確定拠出年金にかかる税金とは?一時金と年金の違いについても解説

年金

監修者

監修者
田中壮

TFPグループ 代表取締役 田中 壮

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

確定拠出年金の税金はお得と聞くものの、実際いくら非課税になり、受取のときにどれくらい税負担がかかるのか、分かりにくいと感じる方は多いと思います。 特にiDeCoや企業型DCに加入していると、老後に一時金と年金のどちらで受け取るかで、手取りが変わる可能性があります。

この記事では、確定拠出年金にかかる税金の全体像から、一時金と年金の違い、退職金や他の年金との組み合わせ方まで整理して解説します。 具体的な計算の流れやシミュレーション例も交えますので、自分に合った受取方法を考えるときの参考にしてみてください。

目次

確定拠出年金(DC)にかかる税金の全体像

確定拠出年金は、掛金を拠出して運用し、将来まとめてまたは分割で受取る制度です。 税金面では、掛金・運用中・受取時の三つの場面でルールが分かれており、それぞれで優遇があります。

掛金は原則として全額が所得控除の対象となり、運用益も課税されません。 一方で受取時には、一時金なら退職所得、年金なら雑所得として扱われ、税金がかかる可能性があります。 まずはこの流れを押さえたうえで、細かい仕組みを見ていきましょう。

確定拠出年金の受け取り方別に見る税金の違い

ここでは、確定拠出年金の受取時に焦点を当てます。 同じ金額でも、一時金か年金かで課税の計算方法が変わり、手取りが違ってくるためです。

一括で受取る場合は退職所得として、分割で受取る場合は公的年金などと同じ雑所得として扱われます。 さらに、退職金や確定給付企業年金との合計額や、他の収入とのバランスも重要です。 それぞれの特徴を具体的に確認していきます。

一時金(一括受取)の課税

一時金として確定拠出年金を受取るときは、退職所得として扱われます。 退職所得は、ほかの所得と比べて優遇されており、退職所得控除という大きな控除額が用意されています。 この控除額は、確定拠出年金の加入年数や、同じ会社での勤続年数をもとに計算される仕組みです。

退職所得控除は、勤務期間が長いほど増えていきます。 例えば勤続20年までは1年あたり一定額、それ以降は1年あたりの控除額が増える形で、長く働いた人ほど有利になるように設計されています。 確定拠出年金を企業型で積み立てている人は、退職金と合算して一つの退職所得として計算されることが多い点に注意が必要です。

税金の計算では、まず受取金額から退職所得控除額を差し引き、その残りを2分の1にします。 この半分の金額が、所得税や住民税の課税対象となる退職所得です。 控除額が大きい場合、課税対象がゼロになり、税金がかからないケースもあります。 一方で、退職金が高額な人や、複数の退職金を同じ年度に受給する人は、控除を使い切ってしまい、税負担が増える可能性もあります。

一時金の受取は、原則として会社や運営管理機関が源泉徴収を行います。 ただし、他の退職所得との関係や、税額に疑問がある場合には、後から確定申告で精算することも検討されます。 退職所得控除の計算方法や、勤続年数のカウントは国税庁の資料に詳しく載っていますので、大きな金額を受取る前には一度確認しておくと安心でしょう。

年金(分割受取)の課税

年金として分割で受取る場合、確定拠出年金は雑所得として扱われます。 公的年金などと同じグループに入り、公的年金等控除という控除を使って課税所得を計算する流れです。 iDeCoや企業型DCの年金受取は、毎年の収入として少しずつ加算されていきます。

具体的には、その年に受け取った年金の合計額から、公的年金等控除額を差し引きます。 その残りが雑所得となり、給与など他の所得と合算されて、所得税や住民税が計算される仕組みです。 公的年金等控除の金額は、年齢や公的年金等の収入金額によって変わります。 65歳以上かどうか、年間の受取額がいくらかで控除額が段階的に変化する点が特徴です。

