老後の生活費は夫婦でいくら必要?実際のデータを参考に老後に向けた対策を解説!

老後の生活費は夫婦2人でいくら必要?アンケート結果や実際のデータから検証!老後に向けた対策も紹介

監修者

監修者
田中壮

TFPグループ 代表取締役 田中 壮

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

老後の生活費が夫婦でいくら必要なのかは、多くの人が不安に感じるテーマです。 公的年金だけで足りるのか、どれくらい老後資金を準備すべきか、なかなかイメージしにくいですよね。

この記事では、総務省や生命保険文化センターなどの調査データを参考に、老後生活の平均的な金額や内訳を分かりやすく整理します。 ゆとりある暮らしと最低限の暮らしの違いや、持ち家か賃貸かによる差も取り上げます。

さらに、年金や貯蓄、iDeCoやNISAなどの制度を活用した準備方法も解説します。 自分たち夫婦の老後の生活費をシミュレーションし、具体的な対策を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

目次

老後の生活費は夫婦でいくら必要?

ここでは、夫婦の老後生活費の全体像をつかむことを目的に、平均的な金額の目安を紹介します。 総務省や生命保険文化センターの調査をもとに、一般的な水準を確認しながら、自分たちの暮らしとの違いを考えていきましょう。

ゆとりある老後と、最低限の生活を維持する老後では、必要な生活費が変わります。 さらに、持ち家か賃貸か、車を持つかどうかなど、夫婦ごとの条件でも金額は大きく違うものです。

まずは平均値を知り、そのうえで自分たちに合う老後の生活費を考えることが、資金計画の第一歩といえるでしょう。

調査データで見る夫婦の平均額

夫婦の老後生活費を考えるとき、参考になるのが公的な調査データです。 総務省統計局の家計調査では、高齢夫婦無職世帯の消費支出が毎月どのくらいか公表されています。 最新年度の数値は変動しますが、おおよそ月額で二十数万円台という水準が一つの目安です。

この消費支出には、食費や住居費、水道光熱費、通信費、医療費、教養娯楽費など、日常生活に必要な費用が含まれます。 一方で、税金や社会保険料などを含めた実際の支出は、もう少し多くなる可能性があります。

生命保険文化センターの調査では、老後生活に「ゆとりがある」と感じるための生活費もたずねています。 その結果を見ると、最低限必要な金額に対して、ゆとりある老後生活では毎月数万円から十万円前後多くかかるという回答が多い傾向です。

ただし、これらはあくまで平均値であり、持ち家か賃貸か、車の有無、子どもへの援助の有無などで大きく変わります。 自分たち夫婦のライフスタイルや希望する暮らし方を前提に、これらのデータを参考程度に見る姿勢が大切だといえるでしょう。

ゆとりある老後と最低限の老後

老後の生活費を考えるとき、「最低限の生活」と「ゆとりある生活」を分けて考えると整理しやすくなります。 最低限とは、食費や光熱費、住居費など日常生活を維持するための基本的な支出です。 一方、ゆとりある老後生活とは、旅行や趣味、交際費などを含め、精神的な満足度も意識した暮らしを指します。

生命保険文化センターの調査では、最低限の老後生活費と、ゆとりある老後生活費の差は、夫婦の場合で毎月数万円以上あるという結果が出ています。 例えば、最低限は月二十万円台前半、ゆとりを含めると月三十万円前後を想定する人も少なくありません。

ただ、ここで大事なのは「自分たちにとってのゆとりは何か」を具体的に考えることです。 毎年旅行に行きたいのか、趣味の教室に通いたいのか、子どもや孫への支援を重視するのかで、必要な金額は変わってきます。

老後の期間は二十年以上に及ぶケースもあります。 前半は旅行やレジャーを楽しみ、後半は医療費や介護費が増えるなど、支出の中身も変化していきます。 このため、一定の平均額にとらわれすぎず、自分たち夫婦の価値観や健康状態の変化も考慮して、段階ごとに必要な生活費をイメージしておくと、より現実的な資金計画につながるでしょう。

