確定拠出年金は解約できる?退職する時の状況ごとに取るべき対応や注意点を徹底解説

【確定拠出年金は退職するとどうなる?】解約できるの?ケースごとに取るべき対応や注意点を徹底解説!

監修者

監修者
田中壮

TFPグループ 代表取締役 田中 壮

2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

退職や転職を考えるとき「確定拠出年金は解約してお金を受け取れないのか」と悩む方は多いです。老後資金の制度と分かっていても、今すぐ現金が必要な場面もありますし、不安になるのは自然なことだと思います。

この記事では、企業型確定拠出年金やiDeCoの中途解約ができるのかを、退職時のケースごとに整理します。脱退一時金の条件、資産移換の方法、税金や手数料のポイントも分かりやすく解説しますので、自分に合う選択肢を落ち着いて検討する材料にしてみてください。

目次

確定拠出年金は解約できる?基本ルールと退職時の原則

ここでは、確定拠出年金の「解約」の考え方と、退職時の基本ルールを整理します。企業型と個人型iDeCoでは扱いが少し違うため、まずは共通する原則を押さえることが大切です。

中途解約がほとんど認められない理由や、例外としての脱退一時金の位置づけも触れます。退職して加入資格を失った後に、どのような選択肢があるのかを理解する入り口として読んでみてください。

中途解約・引き出しは原則不可?脱退一時金とは何か

確定拠出年金は、老後の年金を自分でつくるための制度です。そのため、原則として60歳になるまで中途解約や自由な引き出しはできない仕組みになっています。企業型DCもiDeCoも同じ考え方で、途中でお金を動かせない代わりに、税制面の優遇を受けられる制度といえます。

ただし、例外的に「脱退一時金」という形で資産を受け取れる場合があります。これは、一定の要件を満たして、確定拠出年金の加入資格を完全に失った人向けの、一度きりの受け取り方法です。中途解約というより、制度から抜けるときの清算に近いイメージのほうが分かりやすいかもしれません。

脱退一時金を受け取るには、加入期間や資産額、他の企業年金への加入状況など、細かい条件があります。要件に当てはまらない場合は、原則として資産をそのまま運用しながら、将来の年金や一時金として受け取る形になります。自分が対象になるかどうかは、国民年金基金連合会や運営管理機関の案内で確認すると安心です。

また、脱退一時金を選ぶと、老後の年金として受け取れるはずだった資産が減ることになります。税金の扱いも通常の退職金や年金とは異なるため、目先の資金だけで判断せず、将来の家計への影響も含めて慎重に検討したほうがよいでしょう。

加入資格喪失後の選択肢

退職して企業型確定拠出年金の加入資格を失うと、多くの場合、そのままでは制度にとどまり続けることができません。このときに取れる選択肢を知っておくと、慌てずに手続きしやすくなります。基本的には、転職先への資産移換か、個人型のiDeCoへの移換、あるいは一時的な「運用指図者」としての継続が考えられます。

転職先に企業型DCがある場合は、そこへ資産を移すのが一般的です。転職先に制度がないときは、iDeCoへ移すか、掛金の拠出をやめて運用だけ続ける方法もあります。運用指図者になると新たな掛金は払えませんが、既に積み立てた資産をそのまま運用し続けることは可能です。

一方で、全く移換手続きを行わずに放置すると、一定期間経過後に自動的に国民年金基金連合会へ移され、手数料だけが差し引かれていくケースもあります。資産が目減りするおそれがあるため、通知書が届いたら早めに金融機関やコールセンターに相談したほうがよいでしょう。

また、障害状態になった場合や死亡した場合など、特別な事情があるときは、通常とは異なる給付金の仕組みが用意されています。加入資格を失ったタイミングと、自分や家族の状況によって最適な選択は変わりますので、制度の案内を確認しながら落ち着いて比較することが大切です。

確定拠出年金の退職時のケース別対応

ここからは、退職時によくあるケースごとに、確定拠出年金の扱いを具体的に見ていきます。転職先に企業型DCがある場合とない場合、専業主婦や自営業になる場合などで、取るべき対応が変わってきます。

資産をどこへ移すかによって、手数料や運用の自由度、老後の受け取り方も変わるため、自分の働き方の見通しに合わせて検討することが重要です。どうしても引き出したいときの現実的な選択肢も、注意点とあわせて確認していきます。