年金受取のメリットは、一度に大きな税金がかかりにくいことです。 毎年の課税所得に分散されるため、退職金など他の大きな収入がない人にとっては、税率が低い範囲に収まりやすくなります。 ただし、給与収入が続いている時期に年金受取を始めると、所得が合計されて税率が上がる場合もあります。 公的年金と企業年金、iDeCoの年金受取を同時に始めるタイミングも、税金を考えるうえで大切なポイントです。

なお、年金受取では、支払者が源泉徴収を行うケースと、自分で確定申告が必要なケースがあります。 年間の年金収入や他の所得の有無によって手続きが変わるため、受給を始める前に、運営管理機関から届く案内をしっかり確認しておきたいところです。 分割受取の期間や金額を選べる制度も多いため、老後の生活費の計画とあわせて検討するとよいでしょう。

会社員・自営業者・高所得者のケース別比較シミュレーション

同じ確定拠出年金の残高でも、立場や他の収入によって税負担は変わります。 ここでは、会社員、自営業者、高所得者という三つのケースをイメージしながら、税金のかかり方の違いを整理してみます。 実際の金額は人それぞれですが、考え方の方向性をつかむことが目的です。

まず会社員の場合、退職時に会社の退職金と企業型確定拠出年金を一時金で同時に受取るケースが多くなります。 このとき、退職所得控除は合算された金額に対して一度だけ適用されるのが一般的です。 退職金の金額が大きい人ほど、確定拠出年金の分に十分な控除が回らず、課税対象が残る可能性があります。 一方で、退職金が少ない人や、勤続年数が長い人は、控除の範囲内に収まりやすくなります。

自営業者の場合は、iDeCoの利用が中心になります。 退職金がないことも多く、老後資金の多くをiDeCoで準備するケースも考えられます。 このとき、一時金として受取れば退職所得控除をフルに活用しやすく、年金として受取れば、公的年金等控除と組み合わせて税負担を抑えられる可能性があります。 どちらが有利かは、公的年金の見込み額や、老後に予定している働き方によって変わります。

高所得者の場合は、現役時代の所得税率が高いため、掛金の所得控除による節税効果が比較的大きくなります。 ただし、受取時に給与収入が残っていると、年金受取をしたときの雑所得が高い税率で課税されるおそれがあります。 退職後すぐに年金受取を始めるか、数年待つかによっても税額が変わるため、受給開始のタイミングが重要な検討材料になります。 いずれのケースでも、シミュレーションを行い、自分の年齢や年収、退職金の見込みを踏まえて比較することが大切です。

一括・分割・移換の選択肢と税負担・受給の注意

確定拠出年金の受取方法は、一括、一部を一時金、残りを年金、他制度への移換など、複数の選択肢があります。 どの方法を選ぶかで、税金だけでなく、老後の資金管理のしやすさも変わってきます。 まずは、自分が加入している制度で選べる受取形式を、運営管理機関の資料で確認するとよいでしょう。

一括受取は、まとまったお金がすぐに手に入る反面、退職所得として一度に税金を計算することになります。 退職金や他の退職所得と同じ年度に重なる場合、退職所得控除を使い切ってしまい、想定より税負担が増えることも考えられます。 分割受取は、生活費として計画的に使いやすく、税金も毎年の所得として分散される点が特徴です。 ただし、将来の税制改正や、他の年金との合計額によって、予想と異なる税額になる可能性もあります。

移換という選択肢もあります。 退職時に企業型からiDeCoに移換し、受取開始年齢を遅らせることで、退職金との重なりを避ける方法です。 この場合、運用を続けながら、将来の受取方法をあらためて選び直すことができます。 ただ、移換には手数料がかかることが多く、運営管理機関のラインナップやコストも含めて検討が必要です。

