在職老齢年金の仕組みとは?28万円の壁や支給額についても解説

監修者

TFPグループ 代表取締役 田中壮
田中壮

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

「在職老齢年金は聞いたことがあるけれど、自分の年金がどれくらい減るのか分からない」と感じていないでしょうか。 特に、28万円や47万円といった金額が出てくると、急に難しく感じる方も多いはずです。

この記事では、在職老齢年金の基本から、28万円の壁や支給停止の計算方法まで、流れに沿って整理します。 あわせて、65歳以降の働き方や税金、家計への影響も取り上げますので、自分の老後の収入イメージをつかむ手がかりにしてみてください。

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目次

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、年金を受給しながら働く高齢者の年金額を調整する仕組みです。 会社員として厚生年金に加入したまま老齢年金を受け取る人が対象で、給与との合計額に応じて支給が一部または全額停止されることがあります。

年金制度の目的は、働けなくなった後の生活を支えることです。 一方で、高齢になっても在職を続ける人が増えたため、年金と賃金のバランスをとる必要が生じました。 その結果として設けられたのが在職老齢年金であり、老齢年金の金額や働き方に少なからず影響します。

在職老齢年金とはどんな制度かをやさしく解説

在職老齢年金は、公的年金のうち老齢厚生年金を受給しながら働く人の年金額を調整する制度です。 一定以上の給与や賞与を得ている場合、老齢年金の一部が支給停止となります。 年金が減る仕組みと聞くと損をした気持ちになるかもしれません。

ただ、在職老齢年金の背景には、働いて収入がある人と、年金だけで暮らす人とのバランスを取るという考え方があります。 在職中も厚生年金保険料を納め続けることで、将来の年金額が増える仕組みも含まれています。 短期的には支給停止があっても、長期的に見ると必ずしも一方的な不利とは言い切れません。

対象となるのは、原則として老齢厚生年金を受給できる年齢に達し、会社員やパートなどとして厚生年金保険に加入している人です。 国民年金だけの自営業者や、厚生年金に加入していない働き方の場合は在職老齢年金の対象外となります。 自分がどの年金制度に加入しているかを確認することが、最初の一歩といえるでしょう。

なお、在職老齢年金の具体的な金額や判定方法は、年齢や年度によって変わる可能性があります。 最新の基準額や計算式は、日本年金機構や厚生労働省の資料で確認しながら検討することが大切です。

「28万円の壁」「47万円の基準額」とは?

在職老齢年金を調べると、「28万円の壁」や「47万円」という数字をよく目にします。 これは、給与と年金の合計額がどの水準を超えると老齢年金が減り始めるかを示す基準です。

特に、60歳代前半と65歳以上では基準額が異なり、支給停止のルールも変わります。 ここでは、28万円と47万円がそれぞれどのような意味を持つのかを整理し、月額や年収ベースでのイメージをつかめるように解説していきます。

28万円の壁の意味と月額・年収での判断基準

かつて在職老齢年金では、60歳から65歳未満の人に対して「28万円の壁」という基準がありました。 これは、給与と老齢厚生年金の合計額が月28万円を超えると、年金の一部が支給停止になるという考え方です。 ただし、その後の改正により基準額や対象年齢は変化しています。

28万円というのは月額ベースの数字で、年収で考えるとおおよそ年額336万円前後が目安です。 実際には、標準報酬月額という仕組みを用いて計算されるため、単純に手取り給与だけで判断することはできません。 賞与やボーナスも標準賞与額として合計に含まれるため、年収全体で見る必要があります。

現在は、60歳代前半についても基準額の見直しが行われており、28万円という表現だけでは実情を表しきれなくなってきました。 それでも、在職中の年金が賃金との合計額で調整されるという根本的な考え方は続いています。 月給が増えたり、賞与が多かったりすると、老齢年金の支給額に影響が出る可能性があるという点は変わりません。

自分がどの年度の制度の対象になるか、また、実際の合計額がどの水準にあるかを把握しておくと安心です。 年金の通知書や給与明細を手元に置きながら、日本年金機構のシミュレーションなどで確認しておくと、将来の家計管理にも役立つでしょう。