持ち家と賃貸で変わる生活費の差と影響

老後の生活費を左右する大きな要素が、住居費です。 持ち家か賃貸かによって、毎月の負担は大きく変わります。 総務省の家計調査でも、高齢世帯の住居費は、持ち家世帯の方が平均的に低くなる傾向が見られます。

持ち家の場合、住宅ローンが完済していれば、毎月の家賃はかかりません。 その一方で、固定資産税や修繕費、将来のリフォーム費用などは発生します。 築年数が古くなるほど、屋根や水回りの工事など、まとまった出費が必要になる可能性もあります。

賃貸の場合は、毎月の家賃が継続してかかります。 ただ、必要に応じて住み替えがしやすいという面もあります。 階段の少ない物件や、病院が近いエリアに移るなど、高齢期の暮らしやすさを優先した選択も取りやすいでしょう。

どちらが有利かは一概には言えませんが、老後の期間を二十年から三十年と想定すると、家賃の総額やリフォーム費用の見込みをざっくり計算しておくと安心です。 持ち家の人は、将来のリフォーム費用を老後資金に上乗せしておくことが検討材料になります。 賃貸の人は、家賃水準を老後の収入に見合う金額に抑えることが、生活費全体の安定につながるでしょう。

夫婦の老後生活費の内訳

ここからは、夫婦の老後生活費の内訳を具体的に見ていきます。 総務省の家計調査などを参考に、食費や光熱費、医療費、住居費、娯楽費といった項目ごとの平均的な金額をイメージしやすく整理します。

内訳を知ることで、自分たちの家計と比較しやすくなり、どこを見直せばよいかも見えてきます。 老後生活の支出は、現役時代と比べて増えるものと減るものがあります。 それぞれの特徴を押さえながら、無理のない老後資金計画につなげていきましょう。

日常の生活費と平均値

日常の生活費とは、食費や水道光熱費、通信費、日用品費など、毎月必ずかかる基本的な支出を指します。 総務省の家計調査による高齢夫婦無職世帯のデータでは、消費支出の多くをこれらの日常費が占めています。 金額は年度によって変わりますが、食費が全体の中で大きな割合を占める傾向は変わりません。

例えば、食費は夫婦二人で月数万円台が一つの目安とされます。 外食が多いか自炊中心かで、かなり差が出る部分です。 水道光熱費は、季節や住まいの広さによって変動しますが、高齢になると在宅時間が長くなるため、現役時代より増えるケースもあります。

通信費は、スマートフォンやインターネット回線の契約内容で変わります。 格安プランを活用すれば抑えられますが、オンライン診療や行政手続きなど、今後はインターネット利用の重要度が高まる可能性もあります。 無理に削るのではなく、必要なサービスを見極めて契約することが大切です。

日用品や被服費は、現役時代より減る人も多い一方で、趣味の道具や健康グッズなどにお金をかける人もいます。 平均値はあくまで参考としつつ、自分たち夫婦のこれまでの家計簿やカード明細を振り返り、老後にどう変化しそうかを具体的にイメージしておくと、より現実的な生活費の想定につながるでしょう。

医療費・介護費・保険料

老後生活で見落としがちなのが、医療費や介護費、生命保険や医療保険などの保険料です。 高齢になると病気やけがのリスクが高まり、通院や入院の回数が増える可能性があります。 公的医療保険により自己負担は抑えられますが、それでも一定の費用は発生します。

高齢者は医療費の自己負担割合が原則として一割から三割に軽減される仕組みがあります。 ただし、所得や年齢によって条件が変わるため、自分たちが将来どの区分になりそうか、厚生労働省などの最新情報を確認しておくと安心です。 また、入院時の差額ベッド代や食事代、交通費など、公的保険でカバーされない費用も想定しておく必要があります。

介護については、介護保険制度によりサービス利用時の自己負担はありますが、全額が補償されるわけではありません。 在宅介護か施設かによっても費用は大きく変わります。 特別養護老人ホームなどは比較的費用を抑えられる一方、民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は月額費用が高くなる傾向です。

保険料については、現役時代から加入している生命保険や医療保険を老後も続けるかどうかが検討ポイントになります。 保険料が家計を圧迫していないか、保障内容が今の状況に合っているかを見直すことが大切です。 医療費や介護費は、発生時期や金額を正確に予測することが難しいため、預貯金や保険のバランスを考えながら、無理のない範囲で備えておくとよいでしょう。

