独身者の老後資金はいくら必要?必要額の目安や準備方法を徹底解説!

独身者の老後資金はいくら必要?必要額の目安や準備方法を徹底解説!

監修者

監修者
田中壮

TFPグループ 代表取締役 田中 壮

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

独身のまま老後を迎えるとき、老後資金はいくら必要なのか。 年金だけで足りるのか。 漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、独身者の老後に必要な資金の目安や、生活費の内訳、シミュレーションのやり方を整理します。 NISAやiDeCoなどの制度もふれながら、今からできる準備方法を具体的に解説します。 自分の状況に近いケースをイメージしながら、老後の資金計画づくりの参考にしてみてください。

目次

独身者に必要な老後資金の目安

ここでは、独身者の老後にどれくらいの資金が必要になるかの全体像を整理します。 男女別の平均寿命や、公的年金の受給額の違いなどをふまえながら、一般的な目安を確認していきます。

あくまで平均的なデータをもとにした金額なので、実際にはライフスタイルや住居、健康状態によって変わります。 自分のケースに当てはめるための「出発点」として、数字の意味をつかんでおきましょう。

独身女性・独身男性それぞれの目安と平均寿命の影響

独身の老後を考えるとき、まず意識したいのが平均寿命と年金額の違いです。 一般的に女性は男性より長生きしやすく、その分だけ老後の期間が長くなる可能性があります。

総務省や厚生労働省の統計では、平均寿命は男性より女性が数年長い水準です。 この差は数年分の生活費にあたるため、老後資金の必要額にも影響します。 例えば同じ年金月額でも、女性は受け取る期間が長くなりやすいので、貯蓄で補う期間も長引くかもしれません。

また、独身男性は現役時代の収入が比較的高い人もおり、厚生年金の受給額が女性より多いケースがあります。 一方で、独身女性はパート勤務や非正規雇用が多く、国民年金中心となる人も少なくありません。 その場合、老後の毎月の収支が赤字になりやすく、貯蓄や資産運用での補填がより重要になります。

独身者は夫婦世帯と違い、生活費を分け合う相手がいない点もポイントです。 家賃や光熱費など、一定の出費は一人でもほぼ変わらないため、単身世帯のほうが一人あたりの負担が重くなりがちです。 平均値だけでなく、自分の年金見込み額と寿命の想定を踏まえて、必要な資金を考えていくことが大切と言えるでしょう。

生活費や住宅ローン考慮

老後資金の必要額を考えるうえで、毎月の生活費と住居費は欠かせない要素です。 同じ独身でも、持ち家か賃貸か、住宅ローンが残っているかで、必要な資金は大きく変わります。

総務省の家計調査では、高齢単身世帯の消費支出は、おおまかに月十数万円というデータがあります。 ここには食費や光熱費、通信費、交際費、娯楽費などの日常生活費が含まれます。 ただし、この金額は平均値であり、住んでいる地域や趣味、健康状態によって上下します。

住居費については、持ち家であればローン完済後は管理費や固定資産税、修繕費が中心です。 一方、賃貸の場合は家賃が生涯続くため、老後も毎月の負担が続きます。 例えば家賃が月7万円なら、30年間で約2,500万円近い支払いになる計算です。

住宅ローンが老後も残るケースでは、年金収入からローン返済を続けることになります。 この場合、生活費をかなり抑えるか、貯蓄を多めに用意する必要が出てきます。 老後の住まいをどうするかを早めに決めておくと、必要な資金のイメージがぐっと明確になります。

3,000万円、5,000万円はどういうケースか

老後資金というと「3,000万円」「5,000万円」といった数字を耳にすることがあります。 これらは一つの目安にすぎませんが、どういう前提で試算されるのかを知っておくと役立ちます。

例えば、老後生活費が毎月25万円で、公的年金が15万円入るとします。 この場合、毎月10万円が不足する計算です。 不足分が年間120万円となり、30年間続くと3,600万円となるため、3,000万円台という目安が語られやすくなります。

一方で、生活費にゆとりを持たせたい人や、賃貸で家賃負担が続く人、旅行や趣味にお金をかけたい人では、毎月の不足額がさらに増えることもあります。 その場合、必要な老後資金が5,000万円前後になるケースも考えられます。 また、医療費や介護費用、リフォーム費などの一時的な出費を厚めに見積もると、必要額は自然と高くなります。

逆に、生活水準を抑え、持ち家で住宅費を低くできれば、3,000万円より少ない準備で足りる人もいるでしょう。 重要なのは、世の中でよく聞く数字をそのまま信じるのではなく、自分の生活費や年金受給額をもとに試算することです。 目安の数字はあくまで参考にしつつ、自分の老後の姿を想像して、必要な資金を組み立てていきましょう。

単身世帯の最低限・余裕

独身の老後資金を考えるとき、「最低限の生活」と「ある程度ゆとりのある生活」を分けて考えると整理しやすくなります。 単身世帯では、どのくらいの生活費を想定するかで、必要な資金が大きく変わります。

最低限の生活とは、食費や光熱費、通信費、住居費など、日常生活を維持するために欠かせない支出を中心としたイメージです。 外食や旅行は控えめにし、趣味や交際費も抑えた形になります。 この場合、地域や住居によりますが、高齢単身世帯の消費支出平均よりやや低い水準を目安とする人もいます。

一方で、余裕のある老後生活を望む場合は、趣味や旅行、習い事、交際費などの支出が増えます。 さらに、病気や介護に備えて、予備の資金を多めに持っておきたいという考え方もあるでしょう。 このような生活を想定するなら、毎月数万円から十万円程度、最低限の水準より多く見積もることになります。

独身者の場合、家族の援助をあまり期待できないケースもあります。 そのため、最低限だけでなく、余裕を持った資金計画を検討しておくと安心感につながります。 とはいえ、無理な目標は続きません。 自分の収入や貯蓄ペースを踏まえ、現実的な範囲で「最低限」と「ゆとり」のバランスを考えることが大切です。

生活費の内訳と老後にかかる主な支出

この章では、老後の生活費の内訳と、独身者が特に意識したい支出を整理します。 日々の生活費だけでなく、医療費や介護費用、葬儀などの一時的な出費も含めて考えることがポイントです。