47万円の扱い

65歳以上の在職老齢年金では、「47万円」という金額が一つの基準として使われています。 これは、給与と老齢厚生年金の合計額が47万円を超えると、超えた部分の一部に応じて年金が減額されるという仕組みです。 いわゆる「47万円の基準額」と呼ばれることがあります。

ここでいう47万円は、実際の手取りではなく、標準報酬月額と呼ばれる計算上の月額を基にしています。 標準報酬月額は、一定期間の給与を区切りの金額ごとに区分したもので、社会保険料や年金額の計算に使われる数字です。 その標準報酬月額と、老齢厚生年金の基本月額を合計した金額が47万円を超えるかどうかで、支給停止の有無が決まります。

たとえば、老齢厚生年金の月額が15万円で、標準報酬月額が30万円の場合、合計は45万円です。 このケースでは47万円未満なので、在職老齢年金による支給停止は原則ありません。 一方で、標準報酬月額が35万円で年金が15万円なら合計は50万円となり、47万円を3万円超えることになります。

この超えた3万円の一部が調整額として差し引かれ、老齢年金の支給額が減る仕組みです。 ただ、実際の計算では、月単位ではなく年度ごとの見直しや賞与を含めた扱いなど、細かなルールも関わります。 自分の標準報酬月額が分からない場合は、年金定期便や会社からの社会保険の書類を確認するとよいでしょう。

報酬月額・標準報酬・相当額を使った計算式

在職老齢年金の支給停止額を計算するには、「標準報酬月額」と「基本月額」という二つの数字が鍵になります。 標準報酬月額は、給与を一定の幅ごとに区切ったもので、社会保険料や年金額の計算に用いられます。 基本月額とは、老齢厚生年金の年額を十二で割った月あたりの年金額です。

65歳以上の場合、一般的な計算の考え方は次のようになります。 標準報酬月額と基本月額の合計が47万円を超えたとき、その超えた部分の半分が調整額として年金から差し引かれます。 たとえば、合計が53万円なら47万円を6万円超えているため、その半分の3万円が支給停止となるイメージです。

実際の式は「支給停止額=(標準報酬月額+基本月額−47万円)÷2」という形で表されます。 ただし、マイナスになる場合はゼロとされるため、47万円未満なら支給停止は生じません。 賞与があるときは標準賞与額も加味されるため、年収が大きく変動する人は注意が必要です。

なお、ここで説明した計算方法はあくまで基本的な考え方であり、年度や制度改正によって数字や扱いが変わることがあります。 日本年金機構の公式な計算ツールや、年金事務所での相談を併用しながら、自分の在職中の年金額を確認していくことが大切です。

在職老齢年金の支給停止と調整額の仕組み

在職老齢年金では、給与と年金の合計額が一定水準を超えると、老齢年金の一部や全額が支給停止となります。 このとき差し引かれる金額を「調整額」と考えると理解しやすくなります。

支給停止の仕組みは、年齢や基準額によって変わるうえ、賞与の有無でも結果が変動します。 ここでは、支給停止の判定ルールと調整額の計算方法を整理し、月額や年収パターン別のイメージをつかめるように説明していきます。

支給停止の判定ルール

在職老齢年金の支給停止が行われるかどうかは、主に年齢と、給与と年金の合計額で判定されます。 60歳代前半と65歳以上では基準となる金額が異なり、それぞれに応じたルールが用いられます。 共通しているのは、一定額を超えた部分に応じて老齢年金が減額されるという考え方です。

65歳以上の場合、標準報酬月額と老齢厚生年金の基本月額を合計し、その金額が47万円を超えるかどうかで支給停止が決まります。 47万円以下であれば原則として支給停止はありませんが、超えた場合にはその一部が年金から差し引かれます。 一方、60歳から65歳未満については、過去には28万円など別の基準額が用いられてきました。