受取方法を選ぶときは、税金だけでなく、老後の生活費のペース、医療費の増加の可能性、家族構成の変化なども考慮したいところです。 一部を一時金で受取り、残りを年金として受給するような組み合わせも可能なため、自分の生活イメージに沿った形を選ぶことが大切です。 迷う場合は、簡単なシミュレーションを行い、税負担と手取りのバランスを比較してみると判断しやすくなるでしょう。

税金がかからないケースと税負担を軽減する具体的な方法

この章では、確定拠出年金の税制優遇を最大限に生かすための考え方を整理します。 掛金の段階での所得控除、運用益の非課税、受取時の控除の使い方を理解すると、税負担を抑えやすくなります。

また、退職金や確定給付企業年金との組み合わせ方によっては、受取時の税金がほとんどかからないケースもあります。 一方で、社会保険料や住民税への影響も見落とせません。 それぞれのポイントを具体例を交えながら見ていきましょう。

掛金が全額所得控除になる仕組み

確定拠出年金の大きなメリットの一つが、掛金が全額所得控除になる点です。 ここでいう所得控除とは、年収から差し引いてよい金額のことで、この控除が大きいほど、所得税や住民税の負担が軽くなります。 iDeCoの掛金は、原則として毎月の拠出額の全額が所得控除の対象です。

例えば、年間24万円をiDeCoに拠出している人を考えてみます。 その人の課税所得に対する税率が20パーセント程度であれば、単純計算で年間約4万8千円ほど、所得税と住民税が軽くなるイメージです。 実際には、社会保険料控除など他の控除も関係しますが、掛金を増やすほど、一定の範囲で税負担が減る方向に働きます。 企業型確定拠出年金の場合も、会社が拠出する掛金は、従業員の給与としては課税されない扱いとなるのが一般的です。

掛金の上限は、職業や他の企業年金の有無によって変わります。 自営業者は上限額が高めに設定されている一方で、企業年金が充実している会社員は、iDeCoの拠出限度額が低く抑えられていることがあります。 自分がどの枠に当てはまるかは、国民年金基金連合会や勤務先の案内資料で確認できます。 上限いっぱいまで拠出するかどうかは、家計の余裕や他の貯蓄とのバランスを見ながら判断するとよいでしょう。

なお、掛金の所得控除を受けるためには、手続きも重要です。 iDeCoの場合は、国民年金基金連合会などから送られてくる「小規模企業共済等掛金控除証明書」を使って、年末調整や確定申告で申請します。 会社員であれば、年末調整で提出することで、給与から天引きされる税金が調整されます。 自営業者などは、自分で確定申告書に控除額を記入する必要があります。

受取時に実質的に税金がかからないケース

確定拠出年金は、受取時にも控除を上手に使うことで、実質的に税金がかからないケースがあります。 一時金であれば退職所得控除、年金であれば公的年金等控除が、その中心となる仕組みです。 ここでは、どのような場合に非課税に近づきやすいかをイメージしてみます。

まず、一時金として受取る場合です。 退職所得控除は、勤続年数が長いほど大きくなります。 例えば、同じ会社で長く働き、退職金がそれほど高額でない人が、企業型確定拠出年金の一時金を同じ年度に受取る場合、合計額が退職所得控除の範囲内に収まることがあります。 このとき、退職所得としての課税対象額はゼロとなり、所得税や住民税がかからない計算になります。

年金として受取る場合も、公的年金等控除が一定額までは所得を相殺してくれます。 公的年金の受給額が比較的少ない人が、確定拠出年金の年金受取を組み合わせた場合、両者の合計が控除額の範囲内であれば、雑所得が発生しない可能性があります。 特に、老後に他の収入があまりない人は、年間の課税所得自体が低くなり、結果として税負担がほとんど生じないケースも考えられます。

ただし、非課税になるかどうかは、退職金の合計額、加入年数、公的年金の見込み額、他の所得など、多くの条件によって変わります。 また、税制は将来変更される可能性もあるため、現時点でのルールを前提にしつつ、最新の情報を確認する必要があります。 具体的な金額が気になる場合は、国税庁のホームページや、運営管理機関のシミュレーションツールを利用して、自分の条件で試算してみるとよいでしょう。