公的年金でどこまで賄えるのかを知ることで、老後資金としてどれくらいの貯蓄が必要になりそうかが見えてきます。 自分の家計に当てはめやすいように、項目ごとにイメージを持っておきましょう。

毎月の生活費の目安

老後の毎月の生活費は、総務省の家計調査などを参考にすると、おおまかな目安をつかみやすくなります。 高齢単身世帯の消費支出は、平均で十数万円台というデータがありますが、これはあくまで全国平均です。

内訳としては、食費、住居費、光熱・水道、通信費、交通・娯楽、医療費、保険料などが含まれます。 都市部の賃貸暮らしであれば、家賃の割合が大きくなり、地方の持ち家であれば住居費は比較的抑えられます。 同じ独身でも、住む場所や住まいの形で、老後の家計は大きく変わると考えておきましょう。

また、老後は通勤がなくなる一方で、日中の在宅時間が長くなり、光熱費が増える人もいます。 趣味や交際費も、時間に余裕ができることで増えるケースがあります。 現役時代より生活費が必ず下がるとは限らない点には注意が必要です。

自分の老後の生活費をイメージするためには、現在の家計簿をもとに、「仕事に関わる支出は減る」「医療費は増えるかも」といった変化を考えてみるとよいでしょう。 毎月の生活費の目安が見えてくると、老後資金としてどのくらいの準備が必要か、より現実的に考えられるようになります。

医療費・介護費用の実例と公的支援の範囲

高齢になると、医療費や介護費用の負担が増えやすくなります。 独身者は、家族に頼りにくい分、どの程度のお金がかかる可能性があるかを知っておくと安心です。

医療費については、高齢者は自己負担割合が原則1〜3割と定められています。 一定額を超えた場合には「高額療養費制度」により払い戻しを受けられる仕組みもあります。 それでも、通院が増えれば、薬代や交通費などの支出はまとまった金額になることがあります。

介護が必要になった場合は「介護保険制度」により、原則1〜3割の自己負担でサービスを利用できます。 訪問介護やデイサービス、施設入居など、要介護度に応じて利用できるサービスが変わります。 公的支援があるとはいえ、自己負担分や、制度の対象外となるサービス費用は自分で負担する必要があります。

例えば、特別養護老人ホームなどの施設は比較的費用を抑えられる一方で、民間の有料老人ホームでは、入居一時金や月額費用が高額になるケースもみられます。 また、介護期間が長引くと、合計の負担額も増えていきます。 医療や介護の費用は、具体的な金額が読みづらい分、「予備費」として一定額を老後資金に組み込んでおく考え方がよく取られています。

公的制度の内容や自己負担割合は、法律改正などで変わることがあります。 厚生労働省などの公的機関の情報を定期的に確認しつつ、自分の健康状態や家族状況を踏まえて備えておくことが大切です。

葬儀・リフォーム・入居費など一時的な大きな出費の対策

老後の家計では、毎月の生活費だけでなく、一時的に大きな出費が発生する場面も想定しておく必要があります。 代表的なものとして、葬儀費用、自宅のリフォーム費用、施設への入居一時金などが挙げられます。

葬儀費用は、形式や地域によって差がありますが、生命保険文化センターの調査では、総額で数十万円から百数十万円台という事例が多いとされています。 家族が少ない独身者の場合、葬儀の規模を小さくしたり、事前に簡素なプランを検討したりすることで、負担を抑えることも可能です。

自宅のリフォーム費用については、バリアフリー化や水回りの修繕などが発生しやすいと考えられます。 持ち家の場合、築年数が進むほど、まとまった修繕費が必要になることがあります。 住宅ローンがなくても、老後の住まいを維持するための資金は見込んでおいたほうが安心です。

介護施設やサービス付き高齢者向け住宅に入居する場合、入居一時金や敷金、礼金などが必要になるケースもあります。 入居費用は施設の種類によって大きく異なり、数十万円から数百万円以上まで幅があります。 こうした一時的な大きな出費は、老後資金の中で「特別費」として別枠で見積もっておくと、資金計画が立てやすくなります。

全てを完璧に予測することは難しいですが、どのような出費が起こりうるかを知っておくだけでも、心構えが変わります。 自分の住居や希望する老後生活を踏まえ、どの項目にどれくらい備えるかを検討してみてください。

公的年金でどこまで賄えるか

老後資金を考えるうえで、公的年金がどの程度生活費をカバーしてくれるかを把握することは欠かせません。 独身者の場合、年金が主な収入源になるケースが多いため、受給額の見込みを早めに確認しておきたいところです。

公的年金には、会社員や公務員が加入する厚生年金と、自営業者やフリーランスなどが加入する国民年金があります。 受給額は、加入期間や収入、保険料の納付状況によって変わります。 日本年金機構から届く「ねんきん定期便」や、ねんきんネットを利用すると、自分の将来の年金額の目安を確認できます。

一般的には、厚生年金に長く加入していた人のほうが、国民年金のみの人より年金月額は高くなる傾向があります。 一方で、老後の生活費は、年金の種類にかかわらず一定程度必要になるため、国民年金中心の人ほど、貯蓄や資産運用で不足分を補う必要性が高まりやすいと考えられます。

例えば、老後の生活費を毎月22万円と想定し、公的年金の受給額が月14万円であれば、毎月8万円の不足が生じます。 この不足分を貯蓄や運用でどのくらいの期間カバーしたいかによって、必要な老後資金の総額が変わります。 年金だけで生活費の全てを賄うのは難しいケースも多いため、自分の受給見込み額を把握し、早めに対策を検討することが重要です。

なお、公的年金の制度や支給開始年齢、受給額の水準は、将来的に変更される可能性があります。 年金の最新情報を確認しつつ、あくまで目安として試算し、余裕を持った資金計画を考えておきましょう。

老後資金シミュレーションのやり方とツール

老後資金はいくら必要かを具体的に知るには、自分の数字でシミュレーションしてみることが有効です。 ここでは、基本的な計算式と、自分で試算するときに役立つツールの使い方を紹介します。

また、NISAやiDeCoなどの資産運用を組み合わせた場合のシナリオも考えてみます。 賃貸か持ち家か、早期退職をするかどうかなど、ライフスタイル別のポイントも押さえておきましょう。