転職先が企業型DCを導入している場合の資産移換手続き

転職先の企業が企業型確定拠出年金を導入している場合、基本的には前の会社の資産を、新しい会社の企業型DCに移換する流れになります。これを「資産移換」といい、老後資金を一つにまとめて管理しやすくする意味もあります。転職のたびにバラバラの口座を持つより、通算しやすくなる点はメリットといえます。

退職後には、前の勤務先や運営管理機関から「資格喪失」の案内や、移換の手続き書類が届くことが多いです。その後、転職先の人事や総務から、新しい企業型DCの加入書類とあわせて、前の資産をどうするか確認されるケースもあります。ここで移換を選ぶと、国民年金基金連合会などを通じて、自動的に資産が新しい制度へ移される仕組みです。

資産移換の際には、移換元と移換先の両方で手数料がかかる場合があります。手数料の金額は運営管理機関によって異なりますし、どの金融機関の商品を選べるかも会社ごとに違います。転職先の企業型DCで選べる商品ラインナップや、運用のしやすさも、事前に確認しておくと安心です。

また、移換の手続きを一定期間行わないと、資産が自動的に国民年金基金連合会に移され、運用が止まった状態で管理手数料だけが差し引かれることがあります。通知書が来たまま放置すると、資産額が想定より減るおそれもあるため、退職から転職までの期間が空く場合でも、期限を意識して早めに対応したほうが無難でしょう。

個人型(iDeCo)へ移す・自分で継続する方法と手数料の比較

転職先に企業型確定拠出年金がない場合や、しばらくフリーランスや専業主婦になる場合は、個人型のiDeCoへ資産を移すか、運用指図者として自分で運用だけ続ける方法が候補になります。どちらを選ぶかで、掛金を拠出できるかどうかや、手数料の負担が変わってきます。

iDeCoへ移換すると、自分で金融機関を選び、掛金を毎月拠出しながら資産形成を続けられます。掛金が全額所得控除の対象になるなど、税制面のメリットも期待できます。ただし、口座管理手数料や運営管理機関の手数料がかかるため、金融機関ごとのコスト差を確認することが大切です。

一方、運用指図者になると、新たな掛金の納付はできませんが、既に積み立てた資産をそのまま運用し続けられます。掛金がない分、節税効果は得られませんが、手数料は比較的抑えられる場合もあります。老後までの期間や、今後の収入の見通しによって、どちらが負担になりにくいかは人それぞれです。

また、iDeCoに移す場合は、国民年金の被保険者区分によって加入資格や拠出限度額が異なります。第1号被保険者として自営業になるのか、第2号として会社員に戻る予定があるのかなどで、選べる枠が変わるため注意が必要です。自分の立場や家計の状況を踏まえ、手数料とメリットを比較しながら、無理のない形で継続する方法を検討するとよいでしょう。

退職後にどうしても引き出したい場合の現実的な方法と注意点

退職後に生活費や借金の返済などでお金が必要になり、「どうしても確定拠出年金を解約して引き出したい」と感じることもあるかもしれません。ただ、前述のとおり、確定拠出年金は原則として中途解約ができない制度です。現実的な選択肢は限られるため、他の手段も含めて冷静に比較することが重要になります。

一つは、条件を満たす場合に限り、脱退一時金として資産を受け取る方法です。ただし、脱退一時金は加入期間が短い場合や、資産額が一定額未満の場合など、細かな要件があります。受け取れる金額も、期待していたほど多くないケースが少なくありません。税金の扱いも特別で、必ずしも有利になるとは限らない点にも注意が必要です。

もう一つは、確定拠出年金以外の資金で対応する方法を探すことです。たとえば、預貯金の取り崩しや、一時的な借入、保険の解約返戻金の活用など、手元の資金を見直すことで乗り切れる場合もあります。確定拠出年金は老後の生活を支える柱になりやすいため、ここを崩さずに済む選択肢がないか、一度整理してみる価値はあります。

また、どうしても資金繰りが厳しいときは、自治体の相談窓口や、公的な貸付制度などに相談する方法も考えられます。確定拠出年金を無理に資金化しようとして、制度に反する行為やトラブルにつながると、結果的に損をしてしまうおそれもあります。短期的な資金と、老後の年金のバランスを意識しながら、信頼できる機関に相談して判断したほうが安心でしょう。