なお、受取時に源泉徴収されていても、年間を通じてみると税金が戻ってくることもあります。 確定申告を行うことで、払い過ぎた税金が還付されるケースもあるため、受給開始後は一度、税額の内訳を確認してみると安心です。

住民税・所得税・社会保険料への影響と軽減テクニック

確定拠出年金の税制優遇は、所得税だけでなく、住民税や社会保険料にも影響します。 掛金が所得控除になることで、課税所得が減り、それに連動して住民税が下がる仕組みです。 また、一定の場合には、標準報酬月額など社会保険料の計算に間接的な影響が出ることもあります。

まず、所得税と住民税についてです。 iDeCoの掛金を拠出すると、その全額が所得控除となり、課税所得が減ります。 所得税は累進課税のため、税率が高い人ほど、控除による軽減効果が大きくなりやすい傾向があります。 住民税は一律の税率が多いものの、課税所得が減ることで、翌年度の住民税額が下がる可能性があります。

社会保険料との関係は少し複雑です。 給与から天引きされる健康保険料や厚生年金保険料は、原則として標準報酬月額をもとに計算されます。 確定拠出年金の掛金は、この標準報酬月額には含まれないため、直接的に保険料が下がるわけではありません。 ただ、将来受取る年金額が増えることで、老後の生活費の一部をカバーできれば、長期的な家計の安定につながる可能性はあります。

税負担を軽減するテクニックとしては、受取のタイミングを調整する方法があります。 例えば、退職直後の収入が少ない時期に年金受取を始めれば、他の所得が少ないため、税率が低い範囲に収まりやすくなります。 逆に、働きながら年金を受給すると、給与と合算されて税率が上がるおそれがあります。 また、一部を一時金で受取って退職所得控除を活用し、残りを年金で受取ることで、公的年金等控除も生かすなど、控除を組み合わせる工夫も考えられます。

こうした調整は、人によって有利不利が変わります。 年収や家族構成、住宅ローン控除など他の控除との兼ね合いもあるため、可能であれば、簡単なシミュレーションを行い、数パターンを比較してみるとよいでしょう。 不安が大きい場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談する選択肢もあります。

退職金・確定給付企業年金と併用したときの税制優遇・注意点

確定拠出年金は、退職金や確定給付企業年金と併用されることが多く、税金の計算も一体として行われる場合があります。 特に、一時金として同じ年度に受取ると、退職所得控除がどのように配分されるかが重要なポイントです。 制度ごとの性質を理解しておくと、受取方法の選択に役立ちます。

退職金と確定給付企業年金の一時金、企業型確定拠出年金の一時金は、原則として退職所得としてまとめて扱われます。 このとき、退職所得控除は、勤続年数などをもとに一度だけ計算され、その枠の中で複数の給付金が合計されるイメージです。 退職金が大きい場合、退職所得控除の大部分を退職金だけで使い切ってしまい、確定拠出年金の分に十分な控除が残らないこともあります。

一方で、確定拠出年金を年金として受取る場合は、退職所得ではなく雑所得として扱われます。 このため、退職金の一時金と受取のタイミングをずらし、税負担を分散することが可能です。 ただし、公的年金や他の企業年金の年金受給が始まる時期と重なると、今度は公的年金等控除の範囲を超えてしまう可能性もあります。 どの時期にどの収入が発生するかを、ざっくりと年表に書き出してみると、全体像をつかみやすくなります。

また、役員退職金など、特別な取り扱いがある退職金も存在します。 こうしたケースでは、退職所得控除の計算や、勤続年数の扱いが一般的な従業員と異なる場合があります。 企業の就業規則や、退職金規程を確認しつつ、必要に応じて税務の専門家に相談することも検討されます。