必要額=(想定支出-年金受給)×期間+予備費

老後資金の必要額をシンプルに考えるとき、基本となる考え方は「毎月の不足額×期間+予備費」です。 この式を使うと、自分なりの目安をつかみやすくなります。

まず、老後の毎月の生活費を想定します。 食費や住居費、光熱費、通信費、保険料、趣味や交際費などを、現在の家計を参考にしながら、老後向けに調整してみましょう。 次に、公的年金などの毎月の収入を見込みます。 ねんきん定期便などで確認した年金月額をもとにすると、より現実的な数字になります。

想定支出から年金などの収入を引いたものが、毎月の不足額です。 例えば、支出が月23万円、年金収入が月15万円なら、不足額は月8万円となります。 この不足額に、老後生活の期間をかけます。 65歳から95歳までの30年間を見込むなら、8万円×12カ月×30年で、およそ2,880万円が必要になります。

これに加えて、医療費や介護費用、住宅の修繕費、葬儀費用など、一時的な出費に備えるための予備費を上乗せします。 予備費の金額は人によって考え方が異なりますが、数百万円から1,000万円程度を目安にする人もいます。 最終的に、「不足分の合計+予備費」が、自分にとっての老後資金の目標額の一つの目安になります。

もちろん、これはあくまで単純化した試算方法です。 実際には、退職金やパート収入、資産運用の成果なども影響します。 ただ、この計算式を使うことで、自分の老後資金がどの程度不足しそうか、方向性をつかみやすくなるでしょう。

無料ツール・エクセル・FP相談を使った具体的なシミュレーション

老後資金のシミュレーションは、紙とペンだけでも可能ですが、無料ツールやエクセルを使うと、より細かい条件を反映しやすくなります。 自分で試算するのが不安な場合は、ファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。

まず、金融機関や保険会社、一般社団法人などが提供している無料の老後資金シミュレーターがあります。 年齢や年収、貯蓄額、退職予定年齢、年金受給開始年齢などを入力すると、老後にどのくらい資金が不足しそうかを試算してくれるサービスです。 複数のサイトを試して、結果の傾向を比較してみるのも一案です。

エクセルを使う場合は、行に年齢、列に収入と支出、貯蓄残高を並べていきます。 毎年の収入から支出を引き、残った分を貯蓄として積み上げていく形です。 退職後は、年金収入と支出を反映させ、貯蓄残高がどの年齢でどのくらいになるかを確認します。 金利や運用利回りを仮定して、資産運用の影響を加えることも可能です。

自分での試算に不安があるときは、ファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。 家計の状況や希望する老後生活を伝えたうえで、現実的な資金計画を一緒に作成してもらうことができます。 相談には費用がかかる場合もありますが、老後の不安を整理するきっかけになるかもしれません。

いずれの方法でも大切なのは、一度きりで終わらせないことです。 収入や家族構成、資産状況は時間とともに変化します。 数年ごとにシミュレーションを見直し、必要に応じて貯蓄ペースや運用方針を調整していくと、老後資金の準備がより現実的なものになっていきます。

NISAやiDeCoを反映した運用シナリオの組み方

老後資金の準備では、預貯金だけでなく、NISAやiDeCoなどの制度を活用した資産運用も選択肢になります。 これらをどうシミュレーションに組み込むかを考えておくと、老後の資金計画がより立体的になります。

NISAは、一定の投資枠の中で得られた運用益が非課税になる制度です。 投資信託や株式などに分散して投資することで、長期的な資産形成を目指す人が多いです。 一方、iDeCoは個人型の確定拠出年金で、掛金が所得控除の対象となり、運用益も非課税となる仕組みがあります。 原則として60歳までは引き出せないため、老後資金づくりに特化した制度といえます。

シミュレーションでは、例えば「毎月3万円を年利3パーセントで20年間運用した場合」のように、利回りを仮定して計算します。 エクセルの関数やオンラインの積立シミュレーターを使うと、将来の資産額の目安を求めやすくなります。 ただし、運用利回りはあくまで想定であり、元本割れのリスクもある点には注意が必要です。

運用シナリオを組むときは、いくつかのパターンを用意しておくと安心です。 例えば、楽観的な利回り、中くらいの利回り、ほぼ増えないケースなどを比べてみます。 そのうえで、どの程度のリスクを許容できるか、自分の性格や収入の安定度を踏まえて考えます。

NISAやiDeCoを使うかどうかは、それぞれの制度のメリットとデメリットを理解したうえで判断することが大切です。 税制や制度の内容は変更される可能性があるため、金融庁や運営機関の最新情報を確認しながら、無理のない範囲で活用を検討していきましょう。

一人暮らし賃貸/持ち家なし/早期退職など

独身者の老後資金は、住まいの形や働き方によって必要額が大きく変わります。 ここでは、一人暮らしで賃貸に住む場合や、持ち家がない場合、早期退職を考える場合のポイントを整理します。

一人暮らしの賃貸生活では、老後も家賃を払い続ける必要があります。 例えば、家賃7万円を30年間払い続けると、単純計算で約2,500万円になります。 更新料や管理費を含めると、さらに負担は増えます。 そのため、賃貸暮らしの人は、持ち家の人よりも老後資金を多めに見積もる傾向があります。

持ち家なしの場合でも、老後にコンパクトな住居へ引っ越す、家賃の安い地域へ移るなどの選択肢があります。 こうした住居費の見直しは、老後の生活費を抑える有力な方法の一つです。 ただし、引っ越し費用や敷金、礼金などの一時的な支出も発生するため、資金計画に含めておく必要があります。

早期退職を考える場合は、退職から年金受給開始までの「無収入または収入減少の期間」をどう乗り切るかが重要です。 この期間の生活費を貯蓄で賄うのか、パートや自営業で収入を得るのかによって、必要な老後資金は大きく変わります。 早期退職を希望する場合は、通常よりも長い老後期間を想定し、余裕を持った資金計画を立てることが求められます。

自分のライフスタイルや希望する働き方を踏まえ、一人暮らし賃貸や持ち家の有無、退職時期などを組み合わせてシミュレーションしてみると、必要な資金のイメージがより明確になります。

不足したときの対策

シミュレーションの結果、老後資金が不足しそうだと感じた場合でも、取れる対策はいくつかあります。 ここでは、貯蓄を中心にする方法と、資産運用や保険を組み合わせる方法について整理します。