ただし、在職老齢年金の制度は見直しが続いており、年度によって適用される基準や対象年齢が変わることがあります。 同じ年齢でも、退職の時期や再就職のタイミングによって支給額が異なるケースもあります。 そのため、自分の年齢と在職状況に合わせて、適用されるルールを確認することが欠かせません。

支給停止という言葉から、年金が永久に減らされるような印象を持つ方もいますが、実際には働いている期間の調整に過ぎない面もあります。 在職中も厚生年金保険料を納めることで、将来の老齢年金の年額が増える可能性があります。 短期と長期の両方の視点から、自分に合った働き方と受給のタイミングを検討していくとよいでしょう。

調整額・減額の計算方法

在職老齢年金の調整額は、「どれだけ合計額が基準を超えたか」によって決まります。 65歳以上の一般的なケースでは、標準報酬月額と老齢厚生年金の基本月額の合計から47万円を引き、その半分が支給停止の目安となります。 この仕組みを知っておくと、自分の年金がどの程度減るか、大まかなイメージを持てます。

例えば、基本月額が15万円、標準報酬月額が40万円の人を考えてみます。 合計は55万円なので、47万円を8万円超えています。 この超えた8万円の半分である4万円が調整額となり、老齢厚生年金から差し引かれる形です。

ただし、実際の支給停止額は、老齢厚生年金のうち報酬比例部分を上限として調整されます。 老齢基礎年金は原則として在職老齢年金の支給停止の対象外とされるため、すべての年金が減るわけではありません。 また、賞与があるときには標準賞与額を含めた年額ベースの計算も行われるため、ボーナスの多い年は支給額が変動しやすくなります。

計算式は少し複雑に感じられますが、考え方としては「合計額が多いほど調整額も増える」というシンプルな構造です。 自分で細かく計算するのが難しい場合は、日本年金機構の試算サービスや年金事務所での相談を利用する方法もあります。 制度は改正されることがあるため、最新の計算方法を確認しながら、家計の見通しを立てていくことが大切です。

月額・年収パターン別の試算

在職老齢年金がどの程度減るのかは、月給や年収の水準によって大きく変わります。 ここでは、あくまでイメージをつかむためのパターンとして、いくつかのケースを考えてみます。 実際の支給額は個々の年金記録や年度の制度によって異なるため、目安として捉えてください。

たとえば、65歳以上で老齢厚生年金の基本月額が10万円、標準報酬月額が25万円の場合、合計は35万円です。 このケースでは47万円を下回るため、在職老齢年金による支給停止は原則生じません。 年収ベースで見ても、給与が年300万円前後、年金が年120万円程度なら、合計約420万円となり、調整は比較的少ないと考えられます。

一方、基本月額が15万円で標準報酬月額が40万円の人では、合計が55万円となります。 先ほど触れたように、47万円を8万円超えるため、その半分の4万円が月々の調整額の目安です。 年額ではおおよそ48万円程度が支給停止となるイメージになり、年金収入は年180万円から約132万円に減る計算になります。

さらに、高収入で標準報酬月額が50万円、基本月額が20万円というケースでは、合計が70万円です。 47万円を23万円超えるため、その半分の約11万5千円が調整額の目安になります。 老齢厚生年金の報酬比例部分の金額によっては、老齢厚生年金がほぼ全額停止となる可能性もあります。

このように、在職老齢年金の支給額は、月給や賞与、年金額のバランスで変動します。 自分の年収や老齢年金の見込み額をもとに、ざっくりとしたパターンを把握しておくと、老後の働き方を検討しやすくなります。 最終的な判断をする前には、必ず最新の制度と自分の記録に基づいた正式な試算を確認するようにしましょう。

65歳以上・高年齢雇用継続と年金額の合計例

65歳以上で働き続ける場合、在職老齢年金と給与、そして高年齢雇用継続給付などの給付金が重なります。 それぞれの合計額がどのくらいになるのかを知ることは、老後の家計を考えるうえで重要です。