退職金や企業年金と確定拠出年金を併用する場合は、税制優遇が重なり合う一方で、仕組みが複雑になりがちです。 安易に「一括のほうが得」「年金のほうが有利」と決めつけず、自分の退職金見込み額や加入年数、公的年金の見込みなどを踏まえて検討することが大切です。 国税庁や企業年金連合会などの情報も参考にしながら、最新のルールを確認しておきましょう。

確定拠出年金受取の税額シミュレーション

ここからは、確定拠出年金の受取時に、税額がどのように計算されるかを具体的に見ていきます。 一時金と年金では計算式が異なり、同じ受取金額でも手取りが変わるため、流れを知っておくと安心です。

実際の税額は、他の所得や控除の有無で変わるため、ここで紹介するのはあくまで一般的な計算方法です。 自分の場合の金額が気になるときは、国税庁のシミュレーションや運営管理機関の試算ツールを活用し、目安を確認してみてください。

一時金の計算式(退職所得の算出)と実際の税額例

確定拠出年金を一時金として受取る場合、税金は退職所得として計算されます。 退職所得の計算は、ほかの所得と比べて少し特殊で、退職所得控除と、課税対象額を2分の1にする仕組みがあります。 この優遇のおかげで、同じ金額でも給与として受け取るより税負担が軽くなる傾向があります。

計算の流れは、おおまかに次のようになります。 まず、退職所得控除額を求めます。 この控除額は、勤続年数や加入年数に応じて決まるため、国税庁が公表している計算式をもとに算出します。 次に、一時金の受取金額の合計から、この退職所得控除額を差し引きます。 その残りを2分の1にした金額が、課税対象となる退職所得です。

例えば、退職所得控除額が1500万円、一時金の合計が1600万円だったとします。 まず1600万円から1500万円を引き、差額は100万円です。 これを2分の1にすると50万円となり、この50万円が所得税や住民税の計算のもとになる金額です。 ここに、その人の課税所得に応じた税率をかけて、所得税額を求めます。 住民税は、おおむね一律の税率をかけて算出されるのが一般的です。

実際には、復興特別所得税が加算されたり、他の退職所得と合算されたりすることもあります。 また、源泉徴収でいったん税金が差し引かれたあと、確定申告で精算し、払い過ぎた分が戻る場合もあります。 一時金の金額が大きいときや、退職金が複数の会社にまたがるときは、年度ごとの受取タイミングによっても税額が変わるため、慎重な検討が必要です。

退職所得の計算は、国税庁のホームページで詳しい計算式や具体例が公開されています。 自分で試算するのが難しいと感じる場合は、簡易的なシミュレーションツールを使ったうえで、必要に応じて税務署や専門家に確認する方法もあります。 大きな金額を受取る前に、税額のイメージを持っておくと、手取りの計画が立てやすくなるでしょう。

年金受取の年間課税額の算出手順

確定拠出年金を年金として受取る場合、税金は雑所得として計算されます。 このとき、公的年金などと合わせて「公的年金等」として扱われ、公的年金等控除を差し引いたうえで課税所得が決まります。 ここでは、年間の課税額を求める一般的な手順を確認しておきましょう。

まず、その年に受け取る公的年金と、確定拠出年金の年金受取額を合計します。 この合計額が、公的年金等の収入金額です。 次に、年齢や収入金額に応じて決まる公的年金等控除額を調べます。 控除額の表は、国税庁の資料や税務署のパンフレットなどで確認できます。 合計額からこの控除額を差し引いた残りが、公的年金等にかかる雑所得となります。

この雑所得は、給与所得など他の所得と合算され、総所得金額として扱われます。 総所得金額から、基礎控除や社会保険料控除など各種の所得控除を差し引いたものが、課税所得です。 課税所得に対して、所得税の速算表にある税率と控除額を用いて、所得税額を計算します。 住民税は、前年の所得をもとに翌年度の税額が決まるため、年金受取を始めた翌年以降の住民税に影響が出る形です。