それぞれにメリットとデメリットがあり、人によって向き不向きも異なります。 自分の性格や家計の状況に合わせて、無理のない範囲で組み合わせていくことが大切です。

貯蓄中心プランのメリット・デメリットと貯蓄額の目標設定

老後資金の準備方法として、預貯金を中心にコツコツ貯めていくプランは、多くの人にとって分かりやすい選択肢です。 まずは貯蓄中心の考え方の特徴と、目標設定の仕方を整理しておきましょう。

貯蓄中心プランのメリットは、元本割れのリスクが小さい点です。 銀行の預金や定期預金は、元本が保証されているため、相場の変動を気にせずに済みます。 特に、投資に不安がある人や、老後が近づいてきた人にとっては、心理的な安心感が大きい方法と言えるでしょう。

一方で、デメリットとしては、金利が低い環境ではお金がほとんど増えないことが挙げられます。 インフレが進んだ場合、実質的な資産価値が目減りする可能性もあります。 そのため、長い期間をかけて大きな老後資金を貯めるには、毎月の貯蓄額をかなり多くしなければならないこともあります。

貯蓄額の目標を決めるときは、先ほどのシミュレーションで出した老後資金の必要額から、すでにある貯蓄や退職金の見込みを差し引きます。 残った不足額を、老後までの残り年数で割ると、毎月どのくらい貯める必要があるかの目安が出ます。 例えば、不足額が1,800万円で、老後まで20年ある場合、年間90万円、月あたり7万5千円の貯蓄が必要になります。

この金額が現実的かどうかを、家計の収支と照らし合わせて確認します。 難しい場合は、生活費の見直しや、老後の生活水準の調整、副収入の検討など、他の方法も組み合わせることが重要です。 貯蓄中心プランは堅実ですが、無理のないペースで続けられる目標設定が何より大切になります。

資産運用の基礎とリスク管理

老後資金の不足を補う手段として、資産運用を検討する人も増えています。 ただし、運用には元本割れのリスクがあるため、仕組みや注意点を理解したうえで取り組むことが欠かせません。

資産運用の基本は、預金以外の金融商品にお金を振り分け、長期的な増加を目指すことです。 代表的な商品として、投資信託、株式、債券などがあります。 投資信託は、多くの銘柄に分散投資できる仕組みで、初心者でも少額から始めやすい点が特徴です。 株式は値動きが大きい一方で、長期的な成長を期待する人もいます。

リスク管理で重要なのは、一つの商品にお金を集中させないことです。 複数の資産に分散することで、どれか一つが値下がりしても、全体への影響を抑えやすくなります。 また、短期的な値動きに振り回されず、長期の視点でコツコツ積み立てる方法を選ぶ人も多いです。

老後が近い人は、リスクの取り方を慎重に考える必要があります。 運用期間が短いほど、相場の変動を取り戻しにくくなるためです。 そのため、年齢が上がるにつれて、リスクの高い資産の割合を減らし、安定性の高い商品を増やすなど、運用方針を段階的に変える考え方もあります。

資産運用は、必ずしも全員に向いているとは限りません。 自分の性格や家計の余裕度を踏まえ、無理のない範囲で取り入れるかどうかを判断することが大切です。 不安がある場合は、金融機関やFPなどに相談し、一般的な情報をもとに自分で最終判断する姿勢を持つとよいでしょう。

NISA・つみたてNISA・iDeCoの活用法と初心者向けの始め方

資産運用のなかでも、NISAやつみたてNISA、iDeCoは、老後資金づくりに役立つ制度として注目されています。 税金面での優遇があるため、長期の資産形成を考える独身者にとっても検討する価値があります。

NISAは、一定の投資枠の中で得られた運用益が非課税になる制度です。 一般NISAでは、株式や投資信託などに幅広く投資できます。 つみたてNISAは、長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定されており、少額からコツコツ積み立てたい人向けの制度です。 どちらも、運用益にかかる税金が非課税になる点が大きなメリットです。

iDeCoは、個人型の確定拠出年金で、掛金が全額所得控除の対象になります。 さらに、運用益も非課税となり、受け取るときも一定の税制優遇があります。 ただし、原則60歳まで引き出せないため、生活費の予備資金としては使いづらく、老後資金専用の口座と考える必要があります。

初心者がこれらの制度を始める際は、次のような流れを意識するとスムーズです。

  • 生活費の半年分程度の預貯金を確保しておく
  • 毎月無理なく積み立てられる金額を決める
  • 手数料の低い投資信託を中心に、複数の商品に分散する

制度の詳細や商品選びに迷う場合は、金融庁のウェブサイトや各金融機関の資料を参考にしながら、基本的な仕組みを理解していくことが大切です。 また、税制や制度の内容は変更されることがあるため、最新の情報を確認したうえで、自分に合った活用方法を検討しましょう。

保険で補うべき保障と保険料の考え方

老後資金の不足を補う手段として、保険をどう活用するかも一つのテーマです。 独身者の場合、家族への死亡保障よりも、自分自身の医療や介護への備えを重視するケースが多くみられます。

まず、医療保険は、入院や手術の費用をカバーする商品です。 公的医療保険や高額療養費制度があるため、全てを民間保険で賄う必要はありません。 ただし、個室料や差額ベッド代、先進医療など、公的制度の対象外となる費用に備えたい人は、医療保険を検討することがあります。

介護保険や介護付きの生命保険は、要介護状態になったときに一時金や年金形式で給付を受けられる商品です。 公的介護保険の自己負担分や、施設入居費用の一部をカバーする目的で加入する人もいます。 ただし、保険料の負担が長期にわたるため、家計とのバランスをよく考える必要があります。

独身者の場合、死亡保障は少額でも足りることが多い一方で、葬儀費用や身の回りの整理費用をカバーする目的で、一定の保障額を確保する人もいます。 すでに十分な貯蓄がある人は、死亡保障を抑え、医療や介護に重点を置く考え方もあります。

保険料の考え方としては、「保険は万一の大きなリスクに備えるもの」と捉えると整理しやすくなります。 日常的に支払える範囲の保険料にとどめ、貯蓄や資産運用とのバランスを取ることが大切です。 保険商品は種類が多く複雑なため、複数の会社の資料を比較し、必要な保障と不要な保障を見極めながら検討していきましょう。