第1号被保険者や被保険者資格喪失後の扱い

会社を辞めて自営業になる人や、しばらくフリーランスとして働く人は、国民年金の第1号被保険者になることが多いです。この場合、企業型確定拠出年金の加入資格は失いますが、個人型のiDeCoに加入できる可能性があります。老後の資産形成を続けたい場合は、iDeCoへの移換を検討する流れが一般的です。

一方で、失業して一定期間は収入が不安定になる場合、掛金の負担が重く感じられることもあるでしょう。その場合は、いったん運用指図者として掛金の拠出を止める選択肢もあります。資産はそのまま運用されるため、老後に向けた準備を完全にゼロにせずに済む点は、一つの安心材料になるかもしれません。

被保険者資格を喪失した後の扱いは、国民年金の種別や、転職までの期間によっても変わります。たとえば、配偶者の扶養に入って第3号被保険者になる場合は、iDeCoの掛金上限が変わるなど、条件が細かく分かれています。自分がどの区分に当てはまるかを確認しながら、無理のない掛金設定を考えることが大切です。

また、国民年金保険料の納付が難しいときは、免除や猶予の制度が用意されています。確定拠出年金だけでなく、公的年金全体を見渡して、老後の年金額にどのような影響が出るかを意識しておくと安心です。状況によって最適な対応は変わるため、迷ったときは年金事務所や金融機関に相談しながら判断するとよいでしょう。

企業型確定拠出年金をどうしても解約したいときの手順と裏ワザ

ここでは、企業型確定拠出年金を「どうしても解約したい」と考える人向けに、現実的に取り得る手順と、よく話題になる裏ワザについて整理します。まずは、企業型DCが原則解約できない仕組みを押さえたうえで、例外的な脱退一時金の要件を確認します。

さらに、合法的に資金化する手段や、安易な裏ワザに飛びついたときのリスクについても触れます。トラブル事例を知ることで、危ない選択肢を避けやすくなり、結果的に資産を守ることにつながるはずです。

企業型確定拠出年金は原則解約不可

企業型確定拠出年金は、企業が従業員の老後資金づくりを支援するために導入する制度です。掛金は会社が拠出し、従業員が運用商品を選ぶ仕組みになっています。この性質上、加入者が任意に「解約したいから全額返してほしい」と申し出ても、原則として応じられない制度設計になっています。

これは、税制優遇を受けながら老後の年金を積み立てるという、国の年金制度の一部として位置づけられているためです。もし自由に中途解約ができてしまうと、本来の目的である老後の生活保障が弱くなってしまいます。そのため、企業型DCもiDeCoも、60歳まで原則引き出し不可という厳しめのルールが設けられています。

退職や転職をきっかけに「企業型確定拠出年金をやめたい」と感じる場合も、実際には解約ではなく、資産移換や運用の継続という形で対応することになります。企業型から個人型iDeCoへ移す、転職先の企業型DCへ移すなど、制度の枠内で動かすイメージです。資産そのものを現金として自由に使えるようにするのは、原則として老後の給付を待つ必要があります。

また、インターネット上には「企業型DCを実質的に解約できる」といった情報が見られることもありますが、多くは制度の趣旨から外れた危うい内容を含んでいます。法令違反やトラブルにつながる可能性もあるため、公式な案内や金融機関の説明を基準に考えたほうが安全でしょう。

脱退一時金の要件・デメリットと受け取りが認められるケース

企業型確定拠出年金でも、一定の条件を満たす場合には「脱退一時金」として資産を受け取れることがあります。これは、加入者資格を完全に失い、他の企業年金制度にも加入していないなどの状況で認められる、例外的な一時金です。中途解約に近いイメージを持たれがちですが、あくまで制度からの脱退に伴う清算と考えたほうがよいでしょう。

主な要件としては、企業型DCの加入者資格を喪失してから一定期間以内であること、通算加入者等期間が短いこと、資産額が一定額未満であることなどが挙げられます。さらに、他の企業年金や企業型DCに加入していないこと、日本国内に住所がない場合など、細かな条件が加わるケースもあります。詳細は制度ごとに異なるため、運営管理機関や国民年金基金連合会の案内で確認する必要があります。

脱退一時金を受け取るデメリットとしては、まず老後の年金資産がその分減ってしまうことが挙げられます。将来の年金受給額が下がる可能性があるため、目先の資金だけを見て判断すると、後から後悔することも考えられます。税金面でも、退職所得として扱われる場合と異なる計算になることがあり、必ずしも有利とは限りません。