例えば、65歳以上で、公的年金と確定拠出年金の年金受取の合計が年間150万円だったとします。 この場合、一定の公的年金等控除が適用され、雑所得は150万円よりかなり小さい金額になります。 他に大きな所得がなければ、所得税や住民税の負担は比較的軽く済む可能性があります。 一方で、給与収入や事業所得がある人は、合算されることで税率が上の段階に上がることもあります。

年金受取の税額を把握するには、運営管理機関が提供する「受取シミュレーション」や、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用する方法があります。 実際に数字を入れてみると、受取額を増減させたときの税負担の変化が見えやすくなります。 年金受取は長期間にわたるため、初年度だけでなく、将来の収入見込みも含めて検討することが望ましいでしょう。

会社員・役員・低所得者それぞれの試算

確定拠出年金の税金は、立場や収入状況によって受ける影響が変わります。 ここでは、会社員、役員、低所得者という三つのイメージケースを通じて、どのような違いが出やすいかを整理します。 実際の金額は人それぞれですが、考え方の参考としてご覧ください。

まず会社員の場合です。 定年退職と同時に退職金と企業型確定拠出年金の一時金を受取るケースを想定します。 この場合、退職所得控除は勤続年数に応じて決まり、退職金と確定拠出年金の一時金を合算した金額から控除されます。 退職金が高額でない人や、勤続年数が長い人は、控除の範囲内に収まり、確定拠出年金分の税負担がほとんど生じないこともあります。 一方で、管理職などで退職金が大きい人は、控除を使い切ってしまい、確定拠出年金分に税金がかかる場合があります。

役員の場合は、役員退職金の取り扱いが関わってきます。 役員退職金は、妥当な範囲であれば退職所得として優遇されますが、その適正額や勤続年数のカウント方法は、一般の従業員と異なることがあります。 確定拠出年金の一時金も含めて、退職所得控除の枠内に収まるかどうかがポイントです。 役員としての在任期間が長く、退職金が高額な場合には、確定拠出年金の受取を年金に分けることで、税負担の分散を図る選択肢も考えられます。

低所得者や、老後に他の収入が少ない人の場合は、年金受取が有利に働くことがあります。 公的年金と確定拠出年金の年金受取の合計が、公的年金等控除の範囲内に収まると、雑所得が発生しない、あるいは非常に小さくなる可能性があります。 この場合、所得税や住民税の負担は軽くなりやすく、手取りが大きく確保できることが期待されます。 ただし、医療費控除や住宅ローン控除など、他の控除との組み合わせによっても結果は変わるため、慎重な確認が必要です。

いずれのケースでも、確定拠出年金の税金は、単独ではなく、退職金や公的年金、給与収入などとの合計で考えることが重要です。 簡単な試算であれば、自分でシミュレーションツールを使うことも可能ですが、大きな金額や複雑な条件が絡む場合には、専門家への相談も選択肢に入れておくと安心でしょう。

確定拠出年金の受取時の手続きと確定申告

税金の仕組みを理解したら、次に気になるのが実際の手続きです。 確定拠出年金の受取時には、運営管理機関や会社への申請だけでなく、税務上の書類のやり取りも発生します。

一時金と年金では、必要な書類や確定申告の要否が異なります。 また、他制度への移換や複数の受取方法を組み合わせると、税務処理も複雑になりがちです。 ここでは、受取時の基本的な流れと、よくある注意点を押さえておきましょう。

一時金受取時に必要な手続き

確定拠出年金を一時金として受取る場合、まずは運営管理機関から送られてくる案内に従い、受取の申請を行います。 申請書には、受取方法や振込先口座、本人確認書類などを記入し、期限までに提出する必要があります。 企業型の場合は、退職の手続きとあわせて会社を通じて書類をやり取りすることも多いでしょう。