ここでは、65歳以上の高齢者が再雇用などで働くケースを想定し、年金額と給与、給付金の組み合わせ例を紹介します。 実際の金額は個々の条件によって変わるため、あくまでイメージとして参考にしながら、自分の状況に当てはめて考えてみてください。

65歳以上・高年齢雇用継続と年金額の合計例

65歳以上で再雇用されるケースでは、フルタイムから短時間勤務に切り替える方も多くなります。 このとき、給与は現役時代より下がる一方で、老齢厚生年金と老齢基礎年金の受給が始まり、収入の構成が変わります。 在職老齢年金の基準である47万円を意識しつつ、全体の合計額をイメージしておくと安心です。

例えば、老齢基礎年金が月6万5千円、老齢厚生年金が月8万5千円で、合計の老齢年金が月15万円とします。 再雇用後の月給が20万円程度なら、標準報酬月額もおおよそ20万円前後となるため、合計は35万円ほどです。 この水準であれば47万円を下回るため、原則として在職老齢年金による支給停止は生じにくいと考えられます。

一方、専門職などで65歳以降も高い月給を維持する場合は、状況が変わってきます。 たとえば、月給が35万円で標準報酬月額も35万円、老齢年金の合計が月18万円なら、合計は53万円です。 47万円を6万円超えるため、その半分の3万円程度が老齢厚生年金から差し引かれるイメージになります。

このように、65歳以上の在職では、給与をどの程度に抑えるかによって、手取りの合計額が変化します。 年金の支給停止をできるだけ抑えたいのか、それとも高い給与を優先するのかは、人それぞれの価値観や家計状況によって異なります。 自分が安心して暮らせる収入水準をイメージしながら、再雇用や就労条件を検討していくことが大切です。

高年齢雇用継続給付や厚生年金との関係

60歳以降に賃金が大きく下がった場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されることがあります。 これは、一定の条件を満たした高年齢者に対し、減った賃金の一部を補う給付金です。 在職老齢年金とは別の制度ですが、実は年金の支給停止額に影響することがあります。

高年齢雇用継続給付を受け取ると、その給付金の一部が「賃金の相当額」とみなされ、在職老齢年金の計算に反映される場合があります。 その結果、給与と老齢厚生年金の合計額が増えたとみなされ、老齢年金の支給停止額が増える可能性もあります。 給付金と年金の両方を受け取ると、思ったより手取りが増えないというケースもあり得ます。

また、高年齢雇用継続給付は、原則として60歳から65歳までの雇用保険の被保険者が対象です。 65歳以降は別の高年齢雇用継続給付金の取り扱いとなるため、在職老齢年金との関係も変わってきます。 給付を受けるかどうかは、老齢年金の減額とのバランスを見ながら考える必要があります。

厚生年金に加入し続けることで、在職中も保険料の負担が続きますが、その分将来の老齢厚生年金の年額が増える可能性があります。 在職中の支給停止と、退職後の年金増額の両方を視野に入れて、長期的な収入の流れを考えることが大切です。 自分のケースでどのような影響が出るかは、年金事務所やハローワークで相談しながら確認していくとよいでしょう。

月給・賞与・年収別の合計シミュレーション

在職老齢年金を考えるときは、月給だけでなく、賞与やボーナスを含めた年収全体で見ることが重要です。 賞与が多い年には標準賞与額が加算され、結果として在職中の老齢年金の支給停止額が増える可能性があります。 いくつかのパターンを例に、合計額のイメージを整理してみましょう。

たとえば、65歳以上で月給20万円、賞与が年40万円、老齢年金が年180万円とします。 給与の年収は240万円で、賞与を加えると年280万円です。 年金と合わせた年収はおよそ460万円となり、月額換算では合計が約38万円前後となるため、47万円の基準を大きくは超えない水準と考えられます。

次に、月給30万円、賞与年60万円、老齢年金年200万円のケースを考えます。 給与の年収は360万円で、賞与を含めると420万円です。 年金と合わせた年収はおよそ620万円となり、月額に直すと合計が約51万円程度のイメージになります。