介護・入居・無職・健康リスクへの備え

独身の老後では、介護や病気、収入減少といったリスクにどう備えるかが大きなテーマになります。 家族の援助をあてにしにくい場合、自分でできる対策を早めに考えておくことが重要です。

ここでは、介護や施設入居、医療費、無職期間の生活設計、「おひとりさま」としての備え方などを整理します。 老後資金だけでなく、日常の暮らし方や制度の活用方法も含めて考えていきましょう。

介護が必要になったときの費用・施設入居費と公的支援の仕組み

介護が必要になったときの費用は、老後資金のなかでも不安を感じやすい項目です。 独身者は、介護をしてくれる家族が近くにいないケースも多く、施設利用や外部サービスの活用を前提に考える必要があります。

介護保険制度では、要介護認定を受けると、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどのサービスを1〜3割の自己負担で利用できます。 ただし、利用できるサービスの上限は要介護度によって決まり、超えた分は全額自己負担になります。 また、食費や居住費など、制度の対象外となる費用もあります。

施設入居費については、特別養護老人ホームなどの公的色の強い施設は、比較的費用を抑えられる一方で、入居待機者が多い地域もあります。 民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、入居一時金や月額費用が高くなる傾向があります。 入居費用は、数十万円から数百万円、月額の利用料も数万円から十数万円以上と、施設によって大きく異なります。

介護期間が長くなると、合計の費用も増えていきます。 生命保険文化センターなどの調査では、介護費用の自己負担額は、全体で数百万円規模となる事例もあるとされています。 もちろん、全ての人が同じ金額になるわけではありませんが、一定の介護費用を老後資金のなかで見込んでおくと安心です。

公的支援の仕組みや、地域の介護サービスの内容は、自治体によっても異なります。 自分の住んでいる市区町村の窓口や、地域包括支援センターなどで情報を集めておくと、いざというときの備えにつながります。

医療費・長期療養リスクと高齢者の生活維持策

高齢になると、慢性的な病気や入院、長期療養のリスクが高まります。 独身者は、日常生活のサポートをしてくれる家族が少ない場合も多く、医療費だけでなく、生活維持の方法も考えておく必要があります。

医療費については、公的医療保険や高額療養費制度により、一定の自己負担で済む仕組みがあります。 しかし、通院が増えれば、そのたびに交通費や薬代がかかります。 また、長期入院になると、差額ベッド代や食事代など、保険適用外の費用も積み重なります。

長期療養が必要になった場合、在宅で過ごすか、施設や病院で過ごすかによって、かかる費用と生活スタイルが変わります。 在宅療養では、訪問看護や訪問介護を利用しながら、自宅での生活を続ける人もいます。 一方で、身の回りのことを自分で行うのが難しくなった場合は、サービス付き高齢者向け住宅や介護施設への入居を検討することもあります。

こうした状況に備えるには、医療費そのものに加えて、生活を維持するための費用も見込んでおくことが大切です。 例えば、家事代行サービスや買い物代行サービスを利用する、見守りサービスを契約するなど、民間のサービスを組み合わせる方法もあります。

健康維持のために、日頃から食事や運動、睡眠に気を配ることも、長い目で見れば老後資金の負担を軽くする一助になります。 とはいえ、病気やけがを完全に防ぐことはできません。 医療費と生活維持費の両面で、ある程度の余裕を持たせた資金計画を考えておくと、将来の不安を和らげることにつながります。

無職・収入減少時の生活再設計と公的給付の活用

早期退職や失業、病気などで収入が減少した場合、老後資金の計画にも影響が出ます。 独身者は、自分の収入に頼る割合が高いため、無職期間や収入減少時の対策を考えておくことが重要です。

まず、現役時代に意識しておきたいのが、生活費の固定費を抑えることです。 家賃や通信費、保険料、サブスクリプションなどの固定費を見直しておくと、収入が減ったときにも家計を維持しやすくなります。 緊急時にすぐ削れない支出ほど、平常時から適正な水準を意識しておくと安心です。

無職や収入減少時には、雇用保険の失業給付や、傷病手当金、障害年金など、公的な給付制度が利用できる場合があります。 これらの制度は、一定の条件を満たす必要がありますが、生活の下支えとして重要な役割を果たします。 自分がどの制度の対象になりうるかを、あらかじめ知っておくと、いざというときにスムーズに手続きしやすくなります。

老後を見据えると、無職期間が長引くと貯蓄の取り崩しが進み、老後資金の不足につながることがあります。 そのため、可能であれば、短時間の仕事や在宅ワークなどで、少しでも収入を得る方法を探す人もいます。 収入がゼロかどうかで、貯蓄の減り方は大きく変わります。

生活再設計の際には、「今の生活水準をどこまで下げられるか」「老後資金への影響をどの程度まで許容するか」を整理することが大切です。 必要に応じて、ファイナンシャルプランナーや公的な相談窓口を活用しながら、自分に合った現実的なプランを検討していきましょう。

家族援助が期待できない『おひとりさま』の備え方

家族の援助をあまり期待できない「おひとりさま」の場合、老後資金だけでなく、日常生活や緊急時のサポート体制も含めて備えることが大切になります。 お金と同じくらい、頼れる人やサービスの確保も重要なテーマです。

まず、日常生活の面では、買い物や掃除、通院の付き添いなどを手伝ってくれるサービスを知っておくと安心です。 自治体や社会福祉協議会が提供する支援のほか、民間の家事代行や見守りサービスなども選択肢になります。 費用はかかりますが、老後資金の一部をこうしたサービス利用に充てることで、安心感を得られる人もいます。

緊急時の備えとしては、かかりつけ医を持つ、地域の包括支援センターとつながっておく、近所の人や友人との関係を大切にするなど、日頃からの人間関係づくりが役立つこともあります。 また、任意後見制度やエンディングノートなどを活用し、自分が判断できなくなったときに備えておく人もいます。

おひとりさまの老後資金計画では、介護や葬儀、住み替えなどの一時的な出費を多めに見積もる考え方もあります。 家族がいない分、外部サービスに頼る場面が増える可能性があるためです。 そのぶん、現役時代から計画的に貯蓄や資産形成を進めておくと、精神的な余裕につながりやすくなります。

