投資用不動産の相続対策|評価額の計算と節税の仕組み【2026年版】

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1. なぜ不動産は相続税対策に有効なのか

不動産が相続税対策に有効とされる最大の理由は、相続税評価額が実勢価格(時価)より大幅に低くなるためです。現金1億円をそのまま相続すると評価額は1億円ですが、同じ1億円で投資用不動産を購入すると、相続税評価額は4,000万〜6,000万円程度に圧縮されるケースがあります。

この評価額の圧縮は、以下の3つの仕組みによって実現されます。

  1. 路線価評価: 土地は公示地価の約80%で評価される
  2. 固定資産税評価額: 建物は建築費の約50〜60%で評価される
  3. 借家権・借地権による評価減: 賃貸中の物件はさらに30〜40%減額される

国税庁の「相続税の申告実績の概要」(令和5年分)によると、相続財産のうち不動産(土地・家屋)が占める割合は約34.4%で、依然として主要な相続財産です。

出典: 国税庁「令和5年分 相続税の申告実績の概要」(2024年12月公表)

2. 投資用不動産の相続税評価額の計算方法

土地の評価方法(路線価方式)

土地の相続税評価額は、国税庁が毎年7月に公表する「路線価」を基に計算します。路線価は公示地価の約80%に設定されています。

計算式: 土地の評価額 = 路線価 × 面積 × 各種補正率

建物の評価方法(固定資産税評価額)

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま使われます。固定資産税評価額は、新築時の建築費の約50〜60%程度に設定されています。

賃貸中の物件の評価減

投資用不動産(賃貸物件)は、入居者がいることで自由に使えないため、さらに評価額が減額されます。

📊 賃貸物件の評価減の計算式

貸家の評価額 = 自用家屋の評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

※ 借家権割合は全国一律30%

貸家建付地の評価額 = 自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

※ 借地権割合は地域により30〜90%(都市部は60〜70%が多い)

具体的な評価額の計算例

項目実勢価格(時価)相続税評価額圧縮率
土地(路線価評価)5,000万円4,000万円(×80%)▲20%
→ 貸家建付地減額3,160万円(×(1-0.7×0.3×1.0))▲37%
建物(固定資産税評価額)5,000万円2,750万円(×55%)▲45%
→ 貸家減額1,925万円(×(1-0.3×1.0))▲62%
合計1億円5,085万円▲49%

出典: 国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」「No.4602 土地家屋の評価」(令和7年4月1日現在法令等)

この例では、時価1億円の投資用不動産の相続税評価額が約5,085万円(圧縮率約49%)となります。現金1億円をそのまま相続する場合と比べて、約5,000万円の評価額圧縮効果があります。

3. 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)

小規模宅地等の特例は、相続した宅地の評価額を一定面積まで減額できる制度です。投資用不動産(貸付事業用宅地等)にも適用されます。

区分面積上限減額割合適用要件
特定居住用宅地等330㎡80%配偶者・同居親族等が取得
特定事業用宅地等400㎡80%事業を承継する親族が取得
貸付事業用宅地等200㎡50%貸付事業を承継する親族が取得

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」(令和7年4月1日現在法令等)

適用の注意点

4. タワマン節税規制の最新動向【2024年〜】

2024年1月1日以降の相続・贈与から、マンションの相続税評価額の算出方法が見直されました。これは、タワーマンションの高層階で市場価格と相続税評価額の乖離が大きいことを利用した「タワマン節税」への規制です。

新ルールの概要

新ルールでは、マンションの相続税評価額が市場価格の60%未満の場合、評価額が引き上げられます。具体的には、「評価乖離率」を計算し、市場価格の60%を下回る場合は60%に補正されます。

出典: 国税庁「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年9月28日通達改正)

投資用マンションへの影響

この改正は「居住用」マンションが対象ですが、投資用マンションにも波及効果があります。特に、タワーマンションの高層階を投資用に購入して相続税対策とするスキームは、従来ほどの効果が見込めなくなっています。

