)は「所得税率が高い方」が節税メリットは大きくなります。
しかし、最も重要なのは夫婦双方の会社の「家族手当・扶養手当」の支給条件を確認することです。
この手当の有無が、世帯全体の手取り額に大きく影響する場合があるためです。
これらの情報を基に、ご自身の家庭にとって最も有利な選択をしてください。