受け取りが認められるケースは限られており、要件を満たしていないのに無理に申請しても認められない可能性が高いです。また、申請できる期間が決まっていることも多く、期限を過ぎると脱退一時金の選択肢自体がなくなる場合もあります。どうしても必要なときは、早めに条件を確認し、メリットとデメリットを比較したうえで判断したほうがよいでしょう。

合法的な資金化の手段

確定拠出年金を今すぐ解約することは難しいですが、制度のルールに沿った形で、できるだけ柔軟にお金を確保する方法はいくつか考えられます。大切なのは、老後資産を極力守りながら、現在の家計のピンチを乗り切るバランスを探ることです。

まず検討したいのは、確定拠出年金以外の資産や保険の見直しです。たとえば、貯蓄性のある保険を解約して解約返戻金を受け取る、預貯金の一部を生活費に回すなど、他の資産で対応できないかを確認します。これにより、確定拠出年金の資産を温存できる可能性があります。

次に、公的な貸付制度や、低金利のローンを活用する方法もあります。自治体が行う生活福祉資金貸付や、銀行のカードローンなどを比較し、返済計画を立てたうえで利用することで、一時的な資金不足を補える場合があります。借入にはリスクもありますが、無理に老後資金を削るより、トータルで見て負担が軽くなることも考えられます。

また、iDeCoに移換している場合でも、60歳以降に受け取る一時金や年金の形を工夫することで、税負担を抑えつつ資金を確保する選択肢があります。これは今すぐのお金にはなりませんが、中長期的な家計の計画としては重要です。いずれの方法を選ぶにしても、確定拠出年金そのものを無理に資金化しようとするのではなく、制度の枠組みを前提にしながら、他の手段との組み合わせを検討したほうが安全でしょう。

裏ワザはある?リスク、喪失、トラブル事例と安全な解決策

インターネット上では、「確定拠出年金を裏ワザで解約する方法」などの情報が目に入ることがあります。たとえば、特定の金融商品への乗り換えを勧めるものや、海外移住を利用して脱退一時金を受け取る方法を強調する内容などです。一見すると魅力的に見えるかもしれませんが、リスクも大きいため注意が必要です。

海外転出をきっかけに脱退一時金を受け取るケースでも、実際には日本国籍や居住者としての扱い、加入期間など、複雑な条件が関わります。無理に形だけ海外移住の形を取ろうとしても、要件に合致しなければ脱退一時金は認められませんし、税務上や社会保険上の問題が生じるおそれもあります。制度の趣旨から外れた行為は、結果的に不利益を招く可能性が高いです。

また、「確定拠出年金を現金化します」といった業者の勧誘には特に注意が必要です。実態としては高額な手数料を取られたり、違法なスキームに巻き込まれたりするトラブル事例も報告されています。一度資産を失うと取り戻すことは難しく、老後の生活設計が大きく崩れてしまう危険もあります。

安全な解決策としては、まず公式な窓口に相談することが基本です。勤務先の人事部門や運営管理機関のコールセンター、国民年金基金連合会などに事情を説明し、制度上許される範囲での選択肢を確認します。そのうえで、家計全体を見直し、必要であればファイナンシャルプランナーなど専門家の助言を受けると、極端な裏ワザに頼らずに済む可能性が高まるでしょう。

確定拠出年金の解約で知っておくべき税金・返金・デメリット

確定拠出年金を解約したり、一時金として受け取ったりする場面では、税金や手数料の影響を無視できません。同じ資産額でも、受け取り方によって手取りが変わるため、損得を冷静に比較することが大切です。

ここでは、脱退一時金や一時金受取時の税金の扱い、移換や継続時にかかる手数料、運用停止による資産喪失のリスクを整理します。あわせて、老後の家計や他の企業年金制度との関係も押さえ、トータルでの影響をイメージしやすくしていきます。

脱退一時金・一時金受取時の税務上の扱いと申告のポイント

確定拠出年金の資産を一時金として受け取る場合、税金の計算方法がいくつかに分かれます。代表的なのは、退職所得として扱われるケースと、公的年金等控除の対象になる年金形式の受け取りです。どちらを選ぶかで、税負担が大きく変わることもあるため、事前に仕組みを理解しておくと安心です。

企業型DCやiDeCoを60歳以降に一時金で受け取る場合、多くは退職所得として扱われます。このときは「退職所得控除」が適用され、加入期間に応じて一定額まで非課税となります。長く積み立てているほど控除額が大きくなり、結果的に税負担が軽くなる仕組みです。ただし、他の退職金との通算も関わるため、受け取り時期をどう分けるかで税額が変わることもあります。