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5. 具体的な相続税シミュレーション

ケース: 投資用マンション1億円を相続した場合

📊 シミュレーション条件

  • 被相続人: 父(配偶者なし)
  • 相続人: 子1人
  • 相続財産: 投資用マンション(時価1億円)+ 現金3,000万円
  • 投資用マンションの相続税評価額: 5,085万円(前述の計算例)
  • 小規模宅地等の特例: 適用あり(貸付事業用、200㎡以内、50%減額)
項目現金のみの場合不動産活用の場合
課税価格1億3,000万円現金3,000万円 + 不動産3,543万円 = 6,543万円
基礎控除(3,000万円+600万円×1人)▲3,600万円▲3,600万円
課税遺産総額9,400万円2,943万円
相続税額約1,540万円約339万円
節税効果約1,201万円

出典: 国税庁「No.4155 相続税の税率」(令和7年4月1日現在法令等)

不動産を活用することで、相続税が約1,201万円も軽減される計算になります。ただし、これはあくまでシミュレーションであり、実際の税額は個別の状況によって異なります。

6. 相続した投資物件は売却すべき?保有すべき?

売却を検討すべきケース

保有を検討すべきケース

売却時の注意点:取得費の引き継ぎ

相続した不動産を売却する場合、取得費は被相続人(亡くなった方)の取得費を引き継ぎます。相続時の時価ではなく、元の購入価格がベースになるため、長期保有していた物件ほど譲渡所得(売却益)が大きくなり、税金も高くなる点に注意が必要です。

7. 生前にやっておくべき5つの対策

対策① 遺言書の作成

不動産は均等に分けにくい資産です。遺言書がないと遺産分割協議が難航し、相続人間のトラブルに発展するケースが多くあります。公正証書遺言を作成しておくことを強く推奨します。

対策② 納税資金の準備

不動産は換金に時間がかかるため、相続税の納税資金(申告期限: 相続開始から10ヶ月以内)が不足するリスクがあります。生命保険の活用(死亡保険金の非課税枠: 500万円×法定相続人の数)や、現金の確保を事前に行いましょう。

対策③ 物件の整理・入れ替え

築古物件や地方物件は相続後の管理が大変です。生前に物件を売却して都心の好立地物件に入れ替えるか、現金化しておくことで、相続人の負担を軽減できます。

対策④ 法人化の検討

投資用不動産を法人(資産管理会社)で保有することで、相続時の評価額を圧縮できるケースがあります。法人の株式として評価されるため、純資産価額方式で計算した場合に有利になることがあります。

対策⑤ 定期的な物件価値の確認

相続税対策の効果を正確に把握するためには、定期的に物件の市場価値を確認することが重要です。AI査定を活用すれば、匿名・無料で概算価格を確認できます。

8. 相続登記の義務化と投資物件への影響

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和6年4月1日施行)

投資用不動産の場合、相続登記が完了しないと以下の問題が生じます。

相続した投資物件の価値を把握することが、最適な判断の第一歩です。

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よくある質問

投資用不動産の相続税評価額はどう計算される?

投資用不動産の相続税評価額は、土地は路線価方式(公示地価の約80%)、建物は固定資産税評価額(建築費の約50〜60%)で算出されます。さらに賃貸中の物件は借家権割合30%・借地権割合による評価減が適用され、実勢価格の40〜60%程度まで圧縮されるケースが一般的です。

タワマン節税はまだ有効ですか?

2024年1月から「居住用超高層建築物の評価」に関する新ルールが適用され、タワーマンションの高層階と低層階の評価額の格差が是正されました。従来のように高層階を購入するだけで大幅な節税効果を得ることは難しくなっています。ただし、不動産を活用した相続税対策自体は依然として有効です。

相続した投資物件は売却すべき?保有すべき?

判断基準は①キャッシュフローがプラスか②相続人に不動産管理の意思と能力があるか③物件の将来性(エリア・築年数)④相続税の納税資金が確保できるか、の4点です。管理の手間や将来のリスクを考慮し、売却して現金化する方が合理的なケースも多くあります。

小規模宅地等の特例は投資用不動産にも使える?

はい、投資用不動産(貸付事業用宅地等)にも小規模宅地等の特例が適用されます。ただし、居住用の80%減額に比べて、貸付事業用は50%減額と減額幅が小さく、面積上限も200㎡までです。相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した場合は適用外となる点に注意が必要です。

投資用不動産の相続で注意すべきことは?

主な注意点は①相続税の納税資金の確保②遺産分割の困難さ③借入金がある場合のローン承継手続き④賃貸管理の引き継ぎ⑤相続登記の義務化(2024年4月〜)の5点です。生前に遺言書の作成や納税資金の準備をしておくことが重要です。