住居費の内訳

住居費は、老後の生活費の中でも金額が大きくなりやすい項目です。 持ち家の場合は、毎月の住宅ローン返済が残っているかどうかで負担が変わります。 ローンが完済していれば家賃は不要ですが、固定資産税や管理費、修繕積立金などは継続してかかります。

マンションの場合、管理費や修繕積立金は、築年数の経過とともに値上げされることもあります。 エレベーターや共用部分の設備が充実している物件ほど、維持管理のコストが高くなる傾向です。 戸建ての場合も、屋根や外壁、水回りなどのリフォーム費用を、数十年単位で見込んでおく必要があります。

賃貸住宅に住む場合は、家賃が主な住居費になります。 老後の収入が年金中心になると、高い家賃の物件に住み続けるのは負担が大きくなることがあります。 定年退職前に、将来の年金額や貯蓄額を踏まえ、家賃水準を見直しておくと、老後の家計が安定しやすいでしょう。

住居費には、火災保険料や地震保険料も含まれます。 自然災害が増えるなか、保険料が上昇する可能性も考えられます。 持ち家の人は、保険の補償範囲と保険料のバランスを確認し、必要に応じて見直すことが重要です。 賃貸の人も、家財保険の加入状況を把握しておくと安心につながります。

娯楽・交際・旅行など「ゆとり」部分の目安と優先順位

老後の生活を豊かにするうえで、娯楽費や交際費、旅行費などの「ゆとり」部分は大切な要素です。 趣味のサークルに参加したり、友人との食事会に出かけたり、年に一度は旅行を楽しんだりすることで、日々の満足度は大きく変わります。 一方で、これらの費用は削ろうと思えば削りやすく、家計の調整弁にもなります。

生命保険文化センターの調査では、ゆとりある老後生活に必要な生活費として、最低限の生活費に毎月数万円から十万円程度上乗せしたいという回答が多く見られます。 この上乗せ部分の多くが、旅行やレジャー、趣味、交際費などにあたると考えられます。 夫婦それぞれが大事にしたい「楽しみ」を話し合い、優先順位を決めておくと、家計管理がしやすくなります。

例えば、旅行が好きな夫婦であれば、年に一回は国内旅行に行く、数年に一度は海外旅行を検討するなど、頻度と予算をあらかじめ決めておく方法があります。 趣味の教室やスポーツジムに通う場合も、月々いくらまでなら無理なく続けられるかを、年金収入や預貯金の取り崩し計画と合わせて考えるとよいでしょう。

子どもや孫へのお小遣いやお祝いなども、交際費としてまとまった金額になることがあります。 気持ちの面では多く渡したくなるかもしれませんが、自分たちの生活費や将来の医療費、介護費も考慮することが重要です。 優先順位を整理し、「ここまでは続ける」「状況によっては見直す」というラインを夫婦で共有しておくと、老後の家計に過度な不安を抱かずに済むでしょう。

夫婦の収入源と老後資金の見込み

老後の生活費を考えるときには、支出だけでなく収入の見込みも整理しておく必要があります。 夫婦の主な収入源は、公的年金、退職金、預貯金の取り崩し、そして資産運用の収入などです。

ここでは、公的年金の受給額の見方や、退職金や貯蓄をどのようなペースで使っていくかの基本的な考え方を解説します。 さらに、iDeCoやNISA、投資信託、個人年金保険など、老後資金の準備や上乗せに役立つ制度や金融商品の特徴も整理します。

どの方法が最適かは、年齢や収入、家族構成などによって変わります。 一般的なポイントを押さえながら、自分たち夫婦に合った組み合わせを検討していきましょう。

公的年金の受給額の見方

老後の収入の柱となるのが、公的年金です。 公的年金には、会社員や公務員が加入する厚生年金と、自営業者や専業主婦などが加入する国民年金があります。 老齢基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせにより、受給額は人によって大きく異なります。