一方、脱退一時金として受け取る場合や、加入期間が短い場合などは、同じ退職所得扱いでも控除額が小さくなることがあります。また、年金形式で受け取ると、雑所得として公的年金等控除の対象になりますが、他の年金収入との合計で税額が決まるため、トータルの収入によって負担感が変わります。自分の将来の年金見込みを踏まえて、どの受け取り方が合うかを考える必要があります。

申告のポイントとしては、源泉徴収だけで完結しないケースがあることです。複数の退職金や年金を受け取っている場合、確定申告をすることで税金が戻ることもあれば、追加で納税が必要になることもあります。税制は改正されることが多いため、受け取り前に最新の情報を確認し、必要に応じて税務署や専門家に相談するとよいでしょう。

移換・継続時の手数料・運用停止リスク・資産喪失の可能性

確定拠出年金の資産を移換したり、運用指図者として継続したりする場合、見落としがちなのが手数料や運用停止のリスクです。解約はできなくても、放置した結果として資産が目減りしてしまうケースもあるため、仕組みを理解しておくことが大切になります。

まず、企業型DCからiDeCoや別の企業型DCへ資産移換する際には、移換元と移換先の両方で事務手数料がかかる場合があります。金額自体は数千円程度のことが多いですが、何度も転職を繰り返すと、そのたびにコストが積み重なります。できるだけ移換回数を減らし、同じ金融機関で通算できるように意識すると、長期的な負担を抑えやすくなります。

また、退職後に何も手続きをしないまま一定期間が過ぎると、資産が自動的に国民年金基金連合会に移されることがあります。この状態では新たな運用ができず、実質的に「運用停止」となり、管理手数料だけが差し引かれていきます。長期間放置すると、元本が目減りし、最悪の場合は手数料でほとんど残らないというリスクもゼロではありません。

資産喪失の可能性を減らすには、退職時に届く書類を見逃さず、期限内に移換や継続の手続きを行うことが重要です。運営管理機関の変更や、商品ラインナップの見直しなど、制度側の変更によっても影響を受けることがあります。定期的に残高や運用状況を確認し、必要に応じて運用指図を見直すことで、知らないうちに損をしていたという事態を避けやすくなるでしょう。

年金受取時期が老後の家計に与える影響と資産形成の観点

確定拠出年金の資産をいつ、どのように受け取るかは、老後の家計に大きな影響を与えます。一時金としてまとめて受け取るのか、年金として分割で受け取るのか、あるいは両方を組み合わせるのかによって、税金だけでなく、お金の使い方や安心感も変わってきます。

一時金で受け取ると、住宅ローンの返済や大きな医療費など、まとまった支出に対応しやすくなります。一方で、手元に大きな金額が入ると、計画的に使わないと数年で使い切ってしまうリスクもあります。老後が長くなる傾向を考えると、一定額を年金として受け取り、毎月の生活費を補う形にするほうが、心理的な安心感は得やすいかもしれません。

年金形式で受け取る場合は、公的年金とあわせた月々の収入をイメージしておくと、生活レベルの見通しを立てやすくなります。たとえば、公的年金に加えて確定拠出年金から月数万円の年金があれば、生活費の不足分をどの程度カバーできるかが分かります。老後の資産形成は、単に積立額の多さだけでなく、受け取り方の設計も含めて考えることが重要です。

また、受取時期を少しずつずらすことで、税負担を平準化する方法もあります。複数の企業年金や退職金を同じ年にまとめて受け取ると、課税所得が大きくなり、結果的に税率が上がることもあります。可能であれば、退職時期や受取時期を調整し、複数年に分散させることで、手取り額を増やせる場合もあります。ただし、これは個々の収入状況によって変わるため、具体的なシミュレーションが役立つでしょう。

確定給付企業年金・厚生年金基金など他制度との関係性

確定拠出年金の解約や受け取りを考えるときは、他の企業年金制度との関係も意識しておく必要があります。代表的なものに、確定給付企業年金や厚生年金基金などがあり、それぞれ仕組みや受け取り方が異なります。同じ会社に勤めていても、複数の制度に加入しているケースもあるため、全体像を把握しておくと安心です。