この場合、標準報酬月額と基本月額の合計が47万円を一定程度上回る可能性が高く、在職老齢年金の支給停止が発生しやすくなります。 ボーナスの支給タイミングによっては、特定の月だけ大きく調整されることもあります。 自分の年収水準と老齢年金額を把握し、どの程度の支給停止が起こりうるかを試算しておくと、家計の計画が立てやすくなるでしょう。

なお、ここで挙げた数字はあくまでイメージであり、実際の標準報酬月額や標準賞与額は社会保険のルールに基づき決まります。 具体的なシミュレーションを行う際には、日本年金機構の試算ツールや専門家の助言も活用しながら、最新の制度を前提に検討していく必要があります。

在職老齢年金改正と廃止の動向

在職老齢年金は、高齢者の就労が当たり前になってきたことから、たびたび見直しの対象となっています。 過去にも基準額の変更や対象年齢の調整など、いくつかの改正が行われてきました。

最近では、制度そのものの廃止を含めた議論も出ており、今後の動向が気になる方も多いでしょう。 ここでは、これまでの改正のポイントと、廃止議論の背景、そして会社員や家計への影響について整理し、どのように備えておくとよいかを考えていきます。

在職老齢年金改正の主なポイントと過去の改定履歴

在職老齢年金は、導入以来、社会や働き方の変化に合わせて何度も改正されてきました。 かつては60歳から65歳未満の人に対して28万円の基準額が設けられ、これを超えると老齢年金が大きく減る仕組みでした。 その後、高齢者の就労を後押しする観点から、基準額の引き上げや対象者の見直しが段階的に行われています。

近年の主な改正では、60歳代前半に対する基準額が緩和され、働きながらでも年金を受け取りやすくなりました。 また、65歳以上の基準額である47万円についても、経過的に見直しが検討されてきました。 背景には、高齢者の就労率が上がり、年金と給与を組み合わせる働き方が一般的になってきたことがあります。

一方で、在職老齢年金の仕組みは複雑で分かりにくいという指摘も多く、制度の簡素化が課題となってきました。 同じ年齢でも、在職状況や年金加入歴によって支給額が大きく違うため、公平感の面でも議論が続いています。 こうした背景から、厚生労働省や有識者会議などで、制度の見直し案が検討されてきました。

今後も、社会保障全体の見直しの中で在職老齢年金の取り扱いが変わる可能性があります。 自分が老齢年金を受け取る時期まで、どのような改定が行われるかは読み切れません。 そのため、定期的に公的な情報を確認しながら、柔軟に働き方や受給のタイミングを考えていくことが重要といえるでしょう。

在職老齢年金廃止議論の背景と検討状況

在職老齢年金の廃止が議論される背景には、高齢者の就労をより強く後押ししたいという考え方があります。 年金が減る可能性があると、働く意欲に影響するのではないかという懸念が以前から指摘されてきました。 特に、フルタイムで働くと在職老齢年金の支給停止が増えるため、就労時間を抑える人もいるとされています。

また、在職老齢年金の計算方法は、標準報酬月額や基本月額など専門的な用語が多く、一般の人には分かりにくい制度です。 そのため、「働いた分だけ損をするように感じる」「なぜ年金が減らされるのか納得しにくい」という声もあります。 こうした不満や誤解を減らすためにも、制度そのものを簡素化する必要があると考えられてきました。

一方で、在職老齢年金を完全に廃止すると、高所得の高齢者にも年金が満額支給されることになります。 公的年金は社会全体で支え合う仕組みであるため、負担と給付のバランスをどう保つかという課題も生じます。 廃止に踏み切る場合、どのように財源を確保するかという論点も避けて通れません。

現時点では、在職老齢年金をただちに廃止するというより、段階的な見直しや対象者の限定など、複数の選択肢が検討されています。 国の審議会や報道などを通じて、今後の方針が徐々に示されていくと考えられます。 将来の制度は変わり得る前提で、最新の情報を確認しつつ、自分の働き方や老後資金の計画を柔軟に見直していく姿勢が求められます。