自分や配偶者が将来いくら受け取れる見込みかは、日本年金機構から届く「ねんきん定期便」で確認できます。 五十歳以上になると、六十五歳以降の年金見込額が記載されるため、老後の生活費を考えるうえで大きな手がかりになります。 ねんきんネットを利用すれば、過去の加入履歴をもとに、受給開始年齢を変えた場合のシミュレーションも可能です。

公的年金は、受給開始を遅らせると月々の年金額が増え、早めに受け取ると減る仕組みがあります。 どのタイミングで受給を始めるかは、健康状態や働き方、貯蓄額などを踏まえて判断する必要があります。 一律に「遅らせた方が得」とも「早くもらった方が安心」とも言い切れないため、複数のパターンを比較してみると良いでしょう。

また、配偶者が専業主婦や専業主夫だった期間がある場合、第3号被保険者として国民年金の保険料が納められていたかどうかも重要です。 未納期間があると老齢基礎年金の受給額が減るため、記録に誤りがないかを早めに確認しておくと安心です。 公的年金は制度改正の影響も受けるため、厚生労働省や日本年金機構の最新情報をチェックしながら、定期的に見直していくことが大切だと言えるでしょう。

退職金・預貯金の取り崩し計画と家計収支の基本ルール

退職金や預貯金は、老後の生活費を補う大切な資金です。 ただし、一度に大きな買い物をしてしまうと、後半の生活費が足りなくなるおそれがあります。 老後の期間を二十年から三十年程度と想定し、どのくらいのペースで取り崩すかを考えることが重要です。

家計収支の基本的な考え方としては、公的年金などの定期的な収入で、日常の生活費の多くをまかなうことが一つの目安になります。 不足分を退職金や預貯金から補うイメージです。 毎月の赤字額が大きすぎると、資金が早く尽きるリスクが高まるため、支出の見直しも並行して行う必要があります。

取り崩し計画を立てる際は、「年間でいくら使うか」を意識すると管理しやすくなります。 例えば、年間三十万円を旅行やレジャーに使うと決めておけば、その範囲内で楽しみ方を工夫できます。 退職金の一部をすぐに使うのではなく、預貯金や安全性の高い金融商品で分散して保有し、必要なタイミングで取り崩す方法もあります。

ただし、金利や税金、物価の変動などにより、将来の実質的な価値は変わる可能性があります。 インフレが進むと、同じ金額でも買えるものが減ることもあり得ます。 このため、長期間にわたる取り崩し計画は、数年ごとに見直す前提で考えておくと良いでしょう。 不安が大きい場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談し、家計全体を見渡したシミュレーションを行うのも一つの選択肢です。

iDeCo・NISA・投資信託で補う資産形成と運用の手段

老後の生活費を確保するためには、公的年金や退職金だけでなく、自助努力による資産形成も重要になります。 その際に活用しやすい制度として、iDeCoやNISAがあります。 これらは税制上のメリットがあり、長期の資産形成に向いた仕組みです。

iDeCoは、個人型確定拠出年金とも呼ばれ、自分で掛金を拠出し、投資信託や定期預金などで運用していく制度です。 掛金が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。 一方で、原則として六十歳までは引き出せないなどの制約があるため、生活費としてすぐに使うお金とは分けて考える必要があります。

NISAは、一定の投資額まで運用益が非課税になる制度です。 つみたてNISAや新しいNISA制度を活用すれば、少額から投資信託などで長期の資産形成を行うことができます。 ただし、元本割れのリスクがあるため、預貯金と比べて値動きが大きい点には注意が必要です。

投資信託を利用する場合は、手数料や運用方針、リスクの程度をよく確認しましょう。 株式型や債券型、バランス型など、商品によって価格の変動幅が異なります。 どの商品が良いかは、年齢や資産額、リスクに対する考え方によって変わります。 資産運用は、あくまで老後資金を補う手段の一つととらえ、生活費の全てを投資に頼りすぎないことが大切です。 制度や商品の内容は変更される可能性があるため、金融機関や公的機関の最新情報を確認しながら、自分に合った方法を検討すると良いでしょう。

個人年金保険や保険商品の活用メリット・注意点

老後の生活費を安定的に確保する手段として、個人年金保険などの保険商品を利用する人もいます。 個人年金保険は、一定期間保険料を積み立て、将来決められた年齢から年金形式で受け取る仕組みの商品です。 毎月または毎年決まった金額が入ってくるため、老後の収入をイメージしやすいというメリットがあります。