確定給付企業年金は、将来受け取る年金額があらかじめ決まっているタイプの企業年金です。運用の責任は主に企業側が負うため、加入者が自分で運用商品を選ぶ確定拠出年金とは性質が異なります。退職時には、企業年金連合会への移換などが行われることがあり、こちらも受け取り方によって税金の扱いが変わります。

厚生年金基金は、かつて公的年金の一部を代行していた制度ですが、多くが解散や代行返上を行っています。その際には、企業年金連合会に資産が引き継がれたり、別の企業年金制度に移行したりすることがあり、加入者にとっては分かりにくくなりがちです。自分がどの制度にどれだけ加入していたかを、年金定期便や会社からの案内で確認しておくとよいでしょう。

これらの制度と確定拠出年金を合わせて考えると、老後に受け取る年金の総額や、一時金の受け取りタイミングを調整しやすくなります。たとえば、確定給付企業年金からの年金が安定しているなら、確定拠出年金は一部一時金で受け取るなど、組み合わせの幅が広がります。制度ごとにルールや税制が異なるため、最終的な判断は、複数の制度を一覧にして整理しながら行うとよいでしょう。

確定拠出年金の解約手続き

最後に、退職や加入資格喪失のタイミングで必要になる、具体的な手続きの流れを整理します。解約という言葉が使われることもありますが、実際には「移換」や「給付請求」といった形で進むのが一般的です。

ここでは、退職時に準備する書類や提出先、資産を移換する際の期限、iDeCoへの加入・継続手続き、そして将来の給付請求までの一連の流れを、できるだけイメージしやすく解説します。手続きの見通しが立つと、不安も和らぎやすくなるはずです。

退職時に必要な書類と提出先

企業型確定拠出年金に加入している人が退職する場合、まず意識したいのが、退職時に受け取る書類の確認です。多くの企業では、健康保険や厚生年金の資格喪失手続きとあわせて、確定拠出年金に関する案内も配布されます。退職のあわただしさの中で見落としがちですが、後の手続きに直結する重要な書類です。

具体的には、「加入者資格喪失通知書」や「個人別管理資産残高のお知らせ」などが挙げられます。これらには、現在の資産額や加入期間、運用商品などが記載されており、転職先の企業型DCやiDeCoへの移換手続きで必要になります。書類をなくしてしまうと、再発行の手間がかかるため、退職時の書類一式はまとめて保管しておくと安心です。

提出先としては、まず前の勤務先の人事・総務部門に退職の意思を伝え、その後、運営管理機関や国民年金基金連合会から送られてくる書類に従って、必要事項を記入して返送する流れが一般的です。転職先に企業型DCがある場合は、転職先の会社を通じて移換手続きを行うこともあります。いずれの場合も、書類の締切日が設定されていることが多いので、届いたら早めに目を通すことが大切です。

また、退職後に住所が変わる場合は、運営管理機関への住所変更届も忘れずに行う必要があります。連絡先が古いままだと、重要な案内が届かず、気づかないうちに自動移換されてしまうおそれもあります。退職や転居が重なると手続きが煩雑に感じられますが、一つずつ確認しながら進めることで、後々のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。

移換手続きの流れと期限、関与する機関・通算の扱い

退職後に確定拠出年金の資産を移換する際には、いくつかの機関が関わります。まず、前の勤務先が契約している運営管理機関が、加入者資格の喪失を把握し、その情報が国民年金基金連合会などに連携されます。その後、加入者本人宛てに移換に関する案内が届き、本人が移換先を選んで手続きを進める流れです。

転職先に企業型DCがある場合は、転職先の企業が選んだ運営管理機関と連携して、資産を新しい制度へ移します。このとき、前の会社で積み立てた期間は、通算加入者等期間として新しい制度に引き継がれるため、将来の受給要件などに影響します。複数の企業で働いた期間を合算できる点は、確定拠出年金の大きな特徴といえるでしょう。

移換手続きには期限があり、多くの場合、資格喪失から6カ月程度以内に手続きを完了させる必要があります。この期限を過ぎると、資産が自動的に国民年金基金連合会に移され、「自動移換」と呼ばれる状態になります。自動移換されると運用が行われず、管理手数料だけが引かれていくため、資産が目減りしやすくなる点に注意が必要です。

