アパート経営が赤字…売却すべき?赤字の原因と立て直し方法【2026年版】
📋 目次
1. アパート経営が赤字になる5つの原因
アパート経営が赤字に転落するケースは決して珍しくありません。国土交通省の「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」(2024年)によると、賃貸住宅オーナーの約25%が「経営に不安を感じている」と回答しています。
出典: 国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」(2024年)
赤字の原因を正確に把握することが、立て直しの第一歩です。以下の5つの原因のうち、あなたのアパートに当てはまるものはどれでしょうか。
原因① 空室率の上昇
アパート経営が赤字になる最大の原因は空室率の上昇です。総務省の「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、全国の賃貸住宅の空室率は約18.4%に達しています。特に地方都市や郊外では空室率が25%を超えるエリアも増えており、アパート経営の収益を圧迫しています。
出典: 総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)
空室率が上昇する主な要因は以下の通りです。
- エリアの人口減少: 地方都市や郊外では人口流出が続いており、賃貸需要そのものが減少している
- 競合物件の増加: 相続税対策としてのアパート建設ラッシュにより、供給過剰になっているエリアがある
- 物件の老朽化: 築年数が経過し、設備や内装が時代遅れになっている
- 賃料設定の問題: 相場より高い賃料設定のまま放置している
例えば、8戸のアパートで空室が2戸(空室率25%)の場合、満室時と比べて年間の家賃収入は約120〜160万円減少します(1戸あたり月額5〜7万円の場合)。この減収分がそのまま赤字につながります。
原因② 修繕費の増加
アパートは築年数の経過とともに、さまざまな修繕が必要になります。特に築15年を超えると、設備の交換や外壁・屋根の補修など、大きな出費が発生しやすくなります。
| 修繕項目 | 費用目安(1棟あたり) | 発生時期の目安 |
|---|---|---|
| 外壁塗装 | 100〜200万円 | 築10〜15年 |
| 屋根防水 | 50〜150万円 | 築10〜15年 |
| 給排水管の更新 | 100〜300万円 | 築20〜30年 |
| 給湯器交換(全戸) | 80〜160万円 | 築10〜15年 |
| エアコン交換(全戸) | 40〜80万円 | 築10〜15年 |
| 共用部照明LED化 | 10〜30万円 | 随時 |
木造アパートの法定耐用年数は22年ですが、実際には適切なメンテナンスを行えば30〜40年は使用可能です。ただし、メンテナンスには継続的な費用が必要であり、これを怠ると物件の価値が急速に低下します。
原因③ 金利上昇によるローン負担増
日本銀行の金融政策の転換により、変動金利型ローンの負担が増加しています。アパートローンは住宅ローンよりも金利が高い傾向にあり、金利上昇の影響をより大きく受けます。
例えば、借入額5,000万円・返済期間25年のアパートローンの場合、金利が1%上昇すると毎月の返済額は約2.3万円増加し、年間では約27.6万円の負担増になります。これだけでキャッシュフローがマイナスに転じるケースも珍しくありません。
原因④ 賃料の下落
築年数の経過や周辺の競合物件の増加により、賃料が下落するケースがあります。新築時に設定した賃料を維持できなくなり、入居者の入れ替わりのたびに賃料が下がっていく「賃料下落スパイラル」に陥ることがあります。
一般的に、木造アパートの賃料は築10年で新築時の90〜95%、築20年で80〜85%程度まで下落する傾向にあります。ただし、立地や物件の管理状態によって下落幅は大きく異なります。
原因⑤ 管理費・固定資産税の負担増
管理会社への管理委託費、共用部の電気代・水道代、火災保険料、固定資産税・都市計画税など、アパート経営には毎月・毎年の固定費がかかります。これらの費用は家賃収入が減少しても一定額が発生するため、空室率が上がるほど収支を圧迫します。
2. 赤字アパートの立て直し方法
赤字の原因が特定できたら、以下の立て直し方法を検討しましょう。原因に応じた適切な対策を講じることで、赤字を解消できる可能性があります。
方法① 空室対策を強化する
空室が赤字の主因であれば、空室対策が最優先です。具体的には以下の施策が有効です。
- 賃料の適正化: 周辺相場を調査し、競争力のある賃料に見直す
- リフォーム・リノベーション: 水回りの交換、壁紙の張り替え、インターネット無料化など
- 初期費用の軽減: 敷金・礼金ゼロ、フリーレント(1〜2ヶ月の家賃無料)の導入
- ペット可・楽器可: ターゲット層を広げる
- 管理会社の変更: 客付け力の高い管理会社に切り替える
特に効果が高いのがインターネット無料化です。全国賃貸住宅新聞の調査によると、入居者が部屋探しで重視する設備の第1位は「インターネット無料」で、導入コストは1戸あたり月額1,000〜2,000円程度です。
方法② 管理コストを見直す