改正・廃止が会社員や家計に与える影響と対応策

在職老齢年金の改正や廃止は、会社員や再雇用で働く高齢者の家計に直接影響します。 もし支給停止の仕組みが緩和されれば、働きながら受け取れる年金額が増える可能性があります。 その一方で、制度全体の持続性を保つため、別の形で負担が増える可能性も考えられます。

家計への影響を考える際は、「手取り収入の合計」と「将来の年金額」の両方を見ることが大切です。 短期的に年金が多く受け取れるようになっても、長期的な給付水準が変わる場合もあります。 また、税金や社会保険料の負担も、収入の増減によって変わるため、トータルでの手取りを確認する必要があります。

対応策としては、まず自分の年金見込み額と、現在の給与や年収の水準を把握することが出発点になります。 そのうえで、フルタイムで働くのか、短時間勤務にするのか、退職のタイミングをどうするのかといった選択肢を検討していきます。 在職老齢年金のルールを理解しておくと、収入の山と谷をある程度コントロールしやすくなります。

また、制度は今後も見直される可能性が高いため、一度決めた働き方を固定せず、数年ごとに見直すことも重要です。 会社の人事制度や再雇用の条件、家族の状況なども変化します。 公的年金だけに頼らず、貯蓄や私的年金、資産運用なども含めて、複数の収入源を意識した資金計画を立てておくと、変化にも対応しやすくなるでしょう。

在職老齢年金の受給の選択肢と働き方

在職老齢年金を前提に老後の働き方を考えるとき、「いつから年金を受給するか」「どのくらい働くか」という二つの軸が重要になります。 繰り下げ受給や再就職、退職のタイミングによって、老齢年金の金額や手取り収入は大きく変わります。

ここでは、繰り下げ受給のメリットとデメリット、再雇用や再就職で年金がどう変わるか、そして退職後に受給を始める場合の注意点を整理します。 自分に合った働き方をイメージしやすくなるよう、ポイントを押さえて解説していきます。

繰り下げ受給のメリット・デメリットと増額計算

老齢年金は、原則として65歳から受給できますが、受け取り開始時期を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶことも可能です。 繰り下げをすると、その分だけ年金額が増える仕組みになっており、在職中で収入が十分にある人にとっては一つの選択肢となります。 ただし、メリットだけでなくデメリットもあるため、慎重な検討が必要です。

繰り下げ受給では、1か月遅らせるごとに年金額が一定割合増額されます。 たとえば、数年間繰り下げることで、受給開始後の老齢年金が2割以上増えるケースもあります。 在職期間中は給与や賞与があるため、老齢年金を受け取らずに生活できる人にとっては、将来の年金を厚くする方法の一つといえるでしょう。

一方で、繰り下げ期間中は老齢年金を受け取らないため、その分の年金は将来にわたって戻ってきません。 長生きすれば有利になる可能性があるものの、どの時点で「元が取れるか」は人それぞれです。 健康状態や家族構成、他の収入源なども考慮しないと、一概に得とも損とも言い切れません。

在職老齢年金の支給停止を避けるために繰り下げを選ぶ人もいますが、年金を受け取りながら働き、支給停止の範囲内で調整するという考え方もあります。 繰り下げ受給を選ぶかどうかは、ライフプラン全体の中で判断することが大切です。 具体的な増額率や計算方法は制度改正の影響も受けるため、最新の情報をもとに、公的な試算サービスなどを活用しながら検討していきましょう。

再就職・再雇用で年金がどう変わるか

定年後に再雇用や再就職をすると、在職老齢年金の対象となる可能性があります。 老齢年金の受給開始年齢に達している人が厚生年金に再び加入すると、給与と年金の合計額に応じて支給停止が発生することがあるためです。 再就職の条件によって、手取りの収入構成は大きく変わります。

たとえば、定年後に同じ会社で再雇用され、月給が現役時代の半分程度に下がるケースがあります。 この場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金の受給が始まるため、給与と年金を合わせた合計額は、現役時代と近い水準になることもあります。 標準報酬月額が下がれば、在職老齢年金による支給停止も軽くなる傾向があります。