すべてを一人で抱え込む必要はありません。 公的な相談窓口や専門家、信頼できる友人など、頼れる相手を少しずつ増やしていくことで、老後の不安を和らげることができるでしょう。

年齢別・状況別の資金計画

老後資金の準備は、始める年齢やライフステージによって、取れる方法や重視すべきポイントが変わります。 ここでは、20〜30代、40〜50代、50代以降のそれぞれで意識したい資金計画の考え方を整理します。

未婚・無職・単身世帯ならではのリスクや、実際に起こりやすいケースにもふれながら、自分に近い状況をイメージしてみてください。 「今からでも間に合う一歩」を見つけることが目的です。

20〜30代からの資産形成

20〜30代は、老後がまだ遠くに感じられる時期かもしれません。 しかし、この時期から少しずつ資産形成を始めることで、将来の老後資金の負担を大きく減らせる可能性があります。

この年代では、まず生活防衛資金として、生活費の3〜6カ月分程度の預貯金を確保することが大切です。 急な病気や失業があっても、すぐに生活が行き詰まらないようにしておくと、心の余裕にもつながります。 そのうえで、老後資金を意識した長期の資産形成を検討していきます。

時間の余裕がある20〜30代は、つみたてNISAやiDeCoなどの制度を活用した積立投資がしやすい時期です。 毎月1万円や2万円といった少額からでも、長期間続けることで、複利の効果を期待できます。 もちろん、運用にはリスクがあるため、手数料の低い投資信託に分散投資するなど、基本的なポイントを押さえておくことが重要です。

また、20〜30代は、自己投資の時期でもあります。 資格取得やスキルアップ、転職による収入増加など、将来の収入を高める行動も、広い意味では老後資金づくりの一部です。 収入が増えれば、老後のために回せるお金も増えやすくなります。

この年代で完璧な老後計画を立てる必要はありません。 大切なのは、「老後資金が必要になる」という事実を意識し、小さな積立と自己投資を組み合わせて、土台づくりを始めることです。

40〜50代での見直し

40〜50代は、老後が少しずつ現実味を帯びてくる時期です。 住宅ローンや教育費などの負担が重い人も多い一方で、収入のピークを迎える人も少なくありません。 この時期に老後資金計画を見直すことは、とても重要な意味を持ちます。

まず、自分の年金見込み額を確認しましょう。 ねんきん定期便やねんきんネットを使えば、将来の受給額の目安がわかります。 そのうえで、老後の生活費をざっくりと試算し、年金だけでどれくらい賄えるか、不足分がどの程度になりそうかを把握します。

次に、現在の貯蓄額や退職金の見込みを整理し、老後資金の目標額とのギャップを確認します。 ギャップが大きい場合は、毎月の貯蓄額を増やす、生活費を見直す、退職時期を再検討するなど、いくつかの対策を組み合わせる必要が出てくるかもしれません。

40〜50代でも、つみたてNISAやiDeCoを活用した資産運用は選択肢になります。 ただし、老後までの期間が20〜10年程度と短くなってくるため、20〜30代よりもリスクの取り方には注意が必要です。 リスクの高い商品に偏らず、安定性とのバランスを意識することが大切です。

また、この時期は健康状態の変化も出やすくなります。 医療保険や介護保険の内容を見直し、自分にとって必要な保障と保険料のバランスを再検討することも、老後資金計画の一部と言えるでしょう。

50代以降の巻き返しプラン

50代以降で老後資金が十分でないと感じた場合でも、できる対策はまだあります。 残りの期間は限られますが、そのぶん具体的な数字をもとに、現実的な巻き返しプランを考えやすい時期でもあります。

まず行いたいのは、家計の徹底的な見直しです。 固定費の削減や不要な保険の整理、ローンの繰り上げ返済の検討など、支出を減らすことで、老後に必要な生活費を抑えられる可能性があります。 生活費が下がれば、老後資金の必要額も減るため、貯蓄のハードルも下がります。

次に、退職後も働く期間を延ばす選択肢があります。 定年後再雇用やパート勤務、フリーランスとしての仕事など、収入を得る期間を少しでも延ばすことで、年金受給開始前後の資金不足をやわらげることができます。 収入がゼロかどうかで、貯蓄の減り方は大きく変わります。

資産運用については、50代以降で大きなリスクを取るのは慎重に考える必要があります。 一方で、すでにある貯蓄の一部を、比較的リスクの抑えられた投資信託などで運用することで、預金だけよりも資産の目減りを抑えられる可能性もあります。 この場合も、元本割れのリスクを理解したうえで、無理のない範囲にとどめることが大切です。

また、住居の見直しも有力な選択肢です。 広すぎる持ち家を売却し、コンパクトな住まいに移ることで、住居費と生活費を下げる人もいます。 賃貸への住み替えや、家賃の安い地域への移住なども、老後資金の負担を軽くする一つの方法です。

50代以降の巻き返しは、時間との勝負の側面があります。 一人で悩み続けるよりも、早めに情報を集め、必要であれば専門家の助言も参考にしながら、行動に移していくことが重要です。

未婚・無職・単身世帯の具体的リスクと実例

未婚で無職、単身世帯という状況は、老後資金の面でいくつかの特有のリスクを抱えやすくなります。 具体的なリスクを知っておくことで、早めの対策につなげることができます。

まず、収入源が限られるリスクがあります。 未婚で単身の場合、家計を支えるのは自分一人です。 無職の期間が長引くと、貯蓄の取り崩しが進み、老後資金が不足しやすくなります。 特に、自営業やフリーランスで国民年金のみの場合、将来の年金受給額が少なくなる可能性があるため、貯蓄や資産運用での補完がより重要になります。

次に、住居のリスクがあります。 賃貸暮らしの単身者は、年齢が上がると入居審査が厳しくなるケースもあります。 収入や保証人の有無によっては、希望する物件に入居しづらくなる可能性も考えられます。 そのため、早めに老後の住まい方を検討し、必要であれば長期的に住める物件を選ぶなどの対策が有効です。

また、身近に頼れる家族が少ない場合、病気や介護が必要になったときのサポートが不足しがちです。 実例として、急な入院時に手続きを手伝ってくれる人がいなかったり、退院後の生活支援が得られず、在宅生活が難しくなったりするケースもあります。 こうした事態に備えて、地域の支援サービスや民間の見守りサービスを事前に調べておくことが役立ちます。