管理会社の管理委託費は家賃収入の3〜5%が相場ですが、管理内容に見合った費用かどうかを確認しましょう。複数の管理会社から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較することで、コスト削減が可能な場合があります。
また、共用部の電気代削減(LED化・人感センサー導入)、火災保険の見直し、プロパンガス会社の変更なども、固定費削減に有効です。
方法③ ローンの借り換え・条件変更を検討する
現在のアパートローンの金利が高い場合、借り換えによって返済額を減らせる可能性があります。特に、数年前に高い金利で借り入れた場合は効果が大きいです。
借り換えが難しい場合は、現在の金融機関に返済期間の延長を相談する方法もあります。返済期間を延長すれば毎月の返済額は減少しますが、総返済額は増加するため、慎重に判断する必要があります。
方法④ 賃料以外の収入源を確保する
アパートの敷地や共用部を活用した副収入の確保も有効です。
- 自動販売機の設置: 月額3,000〜10,000円程度の収入
- 駐車場・駐輪場の外部貸し: 空きスペースの有効活用
- 太陽光パネルの設置: 屋根を活用した売電収入
- 看板・広告スペースの貸し出し: 道路沿いの物件で有効
3. 売却すべきか保有すべきか?判断基準
立て直し策を検討した上で、売却すべきか保有すべきかを判断するための基準を整理します。
売却を検討すべきケース
| 判断基準 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 空室率が30%以上で改善見込みがない | エリアの人口減少が進み、賃貸需要が構造的に低下している |
| 大規模修繕が迫っているが資金がない | 修繕を先送りすると物件価値がさらに下落する |
| キャッシュフローのマイナスが拡大し続けている | 対策を講じても改善が見られない |
| デッドクロスが到来している | ローン元金返済が減価償却費を上回り、税負担が増加 |
| 他の投資機会に資金を振り向けたい | 売却資金でより収益性の高い投資が可能 |
保有を継続すべきケース
| 判断基準 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 空室が一時的で改善の余地がある | 管理会社変更やリフォームで改善できる見込み |
| エリアに再開発計画がある | 将来の賃貸需要増加・物件価値上昇が期待できる |
| 所有期間が5年以下 | 短期譲渡所得の高税率(約39.63%)を避けるため |
| ローン残債が物件価格を大幅に上回っている | 売却しても多額の持ち出しが発生する |
| 減価償却の節税効果がまだ大きい | 帳簿上の赤字で所得税の還付を受けている |
💡 「帳簿上の赤字」と「実質的な赤字」の違い
アパート経営では、減価償却費を計上することで帳簿上は赤字でも、キャッシュフロー(実際の手残り)はプラスというケースがあります。これは税務上有利な状態であり、「赤字だから売却すべき」とは限りません。逆に、帳簿上は黒字でもキャッシュフローがマイナス(デッドクロス状態)の場合は、売却を真剣に検討すべきです。
4. 赤字アパートを売却する際の注意点
売却を決断した場合、赤字物件ならではの注意点があります。事前に把握しておくことで、スムーズな売却を実現しましょう。
注意点① オーバーローンの場合の対処
ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では、差額を自己資金で補填しなければ売却できません。金融機関の抵当権を抹消するためには、ローンを完済する必要があるためです。
オーバーローンの場合の選択肢は以下の通りです。
- 自己資金で差額を補填する: 最もシンプルだが、まとまった資金が必要
- 金融機関と交渉する: 任意売却(金融機関の同意を得て残債以下で売却)の可能性を探る
- 他の資産を売却して補填する: 他の不動産や金融資産を活用
- 保有を続けてローン残債を減らす: 時間をかけてローン残債と物件価格の差を縮める
注意点② 入居者がいる状態での売却
アパートに入居者がいる場合は、オーナーチェンジとして売却します。入居者の退去を待つ必要はなく、賃貸借契約はそのまま新オーナーに引き継がれます。
むしろ、入居者がいる状態のほうが、買い手にとっては「すぐに家賃収入が得られる」というメリットがあり、空室だらけの物件よりも売却しやすい傾向にあります。
注意点③ 売却価格の設定
赤字物件の売却では、相場より若干低めの価格設定が早期売却のポイントです。赤字の状態が続くほど損失が拡大するため、多少の値引きをしてでも早期に売却するほうが、トータルでは有利になるケースが多いです。
注意点④ 瑕疵(かし)の告知義務
売却時には、物件の瑕疵(欠陥)を買い手に告知する義務があります。雨漏り、シロアリ被害、配管の不具合、過去の事故・事件など、知っている不具合は必ず告知しましょう。告知義務を怠ると、売却後に契約不適合責任を問われるリスクがあります。
5. 赤字物件の査定で高値を引き出すコツ
赤字のアパートでも、工夫次第で査定価格を上げることは可能です。以下のコツを実践しましょう。
コツ① 売却前に空室を埋める
前述の通り、稼働率は査定価格に直結します。売却を決めたら、まずは空室対策に全力を注ぎましょう。賃料を多少下げてでも空室を埋めることで、査定価格が大幅にアップする可能性があります。