また、契約内容によっては、払い込んだ保険料の一部が所得控除の対象となり、現役時代の税負担が軽くなる可能性があります。 受け取り方も、年金形式のほか、一時金としてまとめて受け取るタイプなど、複数の選択肢が用意されている商品もあります。 自分の老後のライフプランに合わせて、どのように受け取るかを検討できる点は魅力と言えるでしょう。

一方で、個人年金保険には注意点もあります。 途中解約すると、払い込んだ保険料よりも受取額が少なくなるケースがあり、元本割れのリスクがあります。 インフレが進んだ場合、将来受け取る年金の実質的な価値が目減りする可能性も考えられます。 また、保険会社の経営状況によっては、予定した通りの配当が得られないこともあり得ます。

終身保険や医療保険など、他の保険商品と合わせて加入している場合は、保険料の合計が家計を圧迫していないかも確認が必要です。 老後の生活費を確保するために保険を活用する場合は、保障内容や受取額、保険料、解約時の条件などを総合的に比較することが大切です。 複雑に感じる場合は、保険会社の担当者や、特定の商品に偏らない立場の専門家に相談し、自分たち夫婦の状況に合った使い方を検討するとよいでしょう。

必要資金を計算するシミュレーション

ここでは、夫婦の老後生活に必要な資金を、自分でおおまかに計算するための考え方を紹介します。 月額ベースの簡易シミュレーションから始め、六十代や七十代のモデルケースを通じて、どの程度の資金不足が生じやすいかをイメージしていきます。

さらに、長生きリスクや医療・介護費の増加といった不確実な要素を考慮した「上乗せ」の目安も取り上げます。 貯蓄額の目標を立てる際の考え方や、いつからどのくらい準備を始めるかといったシナリオ別の計算方法も紹介します。

細かい数字にこだわりすぎる必要はありませんが、大まかな方向性をつかんでおくことで、老後の不安を少しずつ具体的な対策に変えていきやすくなるでしょう。

月額ベースの簡易シミュレーション

老後の必要資金を考えるとき、まずは月額ベースで「いくらあれば足りそうか」を試算してみると分かりやすくなります。 手順はシンプルで、理想とする老後生活の生活費を月額で見積もり、そこから公的年金などの毎月の収入を差し引くだけです。

例えば、夫婦でゆとりある老後生活を送りたいと考え、毎月の生活費を三十万円と想定するとします。 ねんきん定期便などで確認した公的年金の合計が毎月二十二万円程度だとした場合、不足額は毎月八万円となります。 この不足分を、退職金や預貯金、資産運用の収入などで補うイメージです。

次に、その不足額が一年でどのくらいになるかを計算します。 月八万円の不足であれば、年間では約九十六万円です。 老後期間を二十五年と仮定すると、単純計算で約二千四百万円程度が必要ということになります。 実際には、生活費や年金額は年々変化しますが、大まかな目安としては参考になります。

このシミュレーションを行うときは、あくまで仮の数字で構いません。 重要なのは、「自分たち夫婦の場合、毎月どの程度の不足が生じそうか」を把握することです。 不足額が大きいと感じた場合は、生活費の見直しや、受給開始年齢の検討、資産形成の強化など、どこを調整するかを考えるきっかけになります。 不安を感じる部分があれば、家計簿アプリやオンラインのシミュレーションツールを活用し、複数のパターンを試してみると良いでしょう。

60代夫婦・70歳モデルケースで見る実際の資金不足額

もう少し具体的にイメージするために、六十代夫婦のモデルケースを考えてみます。 ここではあくまで一例として、持ち家で住宅ローン完済済みの夫婦を想定します。 六十五歳から公的年金を受給し、七十歳以降も同じ水準の年金が続くケースです。

例えば、夫婦の公的年金の合計が月額二十二万円とします。 老後の生活費は、日常の生活費に加え、趣味や旅行も楽しみたいと考え、六十代後半から七十代前半は月三十万円を想定します。 この場合、毎月の不足額は八万円です。 年間では約九十六万円、十年間では約九百六十万円の取り崩しが必要になります。