一方で、専門性が高く高収入で再就職する場合は、在職老齢年金の支給停止が大きくなる可能性があります。 月給や賞与が多いほど、標準報酬月額と基本月額の合計が47万円を超えやすくなり、老齢厚生年金の一部または大部分が停止されることもあります。 この場合、老齢年金をあえて繰り下げるか、働き方のペースを調整するかといった選択肢も検討材料になります。

再就職や再雇用を考えるときは、提示される月給や勤務時間だけでなく、在職老齢年金の影響も含めた「手取りの合計額」を確認することが重要です。 会社の人事担当者や社会保険の担当部署に相談し、年金事務所での説明も受けながら、自分にとって無理のない働き方を選んでいくとよいでしょう。

退職して受給する場合のタイミングと税・手続き上の注意

在職老齢年金の支給停止を避けるために、一定の年齢で退職し、老齢年金の受給に切り替えるという選択肢もあります。 退職すると厚生年金の被保険者ではなくなるため、在職老齢年金の調整対象から外れます。 その結果、老齢厚生年金と老齢基礎年金を満額に近い形で受け取れる可能性があります。

ただし、退職のタイミングを決める際には、税金や社会保険料の面にも注意が必要です。 年の途中で退職すると、その年の給与と年金の合計額が一時的に増え、所得税や住民税の負担が変わることがあります。 退職金を受け取る場合は、退職所得控除などの特別な計算も関わってきます。

老齢年金の受給を始めるには、日本年金機構への請求手続きが必要です。 退職と同時に受給を開始したい場合は、余裕を持って必要書類を準備し、会社からの離職票や資格喪失の情報が整うタイミングも確認しておきましょう。 手続きの遅れによって、受給開始時期が後ろ倒しになると、当面の生活資金に影響することもあります。

退職して受給に切り替えるか、在職を続けながら年金を受け取るかは、人それぞれの健康状態や家計状況、仕事への思いによって最適な答えが変わります。 どちらを選ぶにしても、税金や社会保険、手続きの流れをあらかじめ確認し、無理のないスケジュールを立てることが大切です。 不安がある場合は、税理士や社会保険労務士、年金事務所などの専門窓口への相談も検討するとよいでしょう。

在職老齢年金の税金・確定申告・家計への影響と資金計画の立て方

在職老齢年金は、年金制度だけでなく、税金や社会保険料、家計全体の資金計画にも関わってきます。 給与と年金の両方を受け取ると、所得の種類が増えるため、確定申告が必要になるケースもあります。

ここでは、年金にかかる税金や非課税枠の考え方、在職中の年金と社会保険料・雇用保険との関係、そして在職老齢年金を前提とした資金計画の立て方について整理します。 老後の家計を見通すうえでのヒントとして、順を追って確認していきましょう。

年金の課税・非課税枠と確定申告のポイント

公的年金には、一定の非課税枠が設けられており、その範囲内であれば所得税がかからない仕組みになっています。 ただし、在職中に給与と老齢年金の両方を受け取ると、合計額によっては課税対象となる部分が生じます。 年金の受給が始まったら、税金の扱いをあらためて確認しておくことが大切です。

公的年金等控除と呼ばれる仕組みにより、年金収入から一定額が差し引かれ、その残りが課税対象となる雑所得として扱われます。 控除額は年齢や年金の年額によって変わるため、自分の年金額に応じた控除水準を確認する必要があります。 給与所得についても、給与所得控除が適用され、残りが課税所得の計算に用いられます。

在職中は、給与については会社が年末調整を行うことが多いですが、年金分については自動的に調整されないケースがあります。 給与と年金の両方がある場合、確定申告をすることで、過不足のある所得税を精算することになります。 特に、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除などを合わせて申告すると、税負担が軽くなることもあります。