税務上のポイントとしては、「退職所得の受給に関する申告書」の有無が重要です。 この申告書を提出すると、退職所得控除を考慮したうえで源泉徴収が行われます。 提出しない場合は、控除が考慮されずに高めの税率で源泉徴収されることがあり、後から確定申告で精算しなければならない可能性があります。 申告書の書き方や提出先は、運営管理機関や勤務先からの案内をよく確認しておきたいところです。

一時金の受取時には、源泉徴収票が発行されます。 これは、どのくらいの退職所得があり、どれだけの税金が源泉徴収されたかを示す重要な書類です。 退職金や他の退職所得がある場合は、それぞれの源泉徴収票を保管しておき、必要に応じて確定申告で合算します。 特に、複数の会社から退職金を受取った場合や、同じ年度に複数の退職所得がある場合は、注意が必要です。

確定申告が必要になるかどうかは、退職所得以外の所得の状況や、源泉徴収された税額によって変わります。 一時金だけで完結している場合は、申告不要となるケースもありますが、医療費控除など他の理由で申告する場合は、一緒に退職所得も申告しておくと、払い過ぎた税金が戻る可能性があります。 不明点があれば、税務署に問い合わせたり、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で入力しながら確認したりするとよいでしょう。

年金受取時の確定申告と控除の申請方法

確定拠出年金を年金として受取る場合、毎年の所得として扱われるため、確定申告や年末調整との関係がポイントになります。 公的年金と同様に、支払者から「公的年金等の源泉徴収票」が発行されることが多く、この書類をもとに税額を確認します。 受取額や他の所得によって、確定申告が必要かどうかが変わってきます。

まず、年金受取の所得は、公的年金等控除を差し引いたうえで雑所得として計算されます。 この控除は自動的に適用されるわけではなく、確定申告書に公的年金等の収入金額と源泉徴収税額を記入することで反映されます。 会社員で、給与の年末調整だけで完結している人も、年金受取が一定額を超えると、自分で確定申告を行う必要が出てくる場合があります。

控除の申請方法としては、確定申告書の「雑所得」欄に、公的年金等の収入金額を記載し、源泉徴収票の内容を転記します。 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、公的年金等控除額が自動計算されるため、計算ミスを防ぎやすくなります。 また、医療費控除や生命保険料控除、社会保険料控除など、他の所得控除もあわせて入力することで、正しい税額を求めることができます。

年金受取の場合、一定の条件を満たすと、確定申告をしなくてもよいケースもあります。 例えば、公的年金等の収入が一定額以下で、他の所得が少ない場合などです。 ただし、源泉徴収で税金が引かれている場合、確定申告をすることで一部が還付される可能性もあります。 面倒に感じるかもしれませんが、一度シミュレーションしてみると、申告した方が有利かどうかが見えてきます。

なお、年金受取を開始した初年度は、税金の扱いが変わるタイミングでもあります。 住民税や国民健康保険料など、翌年度以降の負担に影響が出ることもあるため、自治体から届く通知書もあわせて確認しておくと安心です。 疑問点があれば、税務署や市区町村の窓口に早めに相談しておくと、慌てずに対応できるでしょう。

移換・分割受取・他制度併用時の税務処理

確定拠出年金は、転職や退職の際に他制度へ移換したり、一部を一時金、一部を年金として受取ったりすることができます。 こうした柔軟な受取方法は便利ですが、税務処理が複雑になりやすい面もあります。 ここでは、代表的なパターンと税金の扱いを整理してみます。

まず、企業型確定拠出年金からiDeCoへの移換です。 退職後に資産を移換する場合、その時点では受取とはみなされないため、原則として所得税や住民税はかかりません。 移換先のiDeCoで運用を続け、将来あらためて受取方法を選ぶことになります。 ただし、移換の手続きを行わずに放置すると、自動的に「自動移換」となり、運用が止まり、手数料だけがかかる状態になることがあります。 税金の面だけでなく、資産管理の観点からも、早めの移換手続きが重要です。