七十代後半以降は、旅行の回数を減らすなどして生活費を月二十七万円に抑えると仮定すると、不足額は毎月五万円になります。 年間で約六十万円、八十歳から九十歳までの十年間で約六百万円です。 六十五歳から九十歳までの二十五年間で見ると、合計で約千五百六十万円程度の不足というイメージになります。

もちろん、これはあくまで一つのモデルであり、実際の年金額や生活費、水準は人それぞれです。 賃貸住宅の場合は住居費が増えますし、自営業者で厚生年金に加入していない人は、公的年金の受給額が少なくなる傾向があります。 一方で、パートや再雇用で七十歳前後まで働く場合は、年金以外の収入が加わり、不足額が小さくなることもあります。 自分たち夫婦の年金額や希望する暮らし方を前提に、似たようなモデルケースを作ってみると、必要な老後資金のイメージがぐっと具体的になるでしょう。

リスクを考慮した上乗せ目安

老後資金のシミュレーションでは、平均的な生活費と年金額を前提に計算することが多いですが、実際の暮らしではさまざまなリスクが発生する可能性があります。 代表的なものとして、長生きリスク、医療・介護費の増加リスク、物価上昇リスクなどが挙げられます。 これらを全く見込まないと、将来のどこかの時点で資金不足に陥るおそれがあります。

長生きリスクとは、想定よりも寿命が延びた結果、老後の期間が長くなり、資金が足りなくなる可能性のことです。 例えば、八十五歳までを想定していたところ、九十五歳まで生きると、十年分の生活費が余分に必要になります。 そのため、老後期間を二十年ではなく、二十五年から三十年程度で試算しておくと、より安全側に寄せた計画になります。

医療・介護費についても、ある程度の上乗せを考慮しておくと安心です。 特に介護が必要になった場合、在宅介護でもヘルパーやデイサービスの費用がかかりますし、施設入所となれば月額十万円から二十万円以上になるケースもあります。 全てを自費でまかなう想定にする必要はありませんが、数百万円単位の予備資金を用意しておくと、選択肢の幅が広がるでしょう。

物価上昇リスクについては、将来のインフレ率を正確に予測することは難しいものの、現役時代と同じ感覚で生活費を固定してしまうと、実際の負担感が増すかもしれません。 シミュレーション上では、毎年の生活費を少しずつ増やす前提にしたり、予備費として総額の一割から二割程度を上乗せしておいたりする方法もあります。 どこまで備えるかは家計の状況によって変わりますが、「何も起こらない前提」だけで計画を立てないことが、老後の安心につながると言えるでしょう。

貯蓄額の目安と準備時期のシナリオ別計算方法

老後資金の準備を考えるうえで、「結局いくら貯めればよいのか」「いつから始めれば間に合うのか」は気になるポイントです。 ただ、貯蓄額の目安は、現役時代の収入や支出、老後の生活水準、住居の状況などによって大きく変わります。 一律の正解はありませんが、シナリオ別に考えると整理しやすくなります。

例えば、老後の不足額を先ほどの例のように約一千五百万円と見積もった場合、退職時点でそれに近い貯蓄があれば、比較的安心感は高まります。 一方、現時点の貯蓄が少ない人でも、六十歳以降もパートや嘱託社員として働き続けることで、不足額を小さくすることが可能です。 働く期間を延ばすシナリオは、貯蓄だけに頼らない現実的な選択肢の一つと言えるでしょう。

準備時期については、三十代から四十代前半であれば、毎月の積立額をそれほど大きくしなくても、長い期間を味方につけやすくなります。 例えば、毎月三万円を二十年間積み立てれば、元本だけでも約七百二十万円です。 資産運用を組み合わせれば、運用益が上乗せされる可能性もありますが、元本割れリスクもあるため、無理のない範囲で行うことが大切です。

四十代後半から五十代で老後資金の不足に気づいた場合は、残り時間が短くなる分、毎月の積立額を増やすか、支出の見直しを優先するかといった選択が必要になります。 退職金の一部を老後資金として確保する前提で、そこに上乗せする形で積立目標を設定する方法もあります。 いずれのシナリオでも、家計全体を把握し、無理のない金額と期間を設定することが重要です。 不安が強い場合は、ファイナンシャルプランナーなどに相談し、自分たち夫婦専用の資金計画を作成してもらうのも有効でしょう。