自動移換された資産も、後からiDeCoや企業型DCへ再移換することは可能ですが、手続きが複雑になりがちです。関与する機関も、前の運営管理機関、国民年金基金連合会、移換先の金融機関と増えていきます。こうした手間やリスクを減らすには、退職後に届く案内を見逃さず、期限内に移換先を決めて手続きを進めることが、結果的に一番の近道といえるでしょう。

iDeCo加入・継続の具体的な申請手順と加入資格の確認

退職を機に、企業型確定拠出年金からiDeCoへ移換する人も増えています。iDeCoは個人型年金の一種で、自分で金融機関を選び、掛金を拠出して資産を運用する制度です。企業型からの移換であれば、すでに積み立てた資産を引き継ぎながら、自分のペースで老後資金づくりを続けることができます。

具体的な申請手順としては、まずiDeCoを取り扱う金融機関を選び、資料請求を行います。その際、「企業型DCからの移換を希望する」ことを申込書に記載し、必要書類をそろえて提出します。金融機関側で内容を確認したうえで、国民年金基金連合会を通じて資産の移換手続きが進み、新しいiDeCo口座に資産が振り替えられる仕組みです。

重要なのは、自分にiDeCoの加入資格があるかどうかを確認することです。国民年金の第1号被保険者である自営業者やフリーランス、第2号被保険者である会社員や公務員、第3号被保険者である専業主婦など、それぞれで掛金の上限額が異なります。すでに企業型DCや確定給付企業年金に加入している場合は、iDeCoの掛金上限が抑えられることもあるため、事前の確認が欠かせません。

また、退職からiDeCo加入までの期間が空くと、その間の掛金拠出はできませんが、移換自体は可能です。老後資産を途切れさせずに通算していくためにも、できるだけ早めに金融機関選びと申請手続きを始めるとスムーズです。分からない点があれば、金融機関のコールセンターや一般社団法人の相談窓口などを活用しながら、一つずつ確認していくとよいでしょう。

給付請求(受取)手続きと支払までにかかる期間の目安

確定拠出年金の資産を実際に受け取る段階になると、「どのような手続きが必要で、いつお金が振り込まれるのか」が気になるところです。給付請求は、一時金として受け取る場合も、年金として分割で受け取る場合も、基本的には加入している運営管理機関や金融機関を通じて行います。

まず、受給可能年齢に達したことを確認したうえで、運営管理機関から送られてくる給付案内に沿って、給付請求書を提出します。このとき、本人確認書類や振込先口座、マイナンバーなどの提出が求められることが多いです。一時金か年金か、または両方の組み合わせかを選択し、受取方法を決めていきます。

給付請求書を提出してから実際に入金されるまでの期間は、運営管理機関や申請時期によって異なりますが、おおむね1カ月から数カ月程度を見込んでおくとよいでしょう。年度末などの繁忙期には時間がかかることもあり、余裕を持ったスケジュールで申請することが大切です。特に、一時金を住宅購入やローン返済の資金に充てる場合は、受取時期と支払期限をしっかり確認しておく必要があります。

また、給付請求時には税金の源泉徴収が行われるため、源泉徴収票や支払通知書を大切に保管しておくことが重要です。後の確定申告で必要になる場合があり、他の退職金や年金と合わせた税額の精算に関わります。給付のルールや必要書類は制度改正で変わることもあるため、受け取りの数年前から最新の案内をチェックし、疑問点は早めに金融機関へ確認しておくと安心でしょう。

まとめ

確定拠出年金は、原則として中途解約や自由な引き出しができない制度です。企業型DCもiDeCoも、老後の年金づくりを目的としているため、退職時には「解約」ではなく、資産移換や運用の継続、条件を満たす場合の脱退一時金といった選択肢の中から、自分に合う方法を選ぶことになります。

退職や転職のタイミングでは、加入資格の喪失後にどう動くかで、手数料や税金、老後の家計への影響が変わります。転職先の企業型DCへの移換やiDeCoへの移換、運用指図者としての継続など、それぞれのメリットとデメリットを理解し、書類の期限を意識しながら落ち着いて手続きすることが大切です。

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2009年、株式会社STEPに入社し、システム開発を担当。市川市消防局でのレスキュー隊の経験を経て、2013年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し保険業界へ。2014年には個人保険販売ランキングで全社営業マン約4,000人中4位となり、2015年に営業所長に就任。その後、保険代理店(株式会社イコールワン)を共同創業。2018年に株式会社TFPグループを設立し、代表取締役に就任。自身はMDRT(生命保険・金融サービスの専門家が所属するグローバル組織)2024年度TOT(トップ・オブ・テーブル/最上級の資格)基準を達成。

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