未婚・無職・単身世帯のリスクは、早めに気づけば対策の幅があります。 収入の確保、住居の安定、社会とのつながりづくりを意識しながら、自分に合った老後資金計画を少しずつ形にしていくことが大切です。

今すぐできるアクションプランとチェックリスト

老後資金の話はどうしても長期的になりがちですが、今日からできる小さな一歩もたくさんあります。 ここでは、目標設定や貯蓄の目安、節約や支出管理のポイント、相談先の優先順位などを整理します。

すべてを一度に完璧にこなす必要はありません。 自分のペースで取り組めるアクションを選び、少しずつ前に進めていくことが、結果的に大きな安心につながっていきます。

目標設定と期間別の貯蓄目安

老後資金づくりを具体的に進めるには、「いくらを、いつまでに」という目標を決めることが大切です。 ぼんやりとした不安を、行動につながる数字に落とし込むイメージです。

まず、老後資金の目標額を決めます。 先ほどのシミュレーションを参考に、「老後の不足額+予備費」を計算し、自分なりの目安を設定します。 例えば、「老後までに2,000万円を貯めたい」といった具体的な数字です。

次に、その目標額を老後までの残り年数で割り、年間と毎月の貯蓄目安を出します。 例えば、2,000万円を20年で貯めるなら、年間100万円、月約8万3千円の貯蓄が必要になります。 この金額が現実的かどうかを、現在の家計と照らし合わせて確認します。

もし目標額が高すぎると感じた場合は、いくつかの調整方法があります。 生活費の見直しで老後の必要額を減らす、副収入を検討する、退職時期を延ばすなどです。 また、目標を「最低限必要な金額」と「理想的な金額」に分け、段階的に目指す考え方もあります。

期間別に見ると、20〜30代は少額でも早く始めること、40〜50代は貯蓄額の増加と生活費の見直し、50代以降は現実的な巻き返しと支出削減がポイントになります。 自分の年齢と状況に合わせて、無理のない貯蓄ペースを決めていきましょう。

節約・支出管理・生活のゆとり確保

老後資金を増やすには、収入を増やすか、支出を減らすか、資産を増やすかのいずれかが必要です。 このうち、今すぐ取り組みやすいのが、節約と支出管理です。 ただし、必要以上に生活のゆとりを削ると、長続きしません。

節約の基本は、固定費の見直しです。 家賃、通信費、保険料、サブスクリプションなど、毎月自動的に出ていくお金をチェックします。 格安スマホへの変更や不要なサービスの解約、保険の見直しなどは、効果が出やすい項目です。 一度見直せば、その後も継続的に家計の負担を減らせます。

変動費については、食費や娯楽費、交際費などを家計簿アプリなどで「見える化」するのが有効です。 何にいくら使っているかを把握するだけでも、自然と無駄な出費に気づきやすくなります。 すべてを我慢するのではなく、「ここは大事にしたい」「ここは減らしてもよい」とメリハリをつけることが大切です。

生活のゆとりを保つためには、「老後のために今を犠牲にしすぎない」意識も必要です。 趣味や友人との時間は、心の健康を保つうえで重要な役割を果たします。 節約と楽しみのバランスを取りながら、続けられる支出管理のスタイルを見つけていきましょう。

支出管理が習慣化してくると、老後資金の貯蓄ペースも自然と安定してきます。 完璧を目指すよりも、「少しずつ良くする」感覚で取り組むことが、長く続けるコツです。

FP、NISA、iDeCo、保険の順序

老後資金の準備では、何から手を付けるべきか迷う人も多いです。 FPへの相談やNISA、iDeCo、保険の見直しなど、選択肢が多いほど悩みやすくなります。 ここでは、一つの考え方として、取り組む順序の目安を整理します。

まず土台となるのが、家計の把握と目標設定です。 そのうえで、自分では整理しきれない場合は、ファイナンシャルプランナーへの相談を検討します。 FPは、収入や支出、資産、保険の状況を整理し、一般的な考え方に沿ってプランを一緒に作る役割を担います。

次のステップとして、NISAやつみたてNISAでの資産形成を検討します。 生活防衛資金を確保したうえで、余裕資金の一部を長期投資に回すイメージです。 投資信託を中心に、分散投資を意識しながら、少額から始める人が多いです。

そのうえで、老後資金専用の積立としてiDeCoを検討します。 掛金が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。 ただし、60歳まで引き出せない点を踏まえ、生活費に影響しない範囲で掛金を設定することが大切です。

最後に、保険の見直しを行います。 すでに加入している生命保険や医療保険、個人年金保険などの内容を確認し、自分にとって必要な保障と保険料のバランスを再検討します。 過剰な保障で保険料が家計を圧迫している場合は、老後資金づくりの妨げになることもあります。

この順序は一例であり、全ての人に当てはまるわけではありません。 自分の状況や優先順位に合わせて、必要な部分から取り組んでいくことが大切です。

『安心』を確保するための優先順位と次の一歩

老後資金の準備で何より大切なのは、「安心感」を少しずつ積み上げていくことです。 そのためには、優先順位をつけて、一歩ずつ行動に移していく必要があります。

優先順位の一つの考え方としては、まず生活防衛資金の確保があります。 病気や失業などの予期せぬ出来事に備えて、生活費の数カ月分の預貯金を用意しておくことで、日々の不安を減らせます。 次に、老後資金の目標額と毎月の貯蓄額を決め、家計のなかでそのお金を優先的に確保する仕組みを作ります。

そのうえで、NISAやiDeCoなどの制度を使った資産形成や、保険の見直しを進めていきます。 一度に全てを完璧にしようとすると、情報量の多さに圧倒されてしまいがちです。 「今日はねんきん定期便を確認する」「今月は家計簿アプリを入れてみる」など、小さなステップに分けて取り組むと続けやすくなります。

次の一歩としておすすめなのは、自分の現在の資産と負債、毎月の収支を紙かアプリに書き出してみることです。 現状を見える化することで、老後資金に回せるお金の余地や、改善できそうなポイントが自然と見えてきます。 そこから、貯蓄額の目標や、資産運用の検討、保険の整理など、次の行動につなげていけるでしょう。

独身の老後資金に関する疑問に簡潔回答

ここでは、独身者の老後資金に関して、よくある疑問に簡潔に答えていきます。 年金だけで足りるのか、賃貸の場合にどれくらい必要額が増えるのか、投資や介護費用の備え方などを整理します。

あくまで一般的な目安であり、実際の必要額は人によって異なります。 自分の状況に当てはめながら、より詳しいシミュレーションや情報収集のきっかけにしてみてください。

年金だけで足りる?足りない場合の優先対策は?