老後の生活費を確保する具体的対策と実行プラン

ここまでで、夫婦の老後生活費の目安や内訳、収入源や必要資金の考え方を見てきました。 最後に、実際にどのような対策を取ればよいか、具体的な行動プランに落とし込んでいきます。

老後の生活費を確保するには、支出の見直し、積立や資産形成、住まいの活用、保険や年金商品の活用など、複数の手段を組み合わせることが大切です。 一度に完璧を目指す必要はありませんが、できることから一つずつ進めることで、不安は徐々に小さくなっていきます。

ここでは、家計の整理から始めるステップや、具体的な積立方法、持ち家の使い方、保険の見直しポイントなどを取り上げ、自分たち夫婦に合った実行プランを考えるヒントをお伝えします。

家計見直しでできる支出削減と優先度の付け方

老後の生活費を確保するうえで、まず取り組みやすいのが家計の見直しです。 現役時代から支出のムダを減らしておくことで、老後に必要な生活費そのものを抑えられる可能性があります。 また、浮いたお金を老後資金の積立に回せば、準備のスピードも高まります。

家計見直しの第一歩は、現在の支出を把握することです。 家計簿アプリやクレジットカードの明細を活用し、固定費と変動費に分けて整理してみましょう。 固定費には、住宅ローンや家賃、保険料、通信費、サブスクリプションなどが含まれます。 変動費には、食費や日用品、娯楽費、外食費などが該当します。

見直しの優先度としては、効果が大きく長期的に続くものから取り組むと効率的です。 例えば、通信費のプラン変更や不要なサブスクリプションの解約、保険料の見直しなどは、一度手続きをすれば毎月の支出を継続的に減らせます。 食費や娯楽費も見直し対象ですが、あまりに削りすぎると生活の満足度が下がりやすいため、バランスが重要です。

  • 固定費の見直しを優先する
  • 老後も続きそうな支出に注目する
  • 楽しみを残しつつ削れる部分を探す

このような視点で家計をチェックすると、どこから手を付ければよいかが見えてきます。 老後の生活費を考えるときも、現在の支出をベースに「これは続ける」「これは減らす」と優先順位を付けていくと、現実的な生活費の水準が見えてくるでしょう。

積立・資産形成プラン

老後資金を準備するには、毎月の積立をコツコツ続けることが基本になります。 一度に大きな金額を用意するのは難しくても、時間を味方につければ、無理のない範囲で目標に近づくことができます。 積立の方法としては、銀行の定期預金や積立預金、投資信託の積立、iDeCoやNISAを活用した積立などがあります。

預貯金は元本が保証されている一方、金利が低いため、大きく増やすことは期待しにくい側面があります。 安全性を重視したい資金や、数年以内に使う予定のお金については、預貯金で持っておくと安心です。 一方、老後まで十年以上ある資金については、リスクを理解したうえで、投資信託などを活用して増やすことを検討する人もいます。

投資信託の積立は、毎月一定額を自動で購入していく方法です。 価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことになるため、長期的には価格変動の影響をならす効果が期待できます。 ただし、元本割れのリスクがあり、短期的に大きく値下がりする可能性もあります。 リスクを取りすぎないよう、全体の資産の一部にとどめるなどの工夫が必要です。

積立プランを考える際は、「いつまでに、いくら貯めたいか」という目標を決めると、毎月の積立額が算出しやすくなります。 例えば、十五年後までに六百万円を貯めたい場合、単純計算で毎月約三万三千円程度の積立が必要です。 資産運用を組み合わせる場合でも、運用益はあくまでプラスアルファと考え、元本だけで目標の七割から八割程度をカバーできるようにしておくと、過度なリスクを取らずに済むでしょう。

持ち家の活用法

持ち家がある夫婦の場合、その住宅は住まいとしての役割だけでなく、老後資金の一部として活用できる可能性があります。 代表的な方法としては、住み替え、リバースモーゲージ、賃貸への転用などが挙げられます。 それぞれメリット・デメリットがあるため、自分たちの価値観や家族構成に合った選択が重要です。