次に、一部を一時金、一部を年金として受取る場合です。 この場合、一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得として扱われます。 退職所得控除と公的年金等控除の両方を活用できる可能性があり、税負担の分散という意味ではメリットがあります。 一方で、受取の年度や金額配分によって、退職金や公的年金との兼ね合いが変わるため、シミュレーションを行いながら配分を検討することが望ましいでしょう。

他制度との併用としては、確定給付企業年金や企業年金連合会からの年金、公的年金などがあります。 これらは、それぞれに税務上の扱いが決まっており、合計して公的年金等として扱われるものと、退職所得として扱われるものがあります。 同じ年度に複数の給付を受ける場合は、源泉徴収票を整理し、確定申告で正しく合算することが重要です。 特に、異なる制度からの給付が重なると、控除の範囲を超えてしまうこともあるため、注意が必要です。

税務処理に不安がある場合は、運営管理機関や企業年金の窓口に、税務上の取り扱いを確認しておくとよいでしょう。 そのうえで、必要に応じて税務署や専門家に相談し、自分のケースに合った申告方法を選ぶことが大切です。 制度ごとのルールを押さえながら、無理のない範囲で税負担を抑える工夫をしていきたいところです。

税務上のよくあるミスと注意点

確定拠出年金の税金は優遇が多い一方で、仕組みが複雑なため、思わぬミスが起こりがちです。 ここでは、よく見られる注意点を押さえておきます。 事前に知っておくことで、余計な税負担や手続きのやり直しを避けやすくなります。

まず多いのが、退職所得の申告漏れや、源泉徴収票の紛失です。 退職金や確定拠出年金の一時金を複数の会社から受取った場合、それぞれの源泉徴収票を合算する必要があります。 一部を申告し忘れると、後から税務署から問い合わせが来ることもあります。 退職時に受け取る書類は、封筒ごと保管しておき、確定申告の時期にまとめて確認するとよいでしょう。

次に、退職所得控除や公的年金等控除の勘違いです。 これらの控除は、自動的に最大限有利になるように適用されるわけではなく、申告内容によって結果が変わることがあります。 例えば、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったために、高い税率で源泉徴収されてしまうケースがあります。 後から確定申告で精算できる場合もありますが、手間が増えてしまうため、最初の手続きを丁寧に行うことが大切です。

また、受取時期の選択も注意が必要です。 退職金と確定拠出年金の一時金を同じ年度に受取ると、退職所得控除の枠を一度に使ってしまうことがあります。 一方で、年度をまたいで受取ると、控除の扱いが変わる場合もあり、単純に分ければ有利とは限りません。 税制や会社の規程によって結果が変わるため、安易に判断せず、事前にルールを確認しておくことが重要です。

最後に、税制改正の影響にも目を向けておきたいところです。 確定拠出年金やiDeCoの税制は、これまでにも改正が繰り返されてきました。 将来も、控除額や対象年齢、税率などが変わる可能性があります。 長期の資産形成を行ううえでは、定期的に国税庁や厚生労働省、金融庁などの情報をチェックし、最新のルールを確認しておくと安心でしょう。

まとめ

確定拠出年金の税金は、掛金・運用中・受取時の三つの段階で、それぞれ異なる優遇があります。 掛金は原則として全額が所得控除となり、運用益も非課税です。 受取時は、一時金なら退職所得、年金なら雑所得として扱われ、退職所得控除や公的年金等控除を活用することで、税負担を抑えやすくなります。

一時金と年金のどちらで受取るか、退職金や確定給付企業年金とどう組み合わせるかによって、手取り額は大きく変わる可能性があります。 自分の年齢や年収、退職金の見込み、公的年金の受給予定などを踏まえ、いくつかのパターンでシミュレーションしてみることが大切です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

田中 壮のアバター 田中 壮 株式会社TFPグループ代表取締役

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次