独身の老後生活が、公的年金だけで足りるかどうかは、年金受給額と生活費の水準によって変わります。 一般的には、年金だけで十分なゆとりを持って暮らせる人は多くないとされており、何らかの形で不足分を補う必要があるケースが目立ちます。

まず、自分の年金見込み額を確認することが出発点です。 ねんきん定期便やねんきんネットで、将来の受給額の目安を把握します。 次に、老後の生活費をざっくりと試算し、年金だけで足りるかどうかを確認します。 不足が見込まれる場合は、その金額をもとに老後資金の目標額を決めていきます。

年金だけで足りないと分かった場合の優先対策としては、まず現役時代の支出を見直し、貯蓄に回せるお金を増やすことが挙げられます。 同時に、つみたてNISAなどを活用して、長期の資産形成を始めることも一つの選択肢です。 退職後も可能な範囲で働き続けることで、年金以外の収入を確保する方法もあります。

どの対策が自分に合うかは、年齢や収入、健康状態などによって異なります。 複数の対策を少しずつ組み合わせることで、年金だけに頼らない老後資金の土台を作りやすくなるでしょう。

持ち家なし・賃貸だと必要額はどのくらい増える?

持ち家がなく、老後も賃貸で暮らす場合、家賃が一生続くため、老後資金の必要額は持ち家の人より多くなりやすい傾向があります。 どのくらい増えるかは、家賃の水準と住み続ける期間によって大きく変わります。

例えば、家賃7万円の賃貸に住み続けると仮定します。 65歳から95歳までの30年間で考えると、7万円×12カ月×30年で、単純計算で約2,520万円になります。 実際には、更新料や管理費、引っ越し費用などもかかる可能性があるため、もう少し多めに見積もる人もいます。

一方、持ち家で住宅ローンを完済している場合、老後の住居費は固定資産税や管理費、修繕費などが中心になります。 賃貸に比べると、毎月の負担が抑えられるケースが多いです。 そのため、持ち家がある人と比べると、賃貸暮らしの人は老後資金の目標額を数千万円単位で多めに見込む必要が出てくることもあります。

とはいえ、賃貸には住み替えの自由があるというメリットもあります。 老後に家賃の安い地域や小さな部屋に引っ越すことで、住居費を抑える選択肢もあります。 自分がどのような暮らし方を望むかを踏まえ、家賃と住居費の将来像をシミュレーションに反映させることが大切です。

投資は初心者でも始めるべき?NISA・iDeCoの具体的メリットは?

投資を始めるべきかどうかは、年齢や資産状況、性格によって変わります。 初心者でも、仕組みを理解し、リスクを許容できる範囲であれば、老後資金づくりの一つの手段として検討する価値はあります。

NISAやつみたてNISAの大きなメリットは、運用益が非課税になることです。 通常、投資で得た利益には約20パーセントの税金がかかりますが、NISA口座内での利益にはこの税金がかかりません。 長期的に積み立てるほど、この非課税の効果が大きくなりやすい仕組みです。

iDeCoのメリットは、掛金が全額所得控除の対象となる点です。 毎年の所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。 さらに、運用益も非課税で、受け取るときにも一定の税制優遇があります。 老後資金専用の制度として、計画的な資産形成をしたい人に向いています。

ただし、投資には元本割れのリスクがあり、必ずしも資産が増えるとは限りません。 また、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、生活費としてすぐ使うお金には向きません。 初心者が始める場合は、まず生活防衛資金を預貯金で確保し、そのうえで余裕資金の一部を投資に回す考え方が現実的です。

投資をするかどうかは、メリットとリスクを理解したうえで、自分で納得して決めることが大切です。 不安がある場合は、小さな金額から試し、慣れてきたら少しずつ増やす方法もあります。

介護や葬儀の費用は準備しておくべき?最低限の用意は?

介護や葬儀の費用は、老後の一時的な大きな出費として意識しておきたい項目です。 全てを正確に予測することは難しいものの、ある程度の目安を持って準備しておくと安心です。

介護費用については、介護保険制度により自己負担は1〜3割に抑えられますが、期間が長引くと合計額は大きくなります。 生命保険文化センターなどの調査では、自己負担額が数百万円規模となる事例もあるとされています。 全員が同じになるわけではありませんが、老後資金のなかで、数百万円程度を介護の予備費として見込む考え方があります。

葬儀費用は、形式や規模によって大きく異なります。 一般的な葬儀では、数十万円から百数十万円程度が一つの目安とされることが多いです。 家族が少ない独身者の場合、簡素な葬儀や直葬を選ぶ人もおり、その場合は費用を抑えられる可能性があります。

最低限の用意としては、葬儀費用と、介護や医療の予備費を合わせて、数百万円から1,000万円程度を目安に考える人もいます。 ただし、これはあくまで一般的なイメージであり、住んでいる地域や希望する葬儀の形、健康状態などによって必要額は変わります。

介護や葬儀の費用をどこまで準備するかは、他の老後資金とのバランスも関わるため、一人ひとり判断が異なります。 公的制度や家族状況、自分の価値観を踏まえつつ、無理のない範囲で備えていくことが大切です。

まとめ

独身者の老後資金は、年金受給額や住まい、ライフスタイルによって、必要な金額が大きく変わります。 一般的な目安として3,000万円や5,000万円といった数字が語られますが、大切なのは自分の生活費と年金額をもとに試算することです。

老後資金の基本は、「毎月の不足額×期間+予備費」という考え方でした。 生活費の内訳や医療・介護費用、一時的な大きな出費を整理し、公的年金でどこまで賄えるかを確認することで、自分なりの目標額が見えてきます。 不足が見込まれる場合は、貯蓄、資産運用、保険、働き方の見直しなど、いくつかの対策を組み合わせることが現実的です。

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この記事を書いた人

田中 壮のアバター 田中 壮 株式会社TFPグループ代表取締役

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

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