確定申告の必要性は、収入額や源泉徴収の有無によって変わるため、一概には言えません。 自分が申告の対象になるかどうかは、国税庁の案内や税務署の相談窓口を活用して確認すると安心です。 在職老齢年金を受け取り始めた年は、特に税金の扱いが変わりやすいため、早めに情報収集をしておきましょう。

在職中の年金と社会保険料・雇用保険との関係

在職中に老齢年金を受給している場合でも、会社員として働いていれば、厚生年金保険料や健康保険料の負担は続きます。 これは、在職老齢年金の支給停止があっても同じです。 一見すると負担が増えているように感じるかもしれませんが、その分、将来の老齢厚生年金の年額が増える可能性があります。

厚生年金保険料は、標準報酬月額と標準賞与額をもとに計算されます。 在職中に保険料を納めることで、老齢厚生年金の加入期間が延び、報酬比例部分の金額が増えます。 退職後に受け取る年金額が少しずつ上乗せされるため、長い目で見ると老後の収入を支える役割を果たします。

雇用保険についても、一定の条件を満たす在職高齢者は引き続き加入し、保険料を負担します。 賃金が下がった場合には、高年齢雇用継続給付などの給付金を受け取れる可能性がありますが、その一部は在職老齢年金の計算にも影響します。 社会保険と年金、雇用保険の関係は複雑に見えますが、全体としては「働きながらの生活を支える仕組み」として連動しています。

在職中は、保険料の負担と老齢年金の支給停止の両方が発生することもあるため、手取り収入が思ったほど増えないと感じるかもしれません。 それでも、将来の年金増額や雇用保険の給付など、長期的なメリットも存在します。 自分の負担と給付のバランスを理解するために、社会保険料の明細や年金定期便を定期的に確認しておくとよいでしょう。

在職老齢年金を見据えたシナリオ作成

在職老齢年金を前提に老後の資金計画を立てるときは、いくつかのシナリオを用意しておくと安心です。 一つのケースだけで考えると、制度改正や健康状態の変化など、想定外の出来事に対応しにくくなります。 複数のパターンを検討しておくことで、変化に強い家計づくりにつながります。

例えば、次のようなシナリオを考えてみるとよいでしょう。

  • 65歳以降もフルタイムに近い形で在職し、在職老齢年金の支給停止を受けつつ高い収入を維持するパターン
  • 再雇用や短時間勤務で月給を抑え、在職老齢年金の支給停止をできるだけ少なくするパターン
  • 一定の年齢で退職し、老齢年金を中心に生活しながら、必要に応じてパートなどで補うパターン

それぞれのシナリオについて、月々の手取り収入や年間の支出、貯蓄の取り崩し額をざっくりと試算してみると、現実味が増します。 住宅ローンや医療費、介護費用など、将来増えそうな支出もあらかじめ織り込んでおくとより安心です。 在職老齢年金の制度が変わった場合は、その都度シナリオを更新し、無理のない範囲で働き方や家計のバランスを調整していきます。

資金計画は一度作って終わりではなく、ライフイベントや制度改正に合わせて見直していくものです。 必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しながら、客観的な視点も取り入れるとよいでしょう。 最終的な判断は自分自身が行うことになりますが、事前に情報を整理しておくことで、納得感のある選択につながりやすくなります。

まとめ

在職老齢年金は、年金を受け取りながら働く人の年金額を調整する制度で、給与と老齢年金の合計額が基準を超えると支給停止が生じます。 60歳代前半と65歳以上では基準額が異なり、特に65歳以上では47万円が一つの目安となります。 標準報酬月額や基本月額など、計算に使われる用語を押さえることで、自分の支給額のイメージがつかみやすくなります。

また、在職老齢年金は改正や廃止の議論が続いており、今後の制度が変わる可能性もあります。 繰り下げ受給や再雇用、退職のタイミングなど、働き方によって老齢年金や税金、社会保険料への影響が異なります。 複数のシナリオを考えながら、自分と家族にとって無理のない収入バランスを検討していくことが大切です。

執筆者

田中 壮のアバター 田中 壮 株式会社TFPグループ代表取締役

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

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