住み替えは、現在の自宅を売却し、よりコンパクトで維持費の安い住宅に移る方法です。 郊外の戸建てから、利便性の高いマンションに移るケースもあれば、その逆もあります。 売却益の一部を老後資金に回しつつ、段差の少ない住宅や、病院やスーパーが近いエリアを選ぶことで、暮らしやすさを高めることも期待できます。

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から融資を受け、毎月の生活費などに充てる仕組みです。 契約者が亡くなった後に、自宅を売却して返済するのが一般的な流れです。 自宅に住み続けながら資金を得られる点は魅力ですが、金利の変動や不動産価格の下落などのリスクもあり、利用条件も金融機関によって異なります。

子どもが独立して空き部屋が増えた場合、部分的に賃貸として貸し出す方法も考えられます。 ただし、管理の手間や近隣との関係など、生活への影響も小さくありません。 持ち家の活用は、老後の暮らし方や家族の意向とも深く関わるため、夫婦だけでなく子どもとも話し合いながら、複数の選択肢を比較検討することが大切です。 制度や商品は変更される可能性があるため、具体的に検討する際は、自治体や金融機関、専門家から最新情報を得るようにしましょう。

保険・年金商品でリスクを補う方法と加入の検討ポイント

老後の生活費を考えるとき、医療費や介護費、長生きリスクなどに備えるために、保険や年金商品を活用する方法もあります。 ただし、保険料が家計を圧迫してしまうと本末転倒になりかねません。 保険は「万が一のときに備える」役割が中心であり、貯蓄や資産運用とどうバランスを取るかがポイントになります。

医療保険やがん保険は、入院や手術などの費用をカバーする商品です。 高齢になると入院日数が短くなる傾向もあり、保障内容が実情に合っているかどうかを確認することが大切です。 また、公的医療保険には高額療養費制度があり、自己負担額には上限があります。 この制度を踏まえたうえで、どの程度の保障を民間保険で補うかを考えると、過剰な加入を避けやすくなります。

介護保険商品は、公的介護保険でカバーしきれない部分を補うことを目的としています。 要介護状態になったときに一時金や年金形式で給付が受けられるタイプがありますが、保険料とのバランスや、給付条件の厳しさなども確認が必要です。 介護がどの程度必要になるかは予測が難しいため、預貯金と保険を組み合わせて備える考え方が現実的でしょう。

年金保険や終身保険を老後資金の一部として活用する場合は、返戻率や受取時の税金、解約時の条件などもチェックしておきたいポイントです。 長期間にわたる契約になることが多いため、途中で保険料の支払いが苦しくならないか、他の支出とのバランスも考慮する必要があります。 加入や見直しを検討する際は、複数の商品を比較し、自分たち夫婦の家計状況やリスクへの考え方に合ったものを選ぶことが重要です。 分かりにくい部分があれば、保険会社や金融機関の担当者だけでなく、中立的な立場の専門家に相談するのも有効な方法でしょう。

まとめ

夫婦の老後生活費は、平均的なデータを見ると毎月二十万円台から三十万円前後が目安とされています。 ただし、持ち家か賃貸か、どの程度のゆとりを求めるか、医療や介護の状況などによって、必要な生活費は大きく変わります。 まずは総務省や生命保険文化センターの調査結果を参考にしつつ、自分たちのライフスタイルに合わせて、現実的な金額をイメージすることが大切です。

老後の収入源としては、公的年金が中心になりますが、退職金や預貯金、iDeCoやNISAを通じた資産形成、個人年金保険なども組み合わせることで、不足分を補うことができます。 一方で、長生きリスクや医療・介護費、物価上昇などの不確実な要素もあるため、シミュレーションではある程度の上乗せをしておくと安心でしょう。

具体的な対策としては、家計の見直しや積立の強化、持ち家の活用、保険や年金商品の整理など、できるところから少しずつ進めていくことがポイントです。 老後資金の計画は、一度立てて終わりではなく、ライフステージや制度の変更に応じて見直していく必要があります。

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この記事を書いた人

田中 壮のアバター 田中 壮 株式会社TFPグループ代表取締役

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

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