例えば、8戸のアパートで2戸空室(空室率25%)の場合と満室の場合では、キャップレート7%で計算すると査定価格に約340万円の差が出ます(1戸あたり月額5万円の場合)。
コツ② レントロールと修繕履歴を整備する
買い手が最も重視するのは、物件の収益性と管理状態です。レントロール(賃貸借条件一覧表)と修繕履歴を時系列で整理し、物件の状態を「見える化」しましょう。
コツ③ 複数の不動産会社に査定を依頼する
一棟アパートの査定は、不動産会社によって評価基準が大きく異なります。最低5社以上に査定を依頼し、査定額の根拠を比較検討しましょう。投資用一棟物件の売却実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。
コツ④ 土地の資産価値をアピールする
築古のアパートでは、建物の価値はほぼゼロでも、土地の資産価値が評価されるケースがあります。特に、容積率に余裕がある土地や、再建築で収益性の高い物件が建てられる土地は、建物の価値以上の価格で売却できる可能性があります。
コツ⑤ 売却時期を見極める
不動産市場には季節性があり、一般的に1〜3月の繁忙期は賃貸需要が高まるため、稼働率が改善しやすく、売却にも有利な時期です。逆に、6〜8月の閑散期は買い手も少なくなる傾向があります。
6. 赤字アパートの税務処理
アパート経営の赤字は、税務上のメリットを活用できる場合があります。
不動産所得の損益通算
アパート経営の赤字(不動産所得の損失)は、給与所得など他の所得と損益通算が可能です。これにより、所得税・住民税の還付を受けられる場合があります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 土地の取得に要した借入金の利子は損益通算の対象外
- 青色申告の場合、損益通算しきれない損失は翌年以降3年間の繰越控除が可能
- 事業的規模(5棟10室以上)の場合、青色申告特別控除65万円が適用可能
出典: 国税庁「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」(2025年版)
売却時の税金
アパートを売却した場合、譲渡所得に対して課税されます。所有期間5年超で約20.315%、5年以下で約39.63%の税率です。売却損が出た場合は、一定の条件のもとで損益通算が可能です。
出典: 国税庁「譲渡所得の税額の計算」(2025年版)
7. ケーススタディ:赤字アパートの再生と売却
ケース1: 空室対策で再生した事例
| 項目 | 対策前 | 対策後 |
|---|---|---|
| 物件概要 | 千葉県船橋市・築16年・木造2階建・8戸 | |
| 空室率 | 37.5%(3戸空室) | 0%(満室) |
| 月額賃料(1戸あたり) | 5.8万円 | 5.5万円(3,000円値下げ) |
| 月間キャッシュフロー | ▲3.2万円 | +5.8万円 |
| 実施した対策 | 賃料見直し、インターネット無料化、管理会社変更 | |
| 対策費用 | 約30万円(ネット回線工事費) | |
このケースでは、月額賃料を3,000円下げ、インターネット無料を導入し、管理会社を変更したことで、3ヶ月で満室を達成しました。賃料は下がったものの、空室が解消されたことでキャッシュフローは月9万円改善しました。
ケース2: 売却を選択した事例
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 物件概要 | 群馬県前橋市・築22年・木造2階建・6戸 |
| 購入価格(2017年) | 2,800万円 |
| 空室率 | 50%(3戸空室) |
| 月間キャッシュフロー | ▲5.5万円 |
| 売却価格 | 1,500万円 |
| ローン残債 | 1,800万円 |
| 自己資金補填額 | 約400万円 |
| 判断理由 | エリアの人口減少が進み、空室改善の見込みなし。月5.5万円の持ち出しが続くと年間66万円の損失拡大 |
このケースでは、400万円の自己資金補填が必要でしたが、毎月5.5万円の持ち出しが続くことを考えると、約6年分の損失を一度に精算した形になります。売却資金の一部を他の投資に振り向けることで、トータルのリターン改善を図りました。
よくある質問
アパート経営が赤字になる主な原因は?
主な原因は、①空室率の上昇②修繕費の増加③金利上昇によるローン負担増④賃料の下落⑤管理費・固定資産税の負担増の5つです。特に築15年を超えると複数の原因が重なりやすくなります。
赤字のアパートは売却すべき?
赤字の原因が一時的か構造的かで判断が変わります。空室対策や管理会社変更で改善できる場合は保有継続、エリアの人口減少やキャッシュフロー悪化が続く場合は売却を検討すべきです。
赤字のアパートでも売れる?
はい、赤字でも売却は可能です。一棟物件の買い手は投資家が中心で、リノベーションや再建築を前提に購入するケースもあります。売却前に空室を埋め、レントロールを整備することで査定価格が上がります。
アパート経営の赤字は確定申告でどう扱われる?
不動産所得の赤字は給与所得などと損益通算が可能です(土地取得の借入金利子部分を除く)。青色申告の場合は3年間の繰越控